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淀んだ空気と不眠
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思い出と共に門を潜り抜け、レイチェルが苦しんでいる寝室へと向かった。
レイチェルの寝室の前に立つと、扉の向こうから重いような淀んだ空気が漏れ出しているように感じる。
全身の細胞がその空気を拒んでいるような感覚に倉野は自分の掌を見つめた。するとレインも同じように感じたらしく倉野の肩に手を置き声をかける。
「嫌な感じがするな。だが、何かを感じる時ってのは大体、人間の悪意が絡んでる時さ。人間の悪意が相手なら解決方法があるはずさ」
レインなりの励ましなのだろう。その言葉を聞いた倉野は少しの勇気を受け取った。
そんな様子を見ながらシラムはゆっくりと扉をノックする。
コンコンコンと音が響くと扉の中から元気のない声が帰ってきた。
「シラムか?」
「はい。シラムでございます。入ってよろしいでしょうか」
「ああ、構わない」
シラムに許可を出すその声がグランダー伯爵であると気づいた倉野。
扉が開くとそこにはベッドで苦しそうに眠るレイチェルと隣の椅子に座っている疲れ果てたグランダー伯爵がいた。
グランダー伯爵はすぐに倉野に気づき、椅子から立ち上がろうとしたが足に力が入らなかったのだろう。そのまま椅子に倒れ込んでしまう。
「旦那様!」
慌ててシラムが駆け寄りグランダー伯爵の方を支えたが彼はそのまま椅子に座り込んだ。
「大丈夫だ、シラム。すまないね、立ち上がることもままならん姿でクラノどのを迎えることになるとは」
そう言いながらグランダー伯爵は倉野の方に頭を下げる。
すぐさま倉野は首を横に振った。
「とんでもないです!こちらこそ、このように大変な時にお邪魔してすみません」
「無理もありません。旦那様はもう何日も休んでおられません。それどころか食事すら・・・・・・」
シラムがそう話すとグランダー伯爵は下唇を軽く噛み、悔しそうな表情を浮かべる。
「レイチェルがこんな状況では何も喉は通らなくてね。それに眠ろうとすると不安に駆られてしまう。目を覚ました時にレイチェルの鼓動が止んではいないか、とね」
「伯爵・・・・・・」
どのような声をかけて良いのかわからず倉野はそう呟くしか無かった。
倉野の表情を察したグランダー伯爵は意識的に背筋を伸ばし、話題を変える。
「ところで、どうしてクラノ殿がここに?」
その疑問にシラムが答えた。
他国の医者を探しに行っていた帰り道で倉野たちに出会ったこと。
倉野たちがネージュ島から転移してきたこと。
そしてそこでレイチェルの病気について話すことになってしまったこと。
アルフォロッソを拘束するためにグランダー伯爵の権限を行使したこと。
その後、レイチェルの病気について何かわからないか、と倉野たちがここに来たこと。
話を聞いたグランダー伯爵はなるほど、と頷いた。
「事情はわかった。そのアルフォロッソについてはこちらから手を回しておこう。また、その無人島から転移してきた方々の支援もさせてもらう。クラノ殿には返しても返しきれない恩があるからな」
「ありがとうございます・・・・・・このような時に・・・・・・すみません」
心苦しそうに倉野がそう返答するとグランダー伯爵はレイチェルの頭を撫でながら微笑む。
「レイチェルがそうしろと言っているように感じたんだ。クラノ殿の頼みならば応えたい、とね」
レイチェルの寝室の前に立つと、扉の向こうから重いような淀んだ空気が漏れ出しているように感じる。
全身の細胞がその空気を拒んでいるような感覚に倉野は自分の掌を見つめた。するとレインも同じように感じたらしく倉野の肩に手を置き声をかける。
「嫌な感じがするな。だが、何かを感じる時ってのは大体、人間の悪意が絡んでる時さ。人間の悪意が相手なら解決方法があるはずさ」
レインなりの励ましなのだろう。その言葉を聞いた倉野は少しの勇気を受け取った。
そんな様子を見ながらシラムはゆっくりと扉をノックする。
コンコンコンと音が響くと扉の中から元気のない声が帰ってきた。
「シラムか?」
「はい。シラムでございます。入ってよろしいでしょうか」
「ああ、構わない」
シラムに許可を出すその声がグランダー伯爵であると気づいた倉野。
扉が開くとそこにはベッドで苦しそうに眠るレイチェルと隣の椅子に座っている疲れ果てたグランダー伯爵がいた。
グランダー伯爵はすぐに倉野に気づき、椅子から立ち上がろうとしたが足に力が入らなかったのだろう。そのまま椅子に倒れ込んでしまう。
「旦那様!」
慌ててシラムが駆け寄りグランダー伯爵の方を支えたが彼はそのまま椅子に座り込んだ。
「大丈夫だ、シラム。すまないね、立ち上がることもままならん姿でクラノどのを迎えることになるとは」
そう言いながらグランダー伯爵は倉野の方に頭を下げる。
すぐさま倉野は首を横に振った。
「とんでもないです!こちらこそ、このように大変な時にお邪魔してすみません」
「無理もありません。旦那様はもう何日も休んでおられません。それどころか食事すら・・・・・・」
シラムがそう話すとグランダー伯爵は下唇を軽く噛み、悔しそうな表情を浮かべる。
「レイチェルがこんな状況では何も喉は通らなくてね。それに眠ろうとすると不安に駆られてしまう。目を覚ました時にレイチェルの鼓動が止んではいないか、とね」
「伯爵・・・・・・」
どのような声をかけて良いのかわからず倉野はそう呟くしか無かった。
倉野の表情を察したグランダー伯爵は意識的に背筋を伸ばし、話題を変える。
「ところで、どうしてクラノ殿がここに?」
その疑問にシラムが答えた。
他国の医者を探しに行っていた帰り道で倉野たちに出会ったこと。
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そしてそこでレイチェルの病気について話すことになってしまったこと。
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その後、レイチェルの病気について何かわからないか、と倉野たちがここに来たこと。
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「事情はわかった。そのアルフォロッソについてはこちらから手を回しておこう。また、その無人島から転移してきた方々の支援もさせてもらう。クラノ殿には返しても返しきれない恩があるからな」
「ありがとうございます・・・・・・このような時に・・・・・・すみません」
心苦しそうに倉野がそう返答するとグランダー伯爵はレイチェルの頭を撫でながら微笑む。
「レイチェルがそうしろと言っているように感じたんだ。クラノ殿の頼みならば応えたい、とね」
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