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連載
姫のヒメゴト
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とっさにレイチェルの前に飛び出す倉野。
考えるよりも体が先に動いていた。
飛来する何かと向かい合った瞬間に倉野は違和感を感じる。
敵意も殺意も悪意も感じない。それどころか感じるのは柔らかな愛情だった。
「クー!」
「って、ツクネ!」
そう飛来していたのはツクネである。
弾丸のような速度で倉野の胸に飛び込んで来た。
柔らかく温かい弾丸を受け止めながら倉野は口元を緩める。
「ツクネ、起きてたのか。てっきり鞄の中で眠っているのかと」
「ククッ!」
嬉しそうに頬擦りするツクネ。
そんな姿を見たレイチェルは微笑みながら口を開いた。
「ツクネちゃんはずっとクラノ様の枕元で守るように眠っていたそうですよ。それを見ていたシラムがツクネちゃんを説得したのです。何かあってもレイン様やシラムがクラノ様をお守りするので食事をされてはどうか、と。最初は渋っていたそうなのですが、レイン様に説得されたことで納得したツクネちゃんは我が家の使用人に連れられ、食事をしていたんですよ」
そう言いながらレイチェルはツクネが飛んで来た方向を見る。
おそらく使用人だと思われる男が立っており、ツクネを見守っていた。
その男にレイチェルは微笑みかけて、指示する。
「ツクネちゃんを連れてきてくださりありがとうございます。後は大丈夫ですよ」
「は、はい。失礼します」
使用人はそう答えてから立ち去った。
すぐに倉野はツクネを抱きしめて話しかける。
「そうか、眠っているところを守ってくれていたのかツクネ」
「ククク!」
「ありがとうな。今回もツクネに助けられた」
「クー」
ツクネは嬉しそうに返事をしてから、倉野の首に巻きついた。
「ふふっ、どうやら眠たいようですね。ツクネちゃん」
レイチェルはツクネの表情を見ながらそう微笑む。
倉野の首に巻き付いたツクネは眠そうに大きなあくびをして尻尾で顔を隠した。
そんなツクネを撫でながら倉野は再び口元を緩める。
「お腹一杯になって眠くなったのかな。ゆっくりお休み」
そう言ってから倉野はレイチェルの方を見て言葉を続けた。
「じゃあ、行きましょうか」
「はい。こちらです」
レイチェルは頷いてから歩き出す。
しばらく敷地内を歩くと、綺麗に植木が並んでいる場所に出た。
まるで壁のように植木が並び、通路のようになっている。
その先には植木に囲まれた空間があり、白い石で作られた屋根が見えた。
西洋風あずまやと呼ばれる、外壁のない柱だけの小屋のような物である。
その下には小さな二人がけのベンチが設置されていた。
「ここがお気に入りなんです」
そう言いながらベンチに腰掛けるレイチェル。
「いい場所ですね」
どうしていいか分からずそう答える倉野にレイチェルは自分の隣を手で指し示し、座るように促した。
促されるままベンチに座る倉野に微笑みを向けながらレイチェルは口を開く。
「ここに来るとなんでも話せるんです。一人で抱えてる悩みでもなんでも。この植木たちが隠してくれるんですよね」
「確かに、一人になりたい時ちょうど良いかもしれませんね」
そう答える倉野にレイチェルはこう問いかけた。
「一人になりたい時にも良い場所なのですが、二人っきりになりたい時にもちょうど良いと思いませんか?」
「え?」
考えるよりも体が先に動いていた。
飛来する何かと向かい合った瞬間に倉野は違和感を感じる。
敵意も殺意も悪意も感じない。それどころか感じるのは柔らかな愛情だった。
「クー!」
「って、ツクネ!」
そう飛来していたのはツクネである。
弾丸のような速度で倉野の胸に飛び込んで来た。
柔らかく温かい弾丸を受け止めながら倉野は口元を緩める。
「ツクネ、起きてたのか。てっきり鞄の中で眠っているのかと」
「ククッ!」
嬉しそうに頬擦りするツクネ。
そんな姿を見たレイチェルは微笑みながら口を開いた。
「ツクネちゃんはずっとクラノ様の枕元で守るように眠っていたそうですよ。それを見ていたシラムがツクネちゃんを説得したのです。何かあってもレイン様やシラムがクラノ様をお守りするので食事をされてはどうか、と。最初は渋っていたそうなのですが、レイン様に説得されたことで納得したツクネちゃんは我が家の使用人に連れられ、食事をしていたんですよ」
そう言いながらレイチェルはツクネが飛んで来た方向を見る。
おそらく使用人だと思われる男が立っており、ツクネを見守っていた。
その男にレイチェルは微笑みかけて、指示する。
「ツクネちゃんを連れてきてくださりありがとうございます。後は大丈夫ですよ」
「は、はい。失礼します」
使用人はそう答えてから立ち去った。
すぐに倉野はツクネを抱きしめて話しかける。
「そうか、眠っているところを守ってくれていたのかツクネ」
「ククク!」
「ありがとうな。今回もツクネに助けられた」
「クー」
ツクネは嬉しそうに返事をしてから、倉野の首に巻きついた。
「ふふっ、どうやら眠たいようですね。ツクネちゃん」
レイチェルはツクネの表情を見ながらそう微笑む。
倉野の首に巻き付いたツクネは眠そうに大きなあくびをして尻尾で顔を隠した。
そんなツクネを撫でながら倉野は再び口元を緩める。
「お腹一杯になって眠くなったのかな。ゆっくりお休み」
そう言ってから倉野はレイチェルの方を見て言葉を続けた。
「じゃあ、行きましょうか」
「はい。こちらです」
レイチェルは頷いてから歩き出す。
しばらく敷地内を歩くと、綺麗に植木が並んでいる場所に出た。
まるで壁のように植木が並び、通路のようになっている。
その先には植木に囲まれた空間があり、白い石で作られた屋根が見えた。
西洋風あずまやと呼ばれる、外壁のない柱だけの小屋のような物である。
その下には小さな二人がけのベンチが設置されていた。
「ここがお気に入りなんです」
そう言いながらベンチに腰掛けるレイチェル。
「いい場所ですね」
どうしていいか分からずそう答える倉野にレイチェルは自分の隣を手で指し示し、座るように促した。
促されるままベンチに座る倉野に微笑みを向けながらレイチェルは口を開く。
「ここに来るとなんでも話せるんです。一人で抱えてる悩みでもなんでも。この植木たちが隠してくれるんですよね」
「確かに、一人になりたい時ちょうど良いかもしれませんね」
そう答える倉野にレイチェルはこう問いかけた。
「一人になりたい時にも良い場所なのですが、二人っきりになりたい時にもちょうど良いと思いませんか?」
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