異世界で俺だけレベルが上がらない! だけど努力したら最強になれるらしいです?

澤檸檬

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ヴェンデッタのボス

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  壁と同じように木で造られた門を開けると、廃村とは思えない光景が目に入る。
 家や商店のようなものが立ち並び、村として機能している様子だった。
 道には通行人がおり、あらゆる場所から話し声が聞こえる。
 そこには生活があった。
 通行人たちはいきなり開いた門の驚き、視線を送る。
 しかし、スキル隠密を発動している倉野たちの姿は見えない。

「なんだ?いきなり門が開いたぞ?」
「見張りたちは何してんだ」

 通行人たちはそんなことを口にしながら門に近づく。
 倉野とレインは戦闘態勢をとりながら息を潜め、村の奥へと歩き始めた。

「お、おい!門番が倒れているぞ!」

 背後でそんな声が聞こえる。
 先ほど倉野たちが気絶させた門番が発見されたらしい。
 しかし倉野たちは村にいる人間の横を通り、歩を進める。
 少し進んだところで路地裏に入り、レインが口を開いた。

「なんとか入りこめたな。しかし驚いたよ。犯罪組織のアジトというよりも一つの村として機能しているんだね」
「そのようですね。普通に商店や酒場もありましたし、廃村という感じではありませんでした」

 倉野がそう言って頷くと、レインは真剣な表情を見せ、口を開く。

「犯罪組織が村として機能するためには物資や食料・・・・・・ある程度大きな資金も必要だ。グランダー伯爵が言っていた噂・・・・・・貴族と繋がっているという話は本当のようだね。まぁ、少なくともリマス・ルチェルトラとは繋がっているのだから」
「確かにそうですね。その証拠も見つけれればいいんですが」
「とにかく、ヴェンデッタのボスを見つけよう。そうすれば呪術師の場所もわかるだろう。例のスキルを使えるかい?」

 レインはそう問いかけた。彼の言う例のスキルとはスキル説明のことだろう。
 倉野は頷き、スキル説明を発動させた。

「スキル説明発動。対象はヴェンデッタのボスの正体と居場所」

 そう唱えると、倉野の目の前に説明画面が表示される。

「闇ギルド、ヴェンデッタを統率しているのはレックレス・クロウ。元々エスエ帝国で兵士をしていた男である。しかし十年前に上官を殺害し、投獄された。その後レックレスは牢獄の中で暴れ、他の囚人や看守を殺害し脱獄を果たす。脱獄を果たしたレックレスは一緒に逃げた数人の囚人とともにヴェンデッタを設立した。レックレスの現在地はアジトにしている廃村の一番奥にある酒場」

 倉野が読み上げるとレインは一呼吸置いてから口を開いた。

「なるほど。元々兵士だったならば貴族との繋がりも持っているだろうね。上官殺しに脱獄・・・・・・やはり闇ギルドのボスともなれば、それくらいの犯罪歴があるのか」

 言いながらレインは剣を握る手に力を込める。
 相手が元兵士で、囚人という身でありながら艦首を殺害して脱獄を果たしたというのならば、相応の戦闘力であるはずだ。
 改めて気合いをいれるレイン。
 倉野にとって相手がどれほどの戦闘力だろうが、スキル神速が通用する相手ならば問題ない。しかし、今回の目的はヴェンデッタを潰せばいいだけではない。
 呪術師にレイチェルの呪いを解かせること。それが出来なければヴェンデッタメンバーを何人倒そうと負けである。
 そのためには呪術師を殺すわけにはいかず、拘束した上で呪いを解かせなければならない。
 そしてそれにはレイチェルの命という制限時間があった。
 つまり、スキル神速でいきなり襲いかかり気絶させてしまっては、呪いを溶かせることが出来ないのである。
 改めて状況を確認した倉野は深呼吸してから、口を開いた。

「とにかく、ボスに・・・・・・レックレスに会ってみましょう。スキル隠密のまま進めば誰にも見つからないはずです」
「ああ、行こう」

 二人は再び、歩みを進める。
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