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最強の重さ

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 圧倒的な力の差を見せつけられたフォルテだったが、負けを認めるわけにはいかなかった。いや、負けを認めるという行動が自らの選択肢になかったのだ。
 この世界に生まれて二十九年。フォルテ・リオメットという男は負けたことがない。
 読心というスキルを持って生まれたフォルテ。しかし、優れているのはスキルだけではなかった。
 幼少の頃から騎士と遜色ないほど身体能力が高く、難易度の高い魔法を容易く操っている。
 それゆえに師と呼べる様な存在はなく、全てを我流で磨いてきた。
 そんなフォルテの前に倉野とイスベルグが高い壁として立ちはだかったのである。
 奥歯を噛みしめながらフォルテは再び剣を構えた。

「簡単に名乗ってなどいない。最強の名は自分に課した重圧。最強は負けてはならぬのだ。フレイム・ブレイド!」

 叫びながら振り下ろした剣からは先ほどと同じく炎の斬撃が放たれる。
 目の前に現れた氷山を溶かそうと、炎を放出した。
 だが、その炎は氷山にぶつかるとあっという間に消えてしまう。温度が下がったことにより、炎が維持できなくなったのだ。
 自分の魔法が通用しなかったフォルテは眉間にシワを寄せる。

「それだけの差があるというのか・・・・・・」

 そう呟くフォルテにイスベルグが倉野の体を介して再び言葉をかけた。

「お前では私の爪一本にすら勝てん。それが人間の限界だ。己を知り、身の程を弁えろ。これが最終通告だ、道をあけろ」
「く・・・・・・」

 威圧的に放つイスベルグの言葉にフォルテは感じたことがないほどの殺気を感じ、体が硬直してしまう。
 フォルテの動きが停止したことを確認したイスベルグは倉野に語りかけた。

「さぁ、道は開いたぞ。屋敷へ向かおう」
「あ、はい。助かりました、イスベルグさん」

 礼を言ってから足を踏み出し、屋敷に向かう倉野。
 フォルテの隣を通過しようとした、その瞬間だった。
 完全に動きを停止していたと思っていたフォルテが瞬時に剣を構え、倉野の顔面目掛け突きを繰り出す。
 いきなり向かってきた剣先に驚き、倉野の回避が遅れてしまった。

「うわっ」

 思わず倉野は情けない声を漏らす。
 突き刺さる。そう覚悟をした瞬間に、倉野の左手が勝手に動きその剣を掴み止めた。
 イスベルグによって動かされたのだろう。
 しかし、フォルテは剣を止められたことを気に留めずに剣を捨てた。拳に炎を纏わせ、倉野に殴りかかる。

「負けとは死だ。俺を止めたいのならば殺してみせろ」
「どうして命を投げ捨てるんだ!」

 フォルテに言い返しながら倉野は右手を握り、向かってくる拳目掛けてパンチを放った。
 二つのこ拳がぶつかり合う瞬間に、倉野の右手はイスベルグがコントロールし、氷を纏わせる。
 先ほど、フォルテの炎とイスベルグの氷がぶつかり合えば、炎がそのまま凍らされていた。しかし、今回はぶつかり合い拮抗している。
 拳から肩。肩から全身へと響く衝撃に耐えながら倉野は奥歯を噛みしめた。
 そんな倉野の頭の中でイスベルグは感心した様な声を漏らす。

「ほう・・・・・・炎の密度を上げてきたか。しかし、所詮は大海を知らぬ者よ」
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