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太陽の女神

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「ありがとうございます。何かあれば頼らせていただきます。と言っても、既にルーズさんとアルフォロッソさんの件やハウンドさんたちの帰国に協力してもらってますよね」

 倉野が答えると伯爵はゆっくり首を横に振った。

「その程度で返せる恩ではない。そう覚えておいてくれ」
「わかりました」
 そう答える倉野に伯爵は優しい微笑みを見せる。
 その後、おもむろに伯爵は立ち上がった。

「さて、と。私は山積みの仕事に戻るとしよう。クラノ殿、今日はいい天気だ。外で陽の光を浴びると心地よいだろう。眠っていた体に自分が目覚めたことを教えるのも大切だ」

 言いながら部屋を出るグウランダー伯爵。
 倉野はその背中に頭を下げた。

「わざわざありがとうございました」

 伯爵を見送ると、倉野は視線をスライドしてレイチェルに微笑みかける。

「よく考えると伯爵ほどの人がお見舞いに来てくれるってすごいですよね」
「そんなことありません。相手を思いやるのに地位や立場は関係ないですから」

 そう答えるレイチェルに倉野は暖かさを感じた。
 受け継がれたグランダー伯爵の優しさなのだろうか。
 倉野はベッドから立ち上がって、伸びをしながら言葉を続ける。

「じゃあ、伯爵に言われたように陽の光を浴びに行きましょうか」
「はい。我が家の敷地内にお気に入りの場所があるんです。良かったら案内してもいいですか?」

 レイチェルにそう問いかけた倉野は優しく頷いた。

「それは楽しみですね。ぜひお願いします」

 倉野が答えるとレイチェルも立ち上がり、二人並んで部屋を出る。

「こちらです」

 レイチェルに案内されるまま屋敷内を歩き、しばらく通路を歩き外に出た。
 三日も寝ていた倉野にとっては久しぶりの直射日光。
 陽の眩しさが目の奥に染みる。
 だが、その暖かさは体中に染み渡っていくようで心地よい。
 やはり人間には陽の光が必要なのだと実感する。

「気持ちいいですね」

 上品な笑顔で倉野に語りかけるレイチェル。
 光に照らされたその白い肌は季節外れの雪のように淡く溶けてしまいそうだった。
 ちょうど良く赤い頬が妙に可愛らしい。
 見惚れていた倉野はぎこちなく返事をした。

「え、は、はい。やっぱり外はいいですね。風もちょうどいいです」
「どうかされましたか?」
「い、いや、なんでもないですよ」

 見惚れていたなんて言えない倉野はそう答える。
 その瞬間、二人の背後から声が聞こえた。

「お嬢様、そちらに向かっています!」

 倉野とレイチェルは即座に振り返る。
 すると背後から二人目掛けて、サッカーボールほどの物が勢いよく飛びかかってきていた。
 
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