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作戦目的と戦略目的
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倉野の言葉を聞いたジュアルは数秒悩んでから覚悟を決める。
「わかった・・・・・・約束しよう。俺にとって大切なのはカタラーナだけだ」
ジュアルはそう答えた。
周囲にいた他のヴェンデッタメンバーたちは口々にジュアルを罵っているが、全く動けないので問題はない。
ジュアルと約束を交わした倉野は再び小さな声でイスベルグに話しかけた。
「イスベルグさん」
「次はなんだ?」
「ジュアルの拘束だけを解くことはできますか?」
「また甘いことを言っているな。約束をしたと言っても所詮は口約束だろう。このまま逃げ出したらどうするつもりだ?人間は簡単に裏切るぞ」
その言葉には過去に人間の国と戦ったイスベルグの悲しみが込められている。
それを理解しながらも倉野は言葉を続けた。
「確かに裏切る人間もいますが、今のジュアルが逃げるとは思えません。もし万が一・・・・・・いや億が一にも僕たちがリマスを倒せなかった場合、ジュアルに選択肢を残したいんです」
倉野たちがリマスに負けた場合、ジュアルがヴェンデッタを裏切る予定であったと知られ、カタラーナに危害を加えられる可能性がある。
その場合、ジュアルの身が自由であれば様々な手段が取れるだろう。
倉野の思いを聞いたイスベルグはため息をついてから言葉を返した。
「砂糖菓子のような思考は染み付いたものなのだろうな。理解し難い行動だがお前がそうしたいのなら私はそれに力を貸そう。右手を呪術師に向けろ」
「ありがとうございます」
小さな声でお礼を言った倉野は右手をジュアルに向ける。
するとその瞬間にジュアルの体を縛っている氷が崩れ落ちた。
「お、おい、いいのか?俺の拘束を解いて」
驚きながら話すジュアル。
倉野は小さく頷いた。
「僕たちは信じるしかないんだ、先ほどの口約束を。どうせ信じるなら、信じ切ったほうがいいだろう」
倉野はそう言いながらレインに歩み寄る。
するとレインは優しく微笑んだ。
「全く、クラノはどこまでもクラノだな。さて、戦略目的は変わらないが作戦目的は変わってしまったね。行こうか、リマス・ルチェルトラのいる場所に」
そう言いながらレインはジュアルに近づき、右手を向ける。
「癒しを」
何をするのか、と思った瞬間にジュアルはそう唱えた。
すると先ほどレインがつけたジュアルの首元にある傷が光を纏い、治癒される。
「傷を・・・・・・」
呟きながらジュアルが首元を摩った。
するとレインは広角を上げて、倉野を指差す。
「仕方ないだろう。クラノがキミを信じるなら俺も信じるしかない」
「・・・・・・」
様々な考えが頭の中に溢れ、うまく言葉が出ないジュアル。
そんなジュアルを置いて、レインは倉野に言葉をかけた。
「さて、とにかく、帝都に戻るか」
「そうですね。時間が惜しい」
そう言いながら、酒場の入り口に向かう倉野。
その背後についていくレインにジュアルが声をかけた。
「お、おい」
「ん?どうしたんだい?」
「これを持っていけ」
ジュアルはそう言いながら一枚の紙をレインに手渡す。
受け取ったレインは確認して微笑んだ。
「ふっ、どうやら信用してくれているようだな。ありがたく受け取ろう」
「あの男に伝えてくれ、呪いは解いておく・・・・・・だから、カタラーナを救ってほしいと」
様々な感情を噛み殺すようにジュアルは言いながら頭を下げる。
レインは大きく頷いてから倉野のあとを追った。
「わかった・・・・・・約束しよう。俺にとって大切なのはカタラーナだけだ」
ジュアルはそう答えた。
周囲にいた他のヴェンデッタメンバーたちは口々にジュアルを罵っているが、全く動けないので問題はない。
ジュアルと約束を交わした倉野は再び小さな声でイスベルグに話しかけた。
「イスベルグさん」
「次はなんだ?」
「ジュアルの拘束だけを解くことはできますか?」
「また甘いことを言っているな。約束をしたと言っても所詮は口約束だろう。このまま逃げ出したらどうするつもりだ?人間は簡単に裏切るぞ」
その言葉には過去に人間の国と戦ったイスベルグの悲しみが込められている。
それを理解しながらも倉野は言葉を続けた。
「確かに裏切る人間もいますが、今のジュアルが逃げるとは思えません。もし万が一・・・・・・いや億が一にも僕たちがリマスを倒せなかった場合、ジュアルに選択肢を残したいんです」
倉野たちがリマスに負けた場合、ジュアルがヴェンデッタを裏切る予定であったと知られ、カタラーナに危害を加えられる可能性がある。
その場合、ジュアルの身が自由であれば様々な手段が取れるだろう。
倉野の思いを聞いたイスベルグはため息をついてから言葉を返した。
「砂糖菓子のような思考は染み付いたものなのだろうな。理解し難い行動だがお前がそうしたいのなら私はそれに力を貸そう。右手を呪術師に向けろ」
「ありがとうございます」
小さな声でお礼を言った倉野は右手をジュアルに向ける。
するとその瞬間にジュアルの体を縛っている氷が崩れ落ちた。
「お、おい、いいのか?俺の拘束を解いて」
驚きながら話すジュアル。
倉野は小さく頷いた。
「僕たちは信じるしかないんだ、先ほどの口約束を。どうせ信じるなら、信じ切ったほうがいいだろう」
倉野はそう言いながらレインに歩み寄る。
するとレインは優しく微笑んだ。
「全く、クラノはどこまでもクラノだな。さて、戦略目的は変わらないが作戦目的は変わってしまったね。行こうか、リマス・ルチェルトラのいる場所に」
そう言いながらレインはジュアルに近づき、右手を向ける。
「癒しを」
何をするのか、と思った瞬間にジュアルはそう唱えた。
すると先ほどレインがつけたジュアルの首元にある傷が光を纏い、治癒される。
「傷を・・・・・・」
呟きながらジュアルが首元を摩った。
するとレインは広角を上げて、倉野を指差す。
「仕方ないだろう。クラノがキミを信じるなら俺も信じるしかない」
「・・・・・・」
様々な考えが頭の中に溢れ、うまく言葉が出ないジュアル。
そんなジュアルを置いて、レインは倉野に言葉をかけた。
「さて、とにかく、帝都に戻るか」
「そうですね。時間が惜しい」
そう言いながら、酒場の入り口に向かう倉野。
その背後についていくレインにジュアルが声をかけた。
「お、おい」
「ん?どうしたんだい?」
「これを持っていけ」
ジュアルはそう言いながら一枚の紙をレインに手渡す。
受け取ったレインは確認して微笑んだ。
「ふっ、どうやら信用してくれているようだな。ありがたく受け取ろう」
「あの男に伝えてくれ、呪いは解いておく・・・・・・だから、カタラーナを救ってほしいと」
様々な感情を噛み殺すようにジュアルは言いながら頭を下げる。
レインは大きく頷いてから倉野のあとを追った。
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