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小さき戦士

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「ツクネ!」

 そう呼びかけた倉野。すると、ツクネは自分に任せろと言わんばかりの勇敢な表情を見せる。
 イスベルグはそんなツクネをこう形容した。

「小さな体に大きな力と大きな勇気を秘めている。そしてその二つを上回る大きさの愛情を持ち合わせているな。小さきものではあるが立派な戦士と言っていい。私と精神交換すればクラノの体がボロボロになることは明白だった。しかし、お前の持っているスキルや耐性を考えれば気絶するほどではないと判断したのだ。気絶さえしなければその小さき戦士がお前の体を支えてくれるだろうと予測したのさ」

 イスベルグの言葉を聞いた倉野は鞄の中にいたツクネを抱き上げ、目線の高さまで持ち上げる。

「ツクネ、再び俺に力を貸してくれるか?」
「ククッ!」

 もちろんだよ、と伝えるようにツクネが鳴いた。
 すると即座に倉野の体を中心に風が巻き起こる。
 砂埃を巻き上げ、そのまま倉野を少しだけ地面から浮かび上がらせた。

「うわっと、このままレインさんのところまで連れて行って欲しいんだ、ノエルさんも一緒に。できるかい?」
「クー」
「わかった。ノエルさん、手を」

 ツクネの答えを聞いた倉野は頷き、ノエルに手を伸ばす。
 すぐさま状況を把握したノエルはその手を握り、倉野を中心に巻き起こる風の中に入り込んだ。するとノエルの体も倉野と同じく宙に浮かび上がる。

「おー、なんか変な感じね、体が浮かび上がるのって。なんか自分の体が風の一部になったみたい」

 少し楽しそうにそう話すノエル。その感覚は倉野にもあった。風の一部になり、流されるのを待っているような浮遊感。
 そんなものを感じながら倉野はノエルに問いかける。

「ノエルさん、王城の方向って分かりますか」
「ええ、ここから屋敷の方に向かって、そのまま真っ直ぐに行けば王城とその周辺の街が見えるはずよ。レインはそっちに向かったわ」
「なるほど。ツクネ、そっちの方向に飛んでいけるかい?」

 進むべき方向を確認した倉野はツクネにそう問いかけた。
 するとツクネは即座に頷き、魔法を発動させる。
 もっと高いところまで舞い上がり、進行方向へ弾丸のような速度で進み始めた。

「速っ!」

 思わずノエルはそう叫ぶ。
 彼女が想像していた速度よりも速かったようだ。
 本来、生身でそのような速度で飛んだ場合、呼吸ができなくなってしまうだろう。だが、ツクネの魔法による飛行の場合、周囲に風の壁を発生させているため全く風を感じずに呼吸も問題なくできる。
 倉野とノエルはツクネの力を借り、フォンガで王城へと向かうレインの元へと最短最速で向かった。
 オランディの未来を背負い、今、最終決戦の場所へ。
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