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ルージュ家の二人

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「わかったわ。左側の二部屋ね」

 ノエルはレインの指示に頷き、後を追う様に燃え盛る廊下を走った。
 ほぼ同時に向かい合う部屋の扉を開けたノエルとレイン。
 ノエルの開けた部屋の中には慌てふためく青年がどうすればいいのかと慌てふためいていた。
 その背後でレインの開けた部屋には今すぐにでも窓から飛び出そうかとしている青年がいる。
 レイン側の青年は扉が開いたことに驚き振り返るとすぐに安堵の表情を浮かべた。

「おお、レイン。助けに来てくれたのか!」

 青年はそう言いながら、レインに歩み寄る。
 レインは手招きしながらその青年の名前を呼んだ。

「リコルド様、早くこちらへ。いつ屋敷が崩れ落ちてもおかしくありません。とにかく廊下に出てください」

 青年の名前はリコルド・ウィンドミル。第三王子であり、ルージュ家の血を継いでいる。

「そこまで火が回っているのか。しかし何故、この屋敷がこの様な状況になったのだ」

 そんな疑問を口にするリコルドの肩を掴み廊下へと引っ張るレイン。

「そんな話は後です。とにかく安全を確保しなければ」
「うわっと。そ、そうだな。他の王子たちは無事か?」
「今、俺の仲間が反対側の部屋を確認しています」

 そう答えながらレインはノエルが入っていった部屋へと視線を送った。
 するとノエルの肩に掴まりながら青年が歩いて部屋を出てくるのが見える。
 その青年は先ほどまで慌てていたのだが、いきなり安心したせいか身体中の力が抜け、立つことも難しい状況になっていた。

「ラーク様!」

 思わず名前を呼ぶレイン。
 するとラークと呼ばれた青年は片手を上げて強がって見せる。

「心配するな、レイン。少し力が抜けただけだ」

 そう話すラークは第五王子。リコルドと同じくルージュ家の血を継いでおり、リコルドとは血の繋がった兄弟だ。
 そんなラークに呆れた表情を浮かべるノエル。

「何言ってるのよ。安心したかと思ったらいきなり倒れ込んだじゃない。ほんとに死んじゃったかと思ったんだからね」
「ノ、ノエル。昨日一応相手は王子なんだが」

 ノエルの口調に驚いたレインが口を挟むと、再びラークが片手を上げてレインの言葉を遮った。

「レイン、問題ないぞ。私の命を救ってくれた女神の様な女性だ。言葉遣いなど大した問題ではない。ところでお嬢さん、今宵、私の部屋にご招待したいのですが」
「何言ってんのよ。あなたの部屋は今、こんなにも燃えているでしょうが。燃える様な夜は良くても、燃え尽きた部屋で過ごすのは勘弁よ。他を当たって」

 状況を考えずにノエルを口説こうとしたラークに、厳しい返答が送られる。
 ノエルはそう答えてから、すぐにラークの体をリコルドに預けた。

「ほら、ちょっと支えてて。次の部屋に行かなきゃいけないんだから。行くわよ、レイン」
「あ、ああ。そうだな時間がない。リコルド様、ラーク様。しばらくここでお待ちください」

 二人の王子にそう伝えてからレインは次の部屋に向かう。
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