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風が告げる絶望

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 足に力を込めて体勢を保ちながらレインが呟く。
 しばらくして揺れが収まると、レインとノエルははお互いの無事を確認する様に名前を呼んだ。

「ノエル、無事かい?」
「ええ、なんとか。レインも大丈夫そうね。王子たちは?」

 そう言いながらノエルはスクレットの表情を窺う。
 スクレットは揺れに怯えたのか、周囲を見回していた。

「な、なんだ、さっきの揺れは。おい、レイン。早く私を守れ!」

 自分のことだけを考ているスクレットは恐怖を誤魔化す様にそう叫ぶ。
 そんな姿を見たノエルがため息をついた。

「はぁ、なっさけないわね。でもそんな口が聞けるなら大丈夫そうね。他の王子たちも無事?」
「私たちなら無事だ。問題ない」

 ノエルにそう答えたのはリコルドである。
 彼の隣には同じくルージュ家の血を継いだラークが汗を拭いながら立っていた。
 二人はスクレットと比べ、落ち着いている様に見える。その様子だと大丈夫か、とノエルがレインに話しかけた。

「どうやら王子たちは大丈夫そうね。レイン、早くもう一人の王子を助け出しましょう」

 扉に向かって立っているレインに言葉をかけたノエルだったが、返事がない。
 不思議に思ったノエルは再びレインの背中に声を掛ける。

「どうしたのよ、レイン。早く扉を開けて助け出しましょう。ルシアルだっけ、もう一人の王子。ねぇ、レイン・・・・・・レイン?」
「あ、ああ、そうだね。すまない、扉の隙間から風が吹いてきた様な気がしてね」

 ハッとした様にレインはそう答えた。
 確かに扉の隙間から空気が流れ込み、床の小さな火が揺れているのが見える。

「風・・・・・・風がどうしたのよ」

 レインの言葉の意味がわからずにノエルはそう問いかけた。
 しかし、レインはその問いかけには答えず、意を決した様に扉を開ける。
 するとそこから見えたのは部屋の中ではなく屋敷の外の風景であった。
 自分の見ている光景に言葉を失うレイン。
 その背後でノエルが思わず言葉を漏らす。

「まさか、さっきの振動と音・・・・・・この屋敷が崩れる音だったってこと」

 すぐさま扉から顔を出し、下を覗くノエル。そこに広がっていたのは屋敷が崩れ落ちた瓦礫の山だった。
 焼け焦げた木材や煉瓦、家具を砕いてかき混ぜたような瓦礫からは黒煙と土埃が上がっている。
 起きてしまった悲劇の後を見ながらノエルが呟いた。

「じゃあ、ルシアルって王子は・・・・・・」
「ああ、あの瓦礫の中だろう・・・・・・何してるんだ、俺は。間に合わなかったのか・・・・・・おかしいと思ったんだ。扉から漏れるほどの風が部屋の中に吹いているわけがない」

 レインは絶望を顔に浮かべながら奥歯を噛み締める。
 フォルテの炎によりダメージを受けた屋敷は耐えきれずに崩れてしまったのだ。そしてそれによって第四王子ルシアルが居た部屋が巻き込まれ瓦礫の一部になってしまったのである。
 この崩壊に巻き込まれたのであれば生きていられないことは一目瞭然であった。
 状況を端的に説明するならば、屋敷が半壊し巻き込まれた一人の命が失われた、というところだろう。
 だが、それはもっと大きな意味を持っていた。
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