異世界で俺だけレベルが上がらない！ だけど努力したら最強になれるらしいです？

連載

不安材料

　少し難しい表情をしてからレインはそう話した。
　現在進行形で何が起きているのか、誰が事件を起こしたのか。
　人は分からないことを恐れる。分からないことを恐怖と感じ、知らないことが不安に繋がる。
　そんな不安がレインの心の中に溢れていた。
　レインは不安の原因を言葉にする。

「今分かっていないことは、第二王子暗殺を計画した主犯の正体だ。目的は王位継承で間違いないだろうからね」

　そうレインが言葉にするとすぐにノエルが捕捉した。

「それはそうだけど、実行犯がスネークかどうかも確認していた方がいいんじゃない。あと、今後の行動と・・・・・・さっき話してたスキル無効化ができる男の動向も」

　ノエルの言葉を聞いていた倉野は頷く。

「そうですね。不安材料は全て確認しておきましょう」
「ああ、クラノ頼んでもいいかい？」
「任せてください。スキル説明発動。対象はオランディ第二王子殺害の実行犯」

　倉野がそう唱えると目の前に画面が表示された。
　そこに表示された答え。事実を読み上げる倉野。

「オランディ第二王子ジュウザ・ウィンドミルを殺害したのはスネークと呼ばれる殺し屋。本名はイクルール・スナイダル・・・・・・実行犯はスネークで間違いない様ですね」
「・・・・・・そうか。やはりスネークか」

　自分が仕えていた第二王子ジュウザの死を改めて確認したレインは、怒りと悲しみ、悔しさを織り交ぜた表情で頷いた。
　そんな表情を見て自分も心苦しくなる倉野だったが、少しでも前に進むために話を続ける。

「次は、主犯ですね。スキル説明発動。対象はスネークにジュウザさん殺害を指示した者」

　再び倉野がスキルを発動すると、画面の文字が更新された。

「で、誰なのよ」

　話を聞いていたノエルが倉野を急かす。
　倉野は画面に目を通し、それを読み上げた。

「スネークにジュウザ・ウィンドミル殺害を指示した者の名前はアヴァール・ノワール」

　その名前から明らかにノワール家の者だとわかる。
　倉野の言葉を聞いたレインは一瞬眉間にシワを寄せて、奥歯を噛み締めた。

「やはりか・・・・・・アヴァール・・・・・・ノワール！」

　レインの声には明らかに怒りが乗っている。
　ある程度予想していたことだが、いくら予想していたとしてもレインにとってはショックなのだろう。同じ国の同じ貴族が王位継承権欲しさに殺害を指示したのだ。
　それが受け入れ難いことくらい倉野にもわかる。
　しかし、今はするべきことを進めなくてはならない。
　そう考えたノエルが口を開いた。

「レイン。気持ちはわかるけど感傷に浸っている場合でも、ただ怒りを燃やしている場合でも無いわよ。話を進めなきゃ」
「ああ、その通りだよ」

　ノエルの言葉で少し冷静さを取り戻したレインは頷く。
　その様子を見たノエルは安心した様に微笑んでから再び口を開いた。

「それで、そのアヴァールは何者なの？」
「・・・・・・ノワール家の当主さ。ノワール家から王に嫁いだ王妃様の弟にあたる。元々、野心が強い男だと言われていた。もしノワール家が王家となればオランディを支配するのはアヴァールだよ」

　自分の額に触れながらレインはそう答える。