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黒煙の中
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「ノエルさんっ?」
痛みを忘れて思わず名前を呼ぶ倉野。
するとノエルは呼吸を整えながら、何とか言葉を発する。
「はぁっ、レインが・・・・・・はぁはぁ、王子が一人・・・・・・っつ・・・・・・間に合わなくて・・・・・・はぁっ、ルシアルが!」
必死に伝えようとするノエルの姿はボロボロだった。
煤まみれなのはもちろん、大量の汗をかき、髪も衣服も乱れている。ことの重大さがひしひしと伝わってきた。
「落ち着いてくださいノエルさん。ゆっくり、ゆっくりでいいですから。とにかく呼吸を整えましょう」
倉野がそう答えると、ノエルは深呼吸してからもう一度話し始める。
「そんなこと言っている場合じゃないのよ。とにかく大変なの!」
「一体何があったんですか」
ノエルの必死さの理由を倉野が問いかけた。
するとノエルはこの場を離れてから何があったのか語り始める。
「倉野と離れてから・・・・・・」
ノエルとレインはこの場を離れ、王子たちが匿われている屋敷に向かって走った。
絶対に安全であると言われていた屋敷は燃え盛っている。
安全を保っていたフォルテの裏切りにより、最も危険な場所へと変わったのだった。
走りながら考えることは王子たちの無事だけ。
そんな状態で走っていた。
「もうすぐだ。くそっ、思っていたよりも火の周りが早い・・・・・・」
走りながらレインがそう呟く。
屋敷に近づき、その状態がはっきり見えるとその酷さがわかった。
フォルテの強力な魔法により火をつけられたであろう屋敷は全体が炎に包まれている。
だが、だからと言って諦めるわけにはいかない。
「ノエル、俺はこのまま火の中に突っ込むよ。外で待っていてくれないかい」
レインは振り返らずにそう言い放った。
するとノエルは少し怒った様に言い返す。
「何、こんな状況で女だから残れって言うの。私だって覚悟を決めて走ってるのよ。舐めないで」
「・・・・・・そういうわけじゃないさ。全てを失いたくないと思う俺の弱さに他ならない。もし、王子たちが燃えてしまっていたら・・・・・・そのうえノエルまで失ってしまっては・・・・・・」
歯切れ悪くそう答えるレイン。
そんな言葉を聞いたノエルはさらに怒りの度合いを上げた。
「馬鹿!」
ノエルはそう叫びながら、レインの背中を叩く。
走りながら背中に衝撃を受けたレインは体勢を崩しそうになる。
「うわっと、何をするのさ」
「全部守るんでしょ。その剣は何のためにあるのよ。その足は、その腕は・・・・・・失いたくないのなら、守りなさいよ!」
そのノエルの言葉はレインの背中を支えながら押す様に心に響いた。
「ああ、ノエルの言う通りさ。すまない弱気になっていた様だ」
精一杯のエールにそう答えたレインは駆け抜けながら剣を抜く。
燃え盛る屋敷はもう手の届く位置まで来ていた。
剣を振りかぶったレインは屋敷の扉に向けて力一杯振り下ろす。
斬るというよりも壊すことを目的に振り下ろしたその剣は、木製の扉を破壊し、屋敷への入り口を作った。
所々燃えている屋敷の中はまさに地獄の釜の様である。
身を焦がすほどの熱と燃焼によって発生した黒煙の匂いが一気に押し寄せてきた。
「あっついわね。それに焦げ臭い。煙だらけで呼吸も満足にできそうにないわね」
そう話しながら屋敷に踏み込もうとするノエルの肩をレインが掴み強制的に停止させる。
「待つんだ、ノエル。この煙を吸ってはいけない。炎の中で煙を吸えば肺を焼かれ意識を失いかねないのさ」
痛みを忘れて思わず名前を呼ぶ倉野。
するとノエルは呼吸を整えながら、何とか言葉を発する。
「はぁっ、レインが・・・・・・はぁはぁ、王子が一人・・・・・・っつ・・・・・・間に合わなくて・・・・・・はぁっ、ルシアルが!」
必死に伝えようとするノエルの姿はボロボロだった。
煤まみれなのはもちろん、大量の汗をかき、髪も衣服も乱れている。ことの重大さがひしひしと伝わってきた。
「落ち着いてくださいノエルさん。ゆっくり、ゆっくりでいいですから。とにかく呼吸を整えましょう」
倉野がそう答えると、ノエルは深呼吸してからもう一度話し始める。
「そんなこと言っている場合じゃないのよ。とにかく大変なの!」
「一体何があったんですか」
ノエルの必死さの理由を倉野が問いかけた。
するとノエルはこの場を離れてから何があったのか語り始める。
「倉野と離れてから・・・・・・」
ノエルとレインはこの場を離れ、王子たちが匿われている屋敷に向かって走った。
絶対に安全であると言われていた屋敷は燃え盛っている。
安全を保っていたフォルテの裏切りにより、最も危険な場所へと変わったのだった。
走りながら考えることは王子たちの無事だけ。
そんな状態で走っていた。
「もうすぐだ。くそっ、思っていたよりも火の周りが早い・・・・・・」
走りながらレインがそう呟く。
屋敷に近づき、その状態がはっきり見えるとその酷さがわかった。
フォルテの強力な魔法により火をつけられたであろう屋敷は全体が炎に包まれている。
だが、だからと言って諦めるわけにはいかない。
「ノエル、俺はこのまま火の中に突っ込むよ。外で待っていてくれないかい」
レインは振り返らずにそう言い放った。
するとノエルは少し怒った様に言い返す。
「何、こんな状況で女だから残れって言うの。私だって覚悟を決めて走ってるのよ。舐めないで」
「・・・・・・そういうわけじゃないさ。全てを失いたくないと思う俺の弱さに他ならない。もし、王子たちが燃えてしまっていたら・・・・・・そのうえノエルまで失ってしまっては・・・・・・」
歯切れ悪くそう答えるレイン。
そんな言葉を聞いたノエルはさらに怒りの度合いを上げた。
「馬鹿!」
ノエルはそう叫びながら、レインの背中を叩く。
走りながら背中に衝撃を受けたレインは体勢を崩しそうになる。
「うわっと、何をするのさ」
「全部守るんでしょ。その剣は何のためにあるのよ。その足は、その腕は・・・・・・失いたくないのなら、守りなさいよ!」
そのノエルの言葉はレインの背中を支えながら押す様に心に響いた。
「ああ、ノエルの言う通りさ。すまない弱気になっていた様だ」
精一杯のエールにそう答えたレインは駆け抜けながら剣を抜く。
燃え盛る屋敷はもう手の届く位置まで来ていた。
剣を振りかぶったレインは屋敷の扉に向けて力一杯振り下ろす。
斬るというよりも壊すことを目的に振り下ろしたその剣は、木製の扉を破壊し、屋敷への入り口を作った。
所々燃えている屋敷の中はまさに地獄の釜の様である。
身を焦がすほどの熱と燃焼によって発生した黒煙の匂いが一気に押し寄せてきた。
「あっついわね。それに焦げ臭い。煙だらけで呼吸も満足にできそうにないわね」
そう話しながら屋敷に踏み込もうとするノエルの肩をレインが掴み強制的に停止させる。
「待つんだ、ノエル。この煙を吸ってはいけない。炎の中で煙を吸えば肺を焼かれ意識を失いかねないのさ」
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