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連載
解放と開放
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そんなリマス見下ろした倉野は怒りのままに拳を振り下ろす。
豪快な衝突音が響き渡り、土煙が舞い上がった。
「クラノ殿!」
思わずグランダー伯爵は土煙に向かって叫ぶ。
土煙が風に流されると倉野の姿が見えた。
リマスに振り下ろされたと思っていた拳はリマスの目の前にある床に叩きつけられ、その場所を抉っている。
「殺す価値もないですし、生きて償わせましょう。簡単に楽にしませんよ」
そう言いながら倉野は気絶し泡を噴いているリマスを見下ろした。
ようやく終わった、と倉野は深呼吸する。
その後、倉野はグランダー伯爵に歩み寄り右手を差し出した。
その手に掴まり立ち上がる伯爵。
「ありがとう。ようやく終わった・・・・・・」
長い長い苦しみから解き放たれたように伯爵はそう言った。
しかし倉野は首を横に振る。
「残念ながら、グランダー伯爵にはまだ頑張っていただかなければいけません。ヴェンデッタの討伐、ルチェルトラの断罪」
「ああ、わかっているさ。ヴェンデッタもルチェルトラも必ず追い込むと約束しよう」
頷きながら答える伯爵。
解決しなければならない問題はいくらでも残っていた。
だが今だけは、と倉野は口を開く。
「本当に良かった・・・・・・」
そう言いながら、目頭を抑える倉野。
大切な人を救うために戦った。
途中、自分の無力さを思い知らされる。
だが、諦めるわけにはいかなかった。
何としてでも救わなければいけない人がいて、何としてでも倒さなければならない男がいたのである。
その苦労が今、結果になった。
命を懸けていた緊張感から解き放たれ、安堵した倉野は緩んだ涙腺から溢れる熱いものを感じていた。
「何泣いてるんだい」
聞こえてきた声に反応して倉野が顔を上げると、息を切らしボロボロになっているレインが微笑んでいる。
「レインさん、どうしてここに」
「どうしてって約束しただろう。戻ってくるってね。まぁ、途中見かけたヴェンデッタの奴らを相手にしてたら遅くなってしまったけどね」
そう答えながらレインは右肩を抑えた。
よく見ればそこから出血しており、カタラーナを守りながら戦っていたレインの苦労が分かる。
そんな状況でボロボロになりながらも戻ってきてくれたのだった。
倉野は無性におかしくなって笑う。
「ははっ、約束のために頑張りすぎですよ。騎士って生きづらそうですね」
「騎士は身分でも役職でもない、生き方だからね。勝手に体が動くのさ」
そう言って微笑むレインにグランダー伯爵は頭を下げた。
「君にも心からお礼を言いたい。ありがとう」
「あ、頭を上げてください。やれる事をやっただけですから」
「いや、どれだけ感謝してもしきれない」
グランダー伯爵の言葉を受け止めるレイン。
そんな話をしているとノエルが話に入ってきた。
「どうしたのよ。詳しくは知らないけど、問題が解決したんでしょ。今くらい喜んでもいいんじゃない」
その言葉を聞いたグランダー伯爵は豪快に笑う。
「はっはっは、確かにそうだ。これから先、やることが山積みだと言っても、今この瞬間が喜ばしいことに変わりはない。さて、では後処理をはじめるか。クラノ殿、肩を借りてもいいかな」
「ええ、もちろんです」
倉野はそう言いながらグランダー伯爵の肩を支え、歩き始めた。
そんな二人の姿を見ていたレインはいたずらな笑顔を浮かべてノエルに話しかける。
「ああ、俺もかなりのダメージを負ってしまった。肩を貸していただけないかな、レディ」
「なーに言ってんのよ。元気そうにしてるじゃないの」
ノエルはそう答えてから振り返り、倉野たちの背中を追った。
だが、一歩進んだところで立ち止まりレインに手を伸ばす。
「ほら、早くいくわよ」
「たっく、素直じゃないねぇ」
「うるさい」
そう言いながらノエルは少しだけ口角をあげた。
豪快な衝突音が響き渡り、土煙が舞い上がった。
「クラノ殿!」
思わずグランダー伯爵は土煙に向かって叫ぶ。
土煙が風に流されると倉野の姿が見えた。
リマスに振り下ろされたと思っていた拳はリマスの目の前にある床に叩きつけられ、その場所を抉っている。
「殺す価値もないですし、生きて償わせましょう。簡単に楽にしませんよ」
そう言いながら倉野は気絶し泡を噴いているリマスを見下ろした。
ようやく終わった、と倉野は深呼吸する。
その後、倉野はグランダー伯爵に歩み寄り右手を差し出した。
その手に掴まり立ち上がる伯爵。
「ありがとう。ようやく終わった・・・・・・」
長い長い苦しみから解き放たれたように伯爵はそう言った。
しかし倉野は首を横に振る。
「残念ながら、グランダー伯爵にはまだ頑張っていただかなければいけません。ヴェンデッタの討伐、ルチェルトラの断罪」
「ああ、わかっているさ。ヴェンデッタもルチェルトラも必ず追い込むと約束しよう」
頷きながら答える伯爵。
解決しなければならない問題はいくらでも残っていた。
だが今だけは、と倉野は口を開く。
「本当に良かった・・・・・・」
そう言いながら、目頭を抑える倉野。
大切な人を救うために戦った。
途中、自分の無力さを思い知らされる。
だが、諦めるわけにはいかなかった。
何としてでも救わなければいけない人がいて、何としてでも倒さなければならない男がいたのである。
その苦労が今、結果になった。
命を懸けていた緊張感から解き放たれ、安堵した倉野は緩んだ涙腺から溢れる熱いものを感じていた。
「何泣いてるんだい」
聞こえてきた声に反応して倉野が顔を上げると、息を切らしボロボロになっているレインが微笑んでいる。
「レインさん、どうしてここに」
「どうしてって約束しただろう。戻ってくるってね。まぁ、途中見かけたヴェンデッタの奴らを相手にしてたら遅くなってしまったけどね」
そう答えながらレインは右肩を抑えた。
よく見ればそこから出血しており、カタラーナを守りながら戦っていたレインの苦労が分かる。
そんな状況でボロボロになりながらも戻ってきてくれたのだった。
倉野は無性におかしくなって笑う。
「ははっ、約束のために頑張りすぎですよ。騎士って生きづらそうですね」
「騎士は身分でも役職でもない、生き方だからね。勝手に体が動くのさ」
そう言って微笑むレインにグランダー伯爵は頭を下げた。
「君にも心からお礼を言いたい。ありがとう」
「あ、頭を上げてください。やれる事をやっただけですから」
「いや、どれだけ感謝してもしきれない」
グランダー伯爵の言葉を受け止めるレイン。
そんな話をしているとノエルが話に入ってきた。
「どうしたのよ。詳しくは知らないけど、問題が解決したんでしょ。今くらい喜んでもいいんじゃない」
その言葉を聞いたグランダー伯爵は豪快に笑う。
「はっはっは、確かにそうだ。これから先、やることが山積みだと言っても、今この瞬間が喜ばしいことに変わりはない。さて、では後処理をはじめるか。クラノ殿、肩を借りてもいいかな」
「ええ、もちろんです」
倉野はそう言いながらグランダー伯爵の肩を支え、歩き始めた。
そんな二人の姿を見ていたレインはいたずらな笑顔を浮かべてノエルに話しかける。
「ああ、俺もかなりのダメージを負ってしまった。肩を貸していただけないかな、レディ」
「なーに言ってんのよ。元気そうにしてるじゃないの」
ノエルはそう答えてから振り返り、倉野たちの背中を追った。
だが、一歩進んだところで立ち止まりレインに手を伸ばす。
「ほら、早くいくわよ」
「たっく、素直じゃないねぇ」
「うるさい」
そう言いながらノエルは少しだけ口角をあげた。
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