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二心同体

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 シンクロ。言葉のままならば同期を意味する。
 言葉の意味自体はわかる倉野だが、イスベルグの言葉の意味はわからない。

「この世界に二人で一つの個体だと認識されるようになったということだ。お前と私がな」

 さらにイスベルグはそう話す。
 余計に言葉の意図がわからない倉野は、首を傾げた。
 倉野の困惑を察したイスベルグは仕方ない、と言わんばかりに説明を続ける。

「いいか、私はお前の中にいる。それによって私はお前に、お前は私に影響を受け始めた。少しずつお互いがより近い存在になっていっている。そうなることでクラノという存在は元々、私を含むものだと、この世界自体に認識されたと言うわけだ」
「つまり、イスベルグさんも僕の一部だってことですか?」

 そう聞き返す倉野の言葉に感心するイスベルグ。

「ああ、その通りだ。例えばスキル神速はクラノという存在の速度を上げるスキルだが、私がクラノ一部になることにより私の速度も上がっている。故に会話ができるというわけだ」
「なるほど・・・・・・それで提案って何ですか?」

 改めて倉野がそう聞き返した。
 するとイスベルグは思いもよらぬ言葉を放つ。

「お前の体を私に寄越すのだ」
「え・・・・・・」

 いきなりの乱暴な言葉。
 驚いた倉野は言葉を失ってしまった。
 しかしその言葉には続きがある。

「まぁ、驚くのも無理はない。しかし、大きな魔法を使わずに勝つためにはこれが最良だ。命をかける覚悟があるのならば、私に賭けてみないか」

 そう提案するイスベルグ。
 もちろん、倉野の答えは決まっていた。少しでも勝利の可能性があるのならば。この先も戦い続けることができるのならば。

「わかりました。イスベルグさん、この体を好きに使ってください」
「いいだろう。まず状況の確認だ。相手は心を読む最強の剣士フォルテ・・・・・・まぁ、人間規模での話だがな。そして奴は自動的に自分の身を守る炎の壁を常に展開している。スキル神速で背後を取ろうが魔法が使えないクラノには突破不可能。正面から攻撃したとしても同じだ。さらにフォルテは現在、巨大な魔法を発動し、屋敷ごと消し去ろうとしている。今すぐにでも発動を止めなければならない。ここまではいいな?」

 現在の状況を確認するイスベルグに対して頷く倉野。

「はい。その通りです。それで、どうすればいいんですか。どうすればフォルテを・・・・・・」
「焦るな、クラノ。相手は心を読む・・・・・・今ここで全てを説明してしまっては、手の内を晒すことになる。とにかくお前はフォルテに一撃を喰らわせることだけを考えろ。そしてスキル神速の発動はなしだ。まだ、完全にシンクロしているわけではないからな。スキル神速中は私の行動が制限される」
「わかりました。とにかく一撃ですね」

 倉野はそう答えて、深く息を吸い込んだ。
 これが最後の攻撃だ、と倉野は覚悟を決め、スキル神速を解除する。
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