上 下
109 / 729
連載

契約の紋章

しおりを挟む
「はい、その通りです」

 そう言いながら倉野は自分の右腕を撫でる。
 そこにはイスベルグと契約した際に刻まれた紋章があり、服によって隠れていた。
 幾つもの線が重なりドラゴンと氷山を表している紋章はまるで刺青のように見える。
 一度その紋章を見ていたレインは倉野の仕草から、さらなる真実に気づいたようだった。

「右腕・・・・・・そう言えばクラノの右腕にドラゴンと氷山を表したような紋章が・・・・・・まさか、いや、そんな」
「どうしたの?」

 突如、驚き始めたレインに対して首を傾げるノエル。
 するとレインは恐る恐ると言ったように倉野に問いかけた。

「・・・・・・クラノはイスベルグと契約したのかい?」
「え、どうしてそれを?」

 イスベルグとの関係を当てられた倉野は素直に驚く。
 倉野の言葉を聞いたレインは一気に力が抜けたように椅子に座り込んでしまった。

「ドラゴンとの契約なんて、まさに御伽噺だよクラノ」

 そう話すレインの隣でノエルは言葉を失い唖然としている。
 何を驚かれているのか、と倉野は首を傾げた。
 そんな倉野の表情から察したのだろう。レインは口を開く。

「何を驚いているのか分かっていない顔だね、それは。俺たちはクラノがイスベルグに出会い、力を貸してもらったのだと思っていたのさ。だが、契約をしたということはクラノがドラゴンを従えているという証。つまりドラゴンのマスターということだよ」
「従えているつもりはないのですが、イスベルグさんにとって僕と契約するのが都合いいらしいです」

 そう答える倉野。
 しかし思っていたよりもイスベルグとの契約の話が与えた衝撃は大きかったようだ。
 我を取り戻したノエルが早口で捲し立てるように言葉を放つ。

「ド、ドラゴンなんて軍隊が軍隊になっても勝てないのよ。それと契約したなんてどんな化け物なのよクラノ」

 まさかいきなり化け物呼ばわりされるとは思っていなかった、と心の中で呟きながら、倉野は首を横に振る。

「け、契約といっても、自由に力を使ったり命令したりできるわけじゃありませんよ」
「だが、イスベルグの魔法を使った瞬間があったんじゃないかい?」

 そう聞き返すレイン。
 そのままレインは言葉を続けた。

「ヴェンデッタのアジトで敵と戦っている時、クラノは氷系の魔法を使った。上級・・・・・・いや超級すら超えた強力な魔法さ。それにその時クラノは精霊に呼びかける詠唱を行なっていた。あれは大昔の魔法だよ」
「確かにそうです。あの時スキルが使えなかった僕はイスベルグさんに助けられました。ですが、僕がイスベルグさんの魔法を使うと魔力酔いによって倒れてしまうんです」
「なるほど、いきなり倒れて三日間眠っていたのは魔力酔いだったのかい。自由に使えるわけじゃないってのはそういうことか」

 言いながらレインは納得する。
しおりを挟む
感想 67

あなたにおすすめの小説

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。

長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍2巻発売中ですのでよろしくお願いします。  女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。  お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。  のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。   ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。  拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。  中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。 旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。