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状況と目的

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 イスベルグの話が本当であればこの紙切れが指し示す住所、ヴェンデッタの宝物庫に魔石があるはずだ。

「イスベルグさん、この住所が魔石につながっているんですね?」

 倉野が話しかけると気怠そうなイスベルグの声が響く。

「ああ、気配を感じるのだ。大きさまではわからんが、住所だけで魔石を感じさせる・・・・・・期待してもいいだろう」
「ありがとうございます。レインさん、ノエルさん。とにかく宝物庫に向かいましょう」

 そう言いながら倉野が部屋の扉に向かおうとするとノエルが倉野の手を掴んだ。

「ノエルさん?」
「もう一度聞くわ。本当にいいの、クラノ。命がけの戦いになるってことはわかってるわよね。オランディという国の行く末を決める戦いよ。甘い戦いにはならないわ。それでもお嬢様と話さなくていいの?」

 ノエルが倉野に問いかける。
 すぐに言葉の意味はわかった。
 死ぬかもしれないというこの状況。レイチェルに黙って飛び出していいのかとノエルは問いかけている。
 二度と言葉を交わせないかもしれない。何も残せないかもしれない。
 だが、倉野に迷いはなかった。

「大丈夫です。また戻ってくるので」

 死ぬつもりはないという強い意志主張である。
 倉野の言葉を聞いたノエルは強く頷いた。

「そうね、その通りだわ。無粋なことを聞いたわね。じゃあ、宝物庫に向かいましょうか」

 ノエルの言葉を合図に三人は一歩を踏み出す。
 倉野、レイン、ノエルはすぐに部屋を飛び出し、歩きながら状況の確認を始めた。

「いいかい。状況を確認しよう」

 言い出したのはレインである。

「オランディを守るためには、何としてでも王子たちを守らなければならない。そして王子たちの守護はオランディ最強の剣士フォルテが担っている」

 レインがそう話すと倉野が言葉を続けた。

「そのフォルテがスキル読心を持っていて、相手の心を読むことができるんですよね。そして王子たちに近寄る悪意や殺意を読み取り、敵を排除する」
「ああ、その通りだよ」

 そう頷くレイン。
 さらにノエルが言葉を足した。

「だけど、そのスキルを無効化する男バジルがいてノワール家に使えるレンヤってやつがバジルを連れてオランディに向かっているのね」
「そう。そして俺たちはバジルとレンヤよりも早くオランディにたどり着かなきゃならない。だが、最短距離で移動している奴らを最短距離で追いかけても差は縮まらない。追い抜く方法は転移魔法しかないってわけさ」

 レインがそう話すと倉野は走る速度を早目ながら頷く。

「はい。そして転移魔法を使うには大きな魔石が必要です。それがあるのはヴェンデッタの宝物庫」
「これが状況と目的だね」

 まとめるようにレインは言いながら頷いた。
 三人はさらに速度を上げて、屋敷の中を走り抜ける。
 しばらく進むと入り口が見えてきた。
 だが、その前に人影がある。
 月明かりに照らされ闇の中に浮かんでいた。
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