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その怒り、地下にて

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 その男たちは殺気を放ちながら、入り口を警戒していた。
 スキル隠密で認識されない状態ながらも警戒しレインは小さな声で倉野に話しかける。

「見張りがいるな。だが、思っていたよりも少ない・・・・・・まだ俺たちの情報は届いていないと考えていいだろう」
「そうですね。僕たちの情報が届いているのなら、もっと人が集まっているはずですもんね」
「ああ、だが、チャンスだ。さっさとカタラーナを助け出そう。居場所はわかるかい?」
「はい、先ほど確認しています」

 倉野はそう答えた。
 ツクネの風魔法で貴族街に突入している中、スキル説明でカタラーナの居場所を確認していた倉野。
 そしてその居場所がルチェルトラ邸の地下だと説明する。

「なるほど、地下か」

 頷くレインに倉野は詳しい説明を加えた。

「地下の物置を改造した牢屋があるようです。カタラーナさんはそこに・・・・・・」
「地下牢・・・・・・下衆の考えそうなことだな」

 不快感を露わにするレイン。
 地下への行き方も確認していた倉野は、そちらに足を向ける。

「行きましょう」

 広間から奥に向かい、幾つかの部屋を経由して地下への階段を降りた。
 階段を降りるごとにどんどん暗くなっていく。
 所々においてある燭台の火だけが足下を照らしていた。
 空気は淀み、埃っぽい。
 こんなところに女性が捕らえられているなんて信じたくなかった。

「・・・・・・ひどい環境だ」

 険しい表情でレインはそう呟く。
 階段を降りるとすぐに鉄格子が目に入った。
 所々錆びており、清潔さのかけらも無い。
 その奥に、うずくまっている人影が見えた。
 周囲を確認して、誰もいないことを確認した倉野はスキル隠密を解除する。

「だ、誰・・・・・・もう・・・・・・やめてください」

 そう言いながら、人影は壁際に体を寄せた。
 燭台の火が人影を照らすと、ひどく汚れた女性だと分かる。
 間違いなくカタラーナだ。
 そしてその言葉や怯え方から、どのような扱いを受けていたのかが見てとれる。
 レインは可能な限り穏やかな声で言葉をかけた。

「カタラーナかい?」
「な、何ですか・・・・・・」

 やはりカタラーナは怯えている。
 こんな暗闇で人質として過ごしてきたのだ。無理はない。
 話を聞いてもらうために、倉野はジュアルの名を出す。

「カタラーナさん。僕たちはジュアルに頼まれてここへ来ました」
「・・・・・・兄さんに?」

 恐る恐る聞き返すカタラーナに倉野は答えた。

「はい」
「に、兄さんは無事なんですか・・・・・・?」

 そう問いかけてくるカタラーナに違和感を感じるレイン。

「どういうことだい?」
「だって・・・・・・私がここから逃げ出したら、兄さんの命はないって・・・・・・」

 カタラーナの言葉を聞いた倉野とレインは状況を察した。

「つまり、カタラーナを人質にしてジュアルを従わせ、ジュアルを人質にしてカタラーナを捕らえ続けていた・・・・・・ということかい」

 心の奥底から溢れてくる憤りを乗せながらレインはそう話す。
 リマスは兄妹の絆を利用して、二人ともを従わせていたのだった。
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