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沸きらぬ勝利

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 倉野がイスベルグの言葉のまま唱えると再び右手が光り、その光が一気に地面に広がる。
 その瞬間に、部屋の前に並んでいたヴェンデッタメンバーたちが悲鳴をあげた。

「うわあああああ」
「な、なんだこれ!」
「どうなってやがるっ!」

 その様子を見ていたレインが状況を言葉にする。

「全員の肩から下が氷に覆われている・・・・・・この人数をこの速度で・・・・・・」

 レインの言葉通り、ヴェンデッタメンバーたちは肩から下が凍りつき、地面に固定されてしまっていた。

「これがイスベルグの力・・・・・・」

 温度が下がった部屋の中で白い息を吐きながら呟く倉野。
 イスベルグが頭の中で補足する。

「お前の中で聞いていたが、殺さずに気絶させずに捕らえなければならないのだろう?これで問題ないはずだ」
「は、はい。ありがとうございます。後は呪術師ジュアル・リークを探すだけだ」

 そう答える倉野に対してレインは首を傾げた。
「誰と話しているんだい?それに自分で使った魔法に驚きすぎているな・・・・・・まるで初めて使ったかのようだ。それよりも・・・・・・いや、今、その話は置いておこう。何が起きたのだとしても、とにかく、この場は制したと言っていい」

 言いながら剣を収めるレイン。
 スキルを封じられた倉野は命懸けの戦いに対する恐怖で動けなくなり、そんな倉野に気を取られたレインもレックレスに負けそうだった。
 絶体絶命。まさにその言葉通りの状況だったと言える。
 相手は百人を超えるヴェンデッタメンバー。向けられる数えきれないの武器と殺気。
 そんな状況で倉野の頭を過ぎったのはレイチェルの顔だった。
 負けられない。負けるわけにはいかない。
 そんな倉野の想いに応えるようにイスベルグが力を貸したのだった。

 下半身が凍りついてしまったヴェンデッタメンバーたちはなんとか動こうとしているが、氷はびくともしない。

「くそっ!」
「殺してやるっ」

 汚い言葉が至るところから投げかけられた。
 だが、倉野とレインは気にせず、次の行動に移る。

「呪術師を探さないとな」

 レインはそう言いながら、倉野に歩み寄った。

「そうですね。呪いを解かせないと何も解決しませんから」

 倉野はそう答えて頷く。
 すると、再びイスベルグの声が倉野の頭の中に響いた。

「おい、呪術師ならば酒場の方にいるぞ。呪いの気配がする」
「呪いの気配?」
「ああ、呪いの本質は嫉妬や憎悪だ。その気配には形容し難い気持ち悪さがある。部屋を出て右側の壁際にいるはずだ。元々、この部屋にいたのだがお前たちが部屋の前に立った瞬間にバジルという者が気づき、呪術師を逃したようだな」

 イスベルグにそう言われた倉野はすぐに部屋を出る。
 そんな倉野の行動に再び首を傾げるレイン。

「誰と話しているんだい・・・・・・ってどこに行くのさ」

 倉野について行くようにレインも部屋を出た。
 そのまま倉野とレインは氷から抜け出そうとしているヴェンデッタメンバーたちの横を通り抜け、右側の壁際に進む。
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