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信頼と誠意と覚悟
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倉野は背後にレインがいることを確認すると歩くスピードを上げる。
そのスピードはどんどんと上がり、酒場を出た頃には走っていた。
酒場を出た倉野は周囲にヴェンデッタメンバーがいることを確認し、即座にスキル隠密を発動する。
スキル無効を習得していない限り、倉野とレインの姿は認識されない状態で村を駆け抜けていった。
ヴェンデッタがアジトにしている村を出て、森の道に入ったところで走りながら倉野がレインに話しかける。
「レインさん、いいんですか?」
「・・・・・・貴族と戦うことかい?」
「その通りです。ヴェンデッタを相手に戦うのとはワケが違う」
倉野はそう言いながら真剣な眼差しで地面を蹴った。
するとレインは負けじと地面を抉るように蹴りながら答える。
「ここまで来て、クラノを一人で行かせるわけには行かないだろう。それに約束しただろう、グランダー伯爵にな」
その言葉を聞いた倉野は涙が溢れそうになった。
自分の目的のために命を懸けてくれるレインの気持ちへの感謝もあったが、情けなさが涙の成分の大半を占めている。
レイチェルと面識もないレインが命懸けで戦っているというのに、自分は先ほどの戦いで動けなくなってしまった。
スキル全てを無効化された倉野は気づいたのである。スキルがなければ自分には何もないということに。
まるで蛇に睨まれた蛙のように何もできなかった。
そんな自分が情けなくて仕方がなかった倉野。
何があっても戦うと強く思っていたのだが、それは負けるわけがないという驕りの上に建っていた砂の城だったようだ。
奇跡的にもイスベルグの力を借り、絶体絶命の状況から抜け出したが、自分の弱さを再認識したのである。
そのような倉野の気持ちを察したのかレインが倉野の背中を叩いた。
「なんて顔してるんだい?気持ちはわかるが、命懸けの戦いってのはまともじゃ出来ない。そういう意味では倉野は普通さ」
「それじゃあ駄目なんです。戦わなければならないんですから」
「それは違うよ。クラノの良さは普通なところにあるのさ。普通だからこそ他人の気持ちを理解しようとする。思いやり、寄り添い、繋がる。だから、他人のために動くことができるんだよ。そして利己的じゃないからこそ、目的のために最短で動くことができるんだよ。ジュアルへの敵意をリマスに変更したようにね」
レインにそう言われた倉野は足に力が入る。
そうだ、と心の中で頷いた。
自分が弱いからこそ乗り越えるために努力をしたのである。
その努力が結果になったものがスキルだった。
弱さは伸び代。
倉野は情けないという気持ちを地面に投げ捨てて、前へ前へと進んだ。
「ありがとうございます、レインさん。もう揺れません」
「ああ、行こう。全ての決着をつけるために」
その後レインは走りながら、ジュアルからの言付けを伝える。
レイチェルへの呪いは解いた、という話だ。
ジュアルにとってレイチェルへの呪いは保険である。
リマスに妹カタラーナが捕まっている以上、レイチェルに呪いをかけなければカタラーナの身が危うい。
倉野たちがカタラーナを救いに行っているとはいえ、それが成功するとは限らないだろう。
そんな状況でレイチェルの呪いを解くのは倉野たちへの誠意と信頼の表れであった。
呪いによってレイチェルはいつ命を落とすか分からない。いち早く呪いを解かなければならない場面ではあった。
恨むべき相手である自分のために命懸けで戦ってくれる倉野たちを信頼するというジュアルなりの覚悟であり誠意である。
話を聞いた倉野は強く頷いた。
「僕たちを信じてくれたジュアルはすぐにでもレイチェルさんを苦しみから解放したいと思ってくれたんですね」
倉野がそう話すとレインも頷く。
「ああ、そうだろうな。クラノの言っていたようにジュアルもまた被害者なのだろう」
そんな話をしながら二人は森を抜けた。
そのスピードはどんどんと上がり、酒場を出た頃には走っていた。
酒場を出た倉野は周囲にヴェンデッタメンバーがいることを確認し、即座にスキル隠密を発動する。
スキル無効を習得していない限り、倉野とレインの姿は認識されない状態で村を駆け抜けていった。
ヴェンデッタがアジトにしている村を出て、森の道に入ったところで走りながら倉野がレインに話しかける。
「レインさん、いいんですか?」
「・・・・・・貴族と戦うことかい?」
「その通りです。ヴェンデッタを相手に戦うのとはワケが違う」
倉野はそう言いながら真剣な眼差しで地面を蹴った。
するとレインは負けじと地面を抉るように蹴りながら答える。
「ここまで来て、クラノを一人で行かせるわけには行かないだろう。それに約束しただろう、グランダー伯爵にな」
その言葉を聞いた倉野は涙が溢れそうになった。
自分の目的のために命を懸けてくれるレインの気持ちへの感謝もあったが、情けなさが涙の成分の大半を占めている。
レイチェルと面識もないレインが命懸けで戦っているというのに、自分は先ほどの戦いで動けなくなってしまった。
スキル全てを無効化された倉野は気づいたのである。スキルがなければ自分には何もないということに。
まるで蛇に睨まれた蛙のように何もできなかった。
そんな自分が情けなくて仕方がなかった倉野。
何があっても戦うと強く思っていたのだが、それは負けるわけがないという驕りの上に建っていた砂の城だったようだ。
奇跡的にもイスベルグの力を借り、絶体絶命の状況から抜け出したが、自分の弱さを再認識したのである。
そのような倉野の気持ちを察したのかレインが倉野の背中を叩いた。
「なんて顔してるんだい?気持ちはわかるが、命懸けの戦いってのはまともじゃ出来ない。そういう意味では倉野は普通さ」
「それじゃあ駄目なんです。戦わなければならないんですから」
「それは違うよ。クラノの良さは普通なところにあるのさ。普通だからこそ他人の気持ちを理解しようとする。思いやり、寄り添い、繋がる。だから、他人のために動くことができるんだよ。そして利己的じゃないからこそ、目的のために最短で動くことができるんだよ。ジュアルへの敵意をリマスに変更したようにね」
レインにそう言われた倉野は足に力が入る。
そうだ、と心の中で頷いた。
自分が弱いからこそ乗り越えるために努力をしたのである。
その努力が結果になったものがスキルだった。
弱さは伸び代。
倉野は情けないという気持ちを地面に投げ捨てて、前へ前へと進んだ。
「ありがとうございます、レインさん。もう揺れません」
「ああ、行こう。全ての決着をつけるために」
その後レインは走りながら、ジュアルからの言付けを伝える。
レイチェルへの呪いは解いた、という話だ。
ジュアルにとってレイチェルへの呪いは保険である。
リマスに妹カタラーナが捕まっている以上、レイチェルに呪いをかけなければカタラーナの身が危うい。
倉野たちがカタラーナを救いに行っているとはいえ、それが成功するとは限らないだろう。
そんな状況でレイチェルの呪いを解くのは倉野たちへの誠意と信頼の表れであった。
呪いによってレイチェルはいつ命を落とすか分からない。いち早く呪いを解かなければならない場面ではあった。
恨むべき相手である自分のために命懸けで戦ってくれる倉野たちを信頼するというジュアルなりの覚悟であり誠意である。
話を聞いた倉野は強く頷いた。
「僕たちを信じてくれたジュアルはすぐにでもレイチェルさんを苦しみから解放したいと思ってくれたんですね」
倉野がそう話すとレインも頷く。
「ああ、そうだろうな。クラノの言っていたようにジュアルもまた被害者なのだろう」
そんな話をしながら二人は森を抜けた。
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