異世界で俺だけレベルが上がらない！ だけど努力したら最強になれるらしいです？

連載

愛と欲

「ヴェンデッタがレイチェル・グランダーを狙う理由は貴族からの依頼」

　倉野がそう読み上げるとグランダー伯爵が顔を上げて反応する。

「どういうことだ？いや、その前に何故クラノ殿にそれがわかるんだい？」

　そう問いかけられた倉野は一呼吸置いてから答えた。

「僕のスキルはどんな疑問でも答えを出すことができるんです。相手の素性だろうが、進むべき道だろうが、世界の不思議だろうが何でも」
「・・・・・・唐突な話だが、納得せざるを得ないようだね。シラムからクラノ殿が不思議な力を使うと聞いていたし、その力によって私は一度救われている」

　グランダー伯爵は真剣な眼差しでそう言って頷く。
　自分の能力についてグランダー伯爵にならば話しても問題ないだろうという倉野の判断だった。
　さらにグランダー伯爵は言葉を続ける。

「クラノ殿のスキルが本物で真実だとして、貴族がレイチェルに呪いをかけるようにヴェンデッタに依頼したというのは・・・・・・その貴族が誰かはわかるかい？」
「はい、スキル説明発動。レイチェル・グランダーに呪いをかけるように依頼した貴族の正体と目的」

　そう倉野が唱えると再び画面が表示された。

「えっと、貴族の名前はリマス・ルチェルトラ。目的はレイチェル・グランダーを手に入れるため、とあります」

　説明を読み上げる倉野の言葉を聞いたグランダー伯爵は再び驚愕を顔に貼り付け、言葉を失う。
　様子を察したレインが慎重に口を開いた。

「リマス・ルチェルトラの名を聞いたことがあるのですか？」

　問いかけられたグランダー伯爵は眉間に皺を寄せて答える。

「ああ、知っている・・・・・・レイチェルに求婚してきた男だ」
「求婚っ⁉︎」

　思わず倉野が声を上げた。
　一瞬で冷静さを欠いた倉野の代わりにレインが話を進める。

「求婚した相手に呪いをかけるとは・・・・・・何かあったのですか？」
「リマスはヤルダ・ルチェルトラ子爵の後継者だ。一年ほど前にレイチェルに惚れたと言ってリマスはレイチェルに求婚してきたのだよ。しかしレイチェルは結婚するつもりはないと断った。レイチェルが断ってもリマスはアプローチを続けていた。それを断ち切るために私はルチェルトラ子爵に正式な断りを入れたのだよ」

　グランダー伯爵は神妙な面持ちでそう話した。
　聞いていた倉野は少し冷静さを取り戻し、疑問を口にする。

「それじゃあ、その逆恨みで呪いを？」

　問いかけられたグランダー伯爵は首を横に振った。

「いや、逆恨みではないだろう。レイチェルがこのような状態になってから再びリマスは結婚の申し入れをしてきた。逆恨みだとすれば再び求婚してこないだろう。先ほどまで、呪いだと考えていなかった私はそれを執拗すぎる愛情かと思っていたが・・・・・・」

　なるほど、とレインは頷き口を開く。

「ご令嬢が原因不明の病となれば、結婚できると踏んだのか。いや、例えば薬があると偽り、結婚を条件に薬らしきものを飲ませ呪いを解けば命の恩人を演じることができるな。歪みきった愛情か・・・・・・」

　レインの言葉を聞いた倉野は奥歯を噛みしめ、言葉を放った。

「そんなもの愛情じゃない。ただの所有欲だ。自分の欲望のために他人を傷つけ手に入れるなんて愛なわけがない」
「ああ、そうだな・・・・・・それで、どうする？」

　レインはそう倉野に問いかける。