異世界で俺だけレベルが上がらない！ だけど努力したら最強になれるらしいです？

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　横暴な態度を取るスクレットを気迫で黙らせたレインは続いて使用人たちに声をかけた。

「すまない。頼みが二つあるのだが、聞き入れてくれるか」

　レインの言葉を聞いた使用人たちはお互いに顔を見合わせ、その中で一番身分が高いであろう護衛のような男が前に出てくる。

「レイン様、私がお聞きします」
「見ての通りこの屋敷は既に崩壊している。ここで王子たちを匿うことはできないだろう。王子たちの護衛を引き続き頼みたい。この場から離れることが好ましいのだが、どこか安全な場所はないかい」

　護衛の男にそうレインが問いかけた。
　すると男は少し考えてから、何かを思いついたような顔をして答える。

「そういえば、ここから東に進んだ場所に兵士の訓練所があります。本来、オランディ国軍がウルステルダンを離れ、訓練に集中するための場所ですが、今は使われていません。ですが、食糧や武器も備えられているはずです」
「そうか、では全員でそこに向かってくれるかい。くれぐれも王子たちの安全を優先してくれ。文字通りこの国の未来がかかっているからね」

　提案を聞いたレインは真剣な表情でそう指示を出した。
　隣で話を聞いていたノエルはふと浮かんだ疑問を口にする。

「そういえば、この屋敷の周りには何もないわよね。草原が広がっているって感じ。でも、ここも首都の中なのよね？」
「ああ、ここもオランディの首都ウルステルダンの領内さ。だが、王城のある場所からは離れているんだ。目的は王子たちを隔離することだったからね。王城やその城下に広がっている街からは離れた場所にある屋敷を選んだってことさ。エスエ帝国の帝都に比べれば小さな街だが、城下は栄えているよ」

　疑問に答えるレインにノエルはなるほど、と頷いた。
　オランディは自然と共に生き、平和を育んでいる国である。そのため、首都ウルステルダンには草原や森も含まれていた。そういった場所も管理することで国民が安心して自然と触れ合うことができるという考え方である。
　草原の真ん中に屋敷が建てられているのも、貴族たちが自然を楽しむためであった。
　ノエルの疑問に答えたレインは話を続ける。

「もう一つの頼みなのだが、フォンガを借りたい」

　レインの言うフォンガとは狼に似た魔物だ。この世界では馬のように車を引いたり、騎乗したりと移動手段として重宝されている。

「フォンガですか・・・・・・屋敷の裏手に車を装着したフォンガがおります。そちらでも大丈夫ですか」

　護衛の男がそう答えるとレインは強く頷いた。

「ああ、問題ない。ありがたく借りさせてもらうよ」

　こうして移動手段を手に入れたレイン。そんな彼にノエルが問いかける。

「フォンガを借りたってことは、動き出すのね。これからどうするのよ」

　問いかけられたレインはこれからの作戦を答えた。
　作戦を聞いたノエルは再び頷き、口を開く。

「なるほどね。じゃあ、私はクラノのところに戻ればいいってことよね」
「ああ、危険を伴うが頼まれてくれるかい？」
「高くつくわよ？」
「破産させられそうだな。いいさ、オランディの危機よりも何倍もマシさ」

　レインは微笑みながらそう答え、ノエルに一時的な別れを告げた。

「それじゃあ、俺は行くよ。クラノを頼んだ」
「ええ、分かったわ。次会う時は金塊を抱えておくことね」

　ノエルは笑顔で返答し、倉野がいる場所へと走り始めたのである。