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天秤にかけられた重み

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 倉野がスキル神速を発動するとフォルテの剣は目の前で停止した。
 そのままさらに右側に飛んだ倉野はスキル神速を維持したまま状況を整理する。

「スキル神速を発動すれば攻撃を回避することはできる・・・・・・だけど、炎の壁に阻まれて、攻撃を食らわせることはできない。でも僕が攻撃を仕掛けるとフォルテは回避する・・・・・・つまり炎の壁が発動しない瞬間があるってことか?」

 心を読まれないようにスキル神速を発動しながら呟く倉野。
 だが、このままではどうしようもない、と考えスキル神速を解除した。
 再び向かい合う倉野とフォルテ。
 するとフォルテは動き出した瞬間に口角を上げる。

「ふっ、何故俺がお前の攻撃を回避するのか。もしかしたら、炎の壁が発動しない瞬間があるのではないか・・・・・・そう思っているな。残念ながら炎の壁は常時発動している。だが、炎の壁だけではお前の命を刈り取ることはできない。俺が回避するのはお前を誘い込むためだ」

 心の中を覗き、さらに絶望的な事実をフォルテは突き付けた。
 それは現状、倉野がフォルテに攻撃を喰らわせることができないという宣告である。
 しかし、そう簡単に折れるわけにはいかない。

「そうだとしても、フォルテ。お前も僕に攻撃を当てられないはずだ。スキル神速には追いつけない!」
「ああ、そうだな。追いつけない・・・・・・ならばこうしよう」

 そう言ってからフォルテは屋敷の方に左手を向けた。
 その動きから魔法を発動する、と直感した倉野は声を張り上げた。

「何をするつもりだ!」
「心が読めないというのは不便なものだな。どうせお前には止められない」

 フォルテはそう吐き捨てると左手に力を集中させる。
 すると倉野の目にも見えるほど高濃度の魔力が段々とその左手に蓄積されていった。
 彼が何をするのかわからない倉野だったが、その意図はわかる。
 強力な魔法を屋敷に向けることによって、倉野にイスベルグの魔法を使わせようとしているのだろう。イスベルグの魔法を借りた倉野は高確率で魔力酔いを起こす。そうなれば、良くて気絶。最悪の場合には命を落とすことになるとフォルテは読んでいた。
 仮に倉野がこのフォルテの魔法を見逃せば、屋敷に向かったレインやノエル、生き残っている王子たちが危ない。
 自分の命をかけてこの魔法を止めるか。仲間を犠牲にし戦いを続けるか。
 突然、そんな二択を突き付けられた倉野。
 当然、倉野の心は決まっていた。
 フォルテごと魔法を止める。自分の命をかけると覚悟していたのだった。

「約束したんだ、命をかけるって!」

 倉野がそう言葉にした瞬間、頭の中でイスベルグの声が響く。

「落ち着けクラノ。スキル神速を発動だ」
「え?」
「早くしろ」
「は、はい。スキル神速発動!」

 突然の指示に驚きながらも倉野はスキル神速を発動した。
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