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魔石の在り処

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 確かに宝物庫と言える様な量ではない。
 だが、他にも同じ様な木箱はある。
 三人は他にある木箱を覗いて回った。

「どう、そっちには入ってる?」

 自分も木箱を覗きながらノエルが尋ねる。
 しかし、どの箱も似たような状態であり、底の方にいくつかの金貨があるくらいだった。
 ヴェンデッタの規模を考えれば、少なすぎる。
 少し考えてからレインが状況をまとめた。

「明らかに金品が少ない。よく見れば最近木箱を動かしたような跡もあるな」

 レインの言葉通り、木箱の下には引きずったような痕跡があり、その部分にだけ埃が溜まっていない。
 そこから導き出せる答えは一つである。

「捕まらなかったヴェンデッタの残党が金品を持ち出したってことでしょうか」

 倉野がそう言葉にすると二人は納得するように頷いた。

「そうね。結界があった以上、無関係の人間は入れないわ。仕方ないけど、金品は諦めるしかないわね」

 残念そうに語るノエル。
 しかし、三人の目的は金品ではなく大きな魔石だ。
 金品を諦めても魔石を諦めるわけにはいかない。

「ああ、金品がなくても問題ないが、魔石がなければ転移魔法を使えないってことになる」

 レインは言いながら部屋中を見渡した。
 だが、それらしいものは見当たらない。
 大きな魔石があればすぐに分かるはずだ。
 ないことを確認するとレインは倉野に問いかける。

「クラノ、本当にここに魔石があったのかい?」
「え、ええ。イスベルグさんがそう言っているんですが・・・・・・ちょっと確認してみます。イスベルグさん、魔石が見当たらないんですが、本当にあるんですか?」

 そう倉野が問いかけるとイスベルグの面倒臭そうな声が頭の中で響いた。

「ああ、あるだろう、そこに」
「そこに?」
「そうだ、目の前だ」

 イスベルグの言葉を聞いた倉野は目を凝らして周囲を確認するがそれらしいものは見当たらない。
 そんな倉野の様子を見ていたノエルが首を傾げて問いかける。

「何をしているのよ。どこにあるって?」
「目の前にある、と言われました。でも、どこにもないですよね。あるのは木箱と壁くらいですし」

 そう倉野が話すと何かに気づいたレインが勢いよく壁に近づいた。

「まさかっ」

 レインは呟きながら壁に触れる。
 石を積み上げた壁にしばらく触れたレインは剣を抜いて構える。

「何してるのよ」

 いきなり攻撃態勢になったレインにノエルが問いかけた。
 すると、倉野の頭の中にイスベルグの声が響く。

「気づいたか。そうだ、そこにある」
「そこに?」

 首を傾げながら壁に剣を向けているレインを眺める倉野。
 レインは何も答えずに深く呼吸をし、一気に剣を振り上げた。

「はぁああああああ!」

 声を上げると同時に壁に向けて剣を振り下ろしたレイン。
 金属と石がぶつかり合う音が響き、壁からは土煙が上がった。

「あったぞ!」

 嬉々としてレインはそう叫ぶ。
 レインの声に反応した倉野とノエルは剣がぶつかった箇所に視線を送った。
 すると、その部分の石が剥がれ落ち、全く質感の違う石があらわになっている。
 その石は薄く発光しており、魔石であると一眼で分かった。

「そんなとこにあったのね」

 驚きながらコメントするノエル。

「この宝物庫全体が魔石で出来ていたんですね」

 倉野がそう言うとレインは剣を鞘に収めながら頷いた。
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