118 / 729
連載
ツンデレと転移
しおりを挟む
全体が魔石で出来ているため、この宝物庫からは微量の魔力が発せられていたのだろう。
その魔力が形容し難い気配を醸していた。
路地に入った時に感じた気配は宝物庫だったようである。
「さすがにこの大きさの魔石は持ち出せなかったようだね」
言いながらレインは魔石に触れた。
「ええ、宝物庫全体を囲む魔石。金額にすればいくらくらいかしら」
目を輝かせながらノエルはそう語る。
時間はかかってしまったが何とか魔石にまで辿り着いた倉野たち。
すぐに倉野はイスベルグに話しかけた。
「イスベルグさん、魔法式の書き込みをお願いしてもいいですか?」
「ああ、良いが見つけるのに時間がかかったな。人間というやつは不便なものだ。目前にあったというのに」
「ドラゴンと一緒にしないでくださいよ。ただの人間なんですから」
倉野がそう話すとレインが苦笑しながら言葉を挟む。
「いや、俺たちからすればクラノも十分化け物だが」
「十分化け物ってどんな言葉ですか。十分が化け物に付属されることなんてありませんよ」
食い気味で言い返しながら倉野は魔石に触れた。
イスベルグの魔法式書き込みは直接魔石に触れて行う。
ネージュ島での経験から倉野はイスベルグの指示なく自ら魔石に触れたのだった。
すると、すぐにイスベルグの声が頭の中に響く。
「準備は良いか。全身の力を抜き、魔石と触れている部分に集中しろ」
指示通りに力を抜き魔石との接着面に意識を集める倉野。
体の内側から何かが流れ出るように感じ、その流れは魔石に触れている手に集まった。
その部分だけが暖かくなっていくのが分かる。
しばらくぬるま湯のような温度を感じていると、内側からの流れが止んだ。
「書き込み終了だ。後はそこの優男に発動させるんだな」
作業を終えたイスベルグの声を聞いた倉野は小さく頷き、レインに視線を送る。
「終了したそうです。これでこの魔石は転移魔法の魔石です」
「思っていたよりも早いな。転移魔法の魔法式は存在する魔法の中でも複雑なはずだ。流石は伝説のドラゴンと言ったところだね。感謝を伝えておいてくれるかい?」
レインがそう答えるとイスベルグは少し照れ臭そうに倉野の頭の中に声を響かせた。
「別に優男のためにやったわけじゃない」
「いや、ツンデレか。一昔前のラノベか」
思わずそう言い放つ倉野。
「ツンデレ?」
倉野が放った言葉の意味がわからず首を傾げるレイン。
そんな疑問を誤魔化すように倉野は話を進める。
「いや、何でもないですよ。それよりもレインさん、魔石の発動を任せてもいいですか?」
「ああ、もちろんだ。目的地はオランディの首都ウルステルダン、四人の王子を匿っている屋敷でいいかい?」
そうレインが確認すると倉野とノエルが同時に頷いた。
「そうですね」
「それでいいと思うわ。一番の目的は王子たちを守るってことだしね」
二人の同意を得たレインは再び魔石に触れる。
「では転移を開始するよ」
宣言したレインは魔石に魔力を流した。
レインが魔石に意識を集中させた瞬間、魔石が強く発光し倉野たちは強い浮遊感に襲われる。
まるで空に体が引っ張られたかのように浮かび上がった。
だが、強い光で視力を奪われた三人はその引力に従うしかない。
体を任せ、この先の戦いの覚悟を決める三人。
後日談ではあるが、宝物庫全体が強く発光し、町中を照らしたこの転移はベイスタリアル通りの謎として帝都中で話題になったという。
その魔力が形容し難い気配を醸していた。
路地に入った時に感じた気配は宝物庫だったようである。
「さすがにこの大きさの魔石は持ち出せなかったようだね」
言いながらレインは魔石に触れた。
「ええ、宝物庫全体を囲む魔石。金額にすればいくらくらいかしら」
目を輝かせながらノエルはそう語る。
時間はかかってしまったが何とか魔石にまで辿り着いた倉野たち。
すぐに倉野はイスベルグに話しかけた。
「イスベルグさん、魔法式の書き込みをお願いしてもいいですか?」
「ああ、良いが見つけるのに時間がかかったな。人間というやつは不便なものだ。目前にあったというのに」
「ドラゴンと一緒にしないでくださいよ。ただの人間なんですから」
倉野がそう話すとレインが苦笑しながら言葉を挟む。
「いや、俺たちからすればクラノも十分化け物だが」
「十分化け物ってどんな言葉ですか。十分が化け物に付属されることなんてありませんよ」
食い気味で言い返しながら倉野は魔石に触れた。
イスベルグの魔法式書き込みは直接魔石に触れて行う。
ネージュ島での経験から倉野はイスベルグの指示なく自ら魔石に触れたのだった。
すると、すぐにイスベルグの声が頭の中に響く。
「準備は良いか。全身の力を抜き、魔石と触れている部分に集中しろ」
指示通りに力を抜き魔石との接着面に意識を集める倉野。
体の内側から何かが流れ出るように感じ、その流れは魔石に触れている手に集まった。
その部分だけが暖かくなっていくのが分かる。
しばらくぬるま湯のような温度を感じていると、内側からの流れが止んだ。
「書き込み終了だ。後はそこの優男に発動させるんだな」
作業を終えたイスベルグの声を聞いた倉野は小さく頷き、レインに視線を送る。
「終了したそうです。これでこの魔石は転移魔法の魔石です」
「思っていたよりも早いな。転移魔法の魔法式は存在する魔法の中でも複雑なはずだ。流石は伝説のドラゴンと言ったところだね。感謝を伝えておいてくれるかい?」
レインがそう答えるとイスベルグは少し照れ臭そうに倉野の頭の中に声を響かせた。
「別に優男のためにやったわけじゃない」
「いや、ツンデレか。一昔前のラノベか」
思わずそう言い放つ倉野。
「ツンデレ?」
倉野が放った言葉の意味がわからず首を傾げるレイン。
そんな疑問を誤魔化すように倉野は話を進める。
「いや、何でもないですよ。それよりもレインさん、魔石の発動を任せてもいいですか?」
「ああ、もちろんだ。目的地はオランディの首都ウルステルダン、四人の王子を匿っている屋敷でいいかい?」
そうレインが確認すると倉野とノエルが同時に頷いた。
「そうですね」
「それでいいと思うわ。一番の目的は王子たちを守るってことだしね」
二人の同意を得たレインは再び魔石に触れる。
「では転移を開始するよ」
宣言したレインは魔石に魔力を流した。
レインが魔石に意識を集中させた瞬間、魔石が強く発光し倉野たちは強い浮遊感に襲われる。
まるで空に体が引っ張られたかのように浮かび上がった。
だが、強い光で視力を奪われた三人はその引力に従うしかない。
体を任せ、この先の戦いの覚悟を決める三人。
後日談ではあるが、宝物庫全体が強く発光し、町中を照らしたこの転移はベイスタリアル通りの謎として帝都中で話題になったという。
1
お気に入りに追加
2,851
あなたにおすすめの小説
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)
葵セナ
ファンタジー
主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?
管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…
不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。
曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!
ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。
初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)
ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。