136 / 729
連載
黒煙の中
しおりを挟む
「ノエルさんっ?」
痛みを忘れて思わず名前を呼ぶ倉野。
するとノエルは呼吸を整えながら、何とか言葉を発する。
「はぁっ、レインが・・・・・・はぁはぁ、王子が一人・・・・・・っつ・・・・・・間に合わなくて・・・・・・はぁっ、ルシアルが!」
必死に伝えようとするノエルの姿はボロボロだった。
煤まみれなのはもちろん、大量の汗をかき、髪も衣服も乱れている。ことの重大さがひしひしと伝わってきた。
「落ち着いてくださいノエルさん。ゆっくり、ゆっくりでいいですから。とにかく呼吸を整えましょう」
倉野がそう答えると、ノエルは深呼吸してからもう一度話し始める。
「そんなこと言っている場合じゃないのよ。とにかく大変なの!」
「一体何があったんですか」
ノエルの必死さの理由を倉野が問いかけた。
するとノエルはこの場を離れてから何があったのか語り始める。
「倉野と離れてから・・・・・・」
ノエルとレインはこの場を離れ、王子たちが匿われている屋敷に向かって走った。
絶対に安全であると言われていた屋敷は燃え盛っている。
安全を保っていたフォルテの裏切りにより、最も危険な場所へと変わったのだった。
走りながら考えることは王子たちの無事だけ。
そんな状態で走っていた。
「もうすぐだ。くそっ、思っていたよりも火の周りが早い・・・・・・」
走りながらレインがそう呟く。
屋敷に近づき、その状態がはっきり見えるとその酷さがわかった。
フォルテの強力な魔法により火をつけられたであろう屋敷は全体が炎に包まれている。
だが、だからと言って諦めるわけにはいかない。
「ノエル、俺はこのまま火の中に突っ込むよ。外で待っていてくれないかい」
レインは振り返らずにそう言い放った。
するとノエルは少し怒った様に言い返す。
「何、こんな状況で女だから残れって言うの。私だって覚悟を決めて走ってるのよ。舐めないで」
「・・・・・・そういうわけじゃないさ。全てを失いたくないと思う俺の弱さに他ならない。もし、王子たちが燃えてしまっていたら・・・・・・そのうえノエルまで失ってしまっては・・・・・・」
歯切れ悪くそう答えるレイン。
そんな言葉を聞いたノエルはさらに怒りの度合いを上げた。
「馬鹿!」
ノエルはそう叫びながら、レインの背中を叩く。
走りながら背中に衝撃を受けたレインは体勢を崩しそうになる。
「うわっと、何をするのさ」
「全部守るんでしょ。その剣は何のためにあるのよ。その足は、その腕は・・・・・・失いたくないのなら、守りなさいよ!」
そのノエルの言葉はレインの背中を支えながら押す様に心に響いた。
「ああ、ノエルの言う通りさ。すまない弱気になっていた様だ」
精一杯のエールにそう答えたレインは駆け抜けながら剣を抜く。
燃え盛る屋敷はもう手の届く位置まで来ていた。
剣を振りかぶったレインは屋敷の扉に向けて力一杯振り下ろす。
斬るというよりも壊すことを目的に振り下ろしたその剣は、木製の扉を破壊し、屋敷への入り口を作った。
所々燃えている屋敷の中はまさに地獄の釜の様である。
身を焦がすほどの熱と燃焼によって発生した黒煙の匂いが一気に押し寄せてきた。
「あっついわね。それに焦げ臭い。煙だらけで呼吸も満足にできそうにないわね」
そう話しながら屋敷に踏み込もうとするノエルの肩をレインが掴み強制的に停止させる。
「待つんだ、ノエル。この煙を吸ってはいけない。炎の中で煙を吸えば肺を焼かれ意識を失いかねないのさ」
痛みを忘れて思わず名前を呼ぶ倉野。
するとノエルは呼吸を整えながら、何とか言葉を発する。
「はぁっ、レインが・・・・・・はぁはぁ、王子が一人・・・・・・っつ・・・・・・間に合わなくて・・・・・・はぁっ、ルシアルが!」
必死に伝えようとするノエルの姿はボロボロだった。
煤まみれなのはもちろん、大量の汗をかき、髪も衣服も乱れている。ことの重大さがひしひしと伝わってきた。
「落ち着いてくださいノエルさん。ゆっくり、ゆっくりでいいですから。とにかく呼吸を整えましょう」
倉野がそう答えると、ノエルは深呼吸してからもう一度話し始める。
「そんなこと言っている場合じゃないのよ。とにかく大変なの!」
「一体何があったんですか」
ノエルの必死さの理由を倉野が問いかけた。
するとノエルはこの場を離れてから何があったのか語り始める。
「倉野と離れてから・・・・・・」
ノエルとレインはこの場を離れ、王子たちが匿われている屋敷に向かって走った。
絶対に安全であると言われていた屋敷は燃え盛っている。
安全を保っていたフォルテの裏切りにより、最も危険な場所へと変わったのだった。
走りながら考えることは王子たちの無事だけ。
そんな状態で走っていた。
「もうすぐだ。くそっ、思っていたよりも火の周りが早い・・・・・・」
走りながらレインがそう呟く。
屋敷に近づき、その状態がはっきり見えるとその酷さがわかった。
フォルテの強力な魔法により火をつけられたであろう屋敷は全体が炎に包まれている。
だが、だからと言って諦めるわけにはいかない。
「ノエル、俺はこのまま火の中に突っ込むよ。外で待っていてくれないかい」
レインは振り返らずにそう言い放った。
するとノエルは少し怒った様に言い返す。
「何、こんな状況で女だから残れって言うの。私だって覚悟を決めて走ってるのよ。舐めないで」
「・・・・・・そういうわけじゃないさ。全てを失いたくないと思う俺の弱さに他ならない。もし、王子たちが燃えてしまっていたら・・・・・・そのうえノエルまで失ってしまっては・・・・・・」
歯切れ悪くそう答えるレイン。
そんな言葉を聞いたノエルはさらに怒りの度合いを上げた。
「馬鹿!」
ノエルはそう叫びながら、レインの背中を叩く。
走りながら背中に衝撃を受けたレインは体勢を崩しそうになる。
「うわっと、何をするのさ」
「全部守るんでしょ。その剣は何のためにあるのよ。その足は、その腕は・・・・・・失いたくないのなら、守りなさいよ!」
そのノエルの言葉はレインの背中を支えながら押す様に心に響いた。
「ああ、ノエルの言う通りさ。すまない弱気になっていた様だ」
精一杯のエールにそう答えたレインは駆け抜けながら剣を抜く。
燃え盛る屋敷はもう手の届く位置まで来ていた。
剣を振りかぶったレインは屋敷の扉に向けて力一杯振り下ろす。
斬るというよりも壊すことを目的に振り下ろしたその剣は、木製の扉を破壊し、屋敷への入り口を作った。
所々燃えている屋敷の中はまさに地獄の釜の様である。
身を焦がすほどの熱と燃焼によって発生した黒煙の匂いが一気に押し寄せてきた。
「あっついわね。それに焦げ臭い。煙だらけで呼吸も満足にできそうにないわね」
そう話しながら屋敷に踏み込もうとするノエルの肩をレインが掴み強制的に停止させる。
「待つんだ、ノエル。この煙を吸ってはいけない。炎の中で煙を吸えば肺を焼かれ意識を失いかねないのさ」
1
お気に入りに追加
2,851
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)
葵セナ
ファンタジー
主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?
管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…
不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。
曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!
ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。
初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)
ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。