異世界で俺だけレベルが上がらない! だけど努力したら最強になれるらしいです?

澤檸檬

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&絶望

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 体があちらこちらに引っ張られるような浮遊感に身を任せた倉野、レイン、ノエル。
 気づくと靴を通じて足の裏に地面を感じた三人。
 地面の感触を確かめながら、転移の光で眩んだ目を開く。
 目を開く直前に通り抜けていく風がどこか懐かしい若葉に匂いを運んできた。

「どうやら転移できたようですね」

 倉野がそう言葉にするとレインが周囲を見渡しながら頷く。

「ああ、どうやら狙い通りの場所に転移できたようだ」

 言いながらレインは視線を一箇所に固定させた。
 その視線に気づいた倉野とノエルは同じ方向に目を向ける。
 すると、その視線の先。数百メートル先には豪華な木造の屋敷が建っていた。
 屋敷についてノエルがレインに問いかける。

「あれが、例の?」

 例の、という言葉は生き残った王子たちが匿われている、という意味だ。
 即座に理解したレインは無言で頷き、屋敷を安堵するような優しい目で眺めている。
 そのような目になるのも無理はない。屋敷の周囲は穏やかな空気が流れており、何も問題が起きていないとひと目でわかる。
 王子たちの身に何かが起きているのならば、これだけ穏やかな訳が無い。
 レインの安堵を感じた倉野は同じように安心する。

「間に合ったようですね、レインさん。まだ何も起きてないようです」
「ああ、そうだね。屋敷には殺意も敵意も感じない。とにかく屋敷に向かおうか」

 倉野の言葉にそう答えるレイン。
 彼の言葉を聞いた倉野とノエルが足を踏み出した。
 その瞬間であった。
 視線の先。目的地。守るべき場所。王子たちが匿われている屋敷。
 そこに火柱が上がったのである。
 爆音と同時に強く発光し、大樹のような火柱が上がった。

「な・・・・・・」

 音と光で言葉を失う倉野。
 その隣でレインはただ目を見開くばかりであった。

「ど、どういうことなの。さっきまで殺意も敵意も感じなかった・・・・・・なのに今は気持ち悪いほど強い殺意を感じるわ」

 ノエルはそう言いながら唇を震えさせる。
 いきなりの出来事にノエルも動揺しているようだ。
 その瞬間に我を取り戻した倉野はレインの肩を揺すりながら、語りかける。

「レインさん、早く。早く助けに行かないと!」
「何が・・・・・・何が起きたんだ・・・・・・」
「レインさん!」

 呆然とするレインに強い言葉をぶつける倉野だったが反応は変わらない。
 見かねたノエルがレインの襟を掴み、平手を思いっきりレインのレインの頬へ振り抜いた。
 パンッという気持ちの良い高音が響き、レインは正気を取り戻す。

「痛っ!」
「しっかりしなさいよ。助けるんでしょ、残る王子たちを!」

 強く言い放つノエル。
 我にかえったレインは奥歯を噛み締め、強く地面を蹴った。

「ああ、そうだ。何してるんだ、俺は」

 そう言いながら前傾姿勢でひたすら地面を蹴り、屋敷に向けて走り出したのである。
 彼の背中を追いかけるように倉野とノエルも走り始めた。
 背中越しにレインは声を放つ。

「ありがとうノエル。効いたよ」
「何度でも打ち込んであげるわよ」
「遠慮したいね」

 その声はいつも通りのレインだった。

 
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