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二つの悲しみ

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 レインが入室すると広く五箇な部屋の中心にベッドが置いてあり、その上に裸のエヴァンシル王が座っている。
 裸と言っても、先ほどの会話から分かるように腰に布を巻き、下半身は隠していた。
 入室したレインは即座に膝をつき、頭を下げる。
 その様子を見ていたエヴァンシル王は上半身裸とは思えぬほど厳格な表情でレインに語りかけた。

「それで、騎士レインよ。緊急事態とは一体どういうことだ」
「はい、報告いたします。先日第二王子ジュウザ様が毒殺されるという事件があったために他のスクレット様、リコルド様、ルシアル様、ラーク様の四名をこの王城から離れた屋敷にて隔離し警護をしておりました」

 そこまでレインが話すとエヴァンシル王が強く頷く。

「その話ならば聞いている。私もその方が良いだろう、と賛成した話だ。確か、我が国最強の剣士と名高いフォルテ・リオメットが護衛を務めていたな。スキルによって他人の心が読める、故に敵意や悪意を感じ取り暗殺者を近づけさせない。その能力と戦力を兼ね備えた者・・・・・・そう話していたなリヴィエール」

 いきなり話しかけられたリヴィエールだったが、焦ることなく即座に返答した。

「はい、その通りでございます」
「そこから何か進展があったということか。いや、緊急事態としてこのような時間に報告をしているということはいい話ではないだろうな。騎士レイン、話を続けてくれ」

 エヴァンシル王は表情に悲しみを滲ませながらレインにそう話し、直後に再び厳格な表情を見せる。
 どうやらこの先、レインが何を報告するのかを予想した上で覚悟を決めたようだ。
 そんな表情の変化を目の当たりにしながらレインは話を続ける。

「四名の王子を隔離していた屋敷は炎上・・・・・・スクレット様、リコルド様、ラーク様は救出できたのですが、ルシアル様は屋敷の崩壊に巻き込まれ、生死は分かっておりません。しかし、あのような崩壊に巻き込まれたとあれば、生存の可能性は限りなく低いと思われます」

 レインの話を聞いたエヴァンシル王は一瞬表情を曇らせ、小さな声で言葉を漏らした。

「な・・・・・・ルシアルが・・・・・・死んだというのか」

 そんな王に寄り添うように立っているリヴィエールが即座に頭を下げる。

「ルシアル様をお守りできなかったこと、お詫びのしようもございません。どのような罰でも、このリヴィエールがお受けいたします。ですから、騎士レインの話をもう少し聞いていただけませんか」

 そう言われたエヴァンシル王は曇った表情のまま頷いた。

「ああ、悲しんでいても過去は変わらん。話を聞こう」

 王の言葉を聞いたリヴィエールは小さく頷き、レインに問いかける。

「騎士レイン、そもそも屋敷はなぜ燃えてしまったのでしょうか」
「炎上の理由は魔法による攻撃です」

 問いに答えるレイン。
 するとリヴィエールが首を傾げた。

「どういうことですか。あの屋敷は外敵から王子たちを守るために用意されているはずです。何者かによる攻撃があれば、家、攻撃がある前にフォルテ・リオメットが読み取り撃退するのでは?」
「私もそう考えておりました。しかし、屋敷に魔法を放ったのはそのフォルテ・リオメットなのです」

 そうレインが口にした瞬間、冷静だったリヴィエールも表情を曇らせていたエヴァンシル王も一気に目を見開く。
 想像もしていなかった答えに、ただ驚くばかりだ。
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