51 / 729
連載
病人の名前
しおりを挟む
「そのような事情があったのですね。このシラム出来る限りお力になりたいのですが・・・・・・少々、事情があり、グランダー家にはお力になる為の余力があるかどうか・・・・・・」
シラムがそう話すと倉野は恐る恐る核心に迫る質問を投げかける。
「グランダー家の誰かが病気になったという話は本当だということですか?」
「どこでそのお話を?」
シラムはそう問いかけながら、衛兵の表情を伺った。
先ほどエスエ帝国に転移してきたばかりの倉野が、それを知っているという事は衛兵が話したと察したのだろう。
衛兵もまた、自分が話したと悟られていると感じ、バツの悪そうな顔をした。
理解したシラムはため息をつき、話を続ける。
「人の口に戸を立てられぬ、という事ですね。ましてや鍵をかけることなどできませぬな。また言葉よりも人や物の流れは真実を雄弁に語る」
「という事は、やはり話は本当なんですね?一体誰が病気に?」
答えを急ぐように倉野が連続して問いかけた。
シラムは一瞬表情を曇らせてから、口を開く。
「ここでお答えするのは・・・・・・」
それを聞いていたレインは倉野の方に手を置いてから倉野を落ち着かせるように話しかける。
「当然だよ、クラノ。貴族が病気だという話を公にするものではないさ。シラムさん、場所を変えてお話しできませんんか?我々としてもグランダー伯爵以外に頼れる方もいませんし、クラノも詳しく話を聞きたいようなので」
「・・・・・・わかりました。とにかく街に入り、全員分の宿を用意しましょう。話の続きはそちらで致します」
シラムはそう言ってから衛兵に話をつけ、グランダー伯爵家の客人として倉野たちの通行証を用意した。
そしていざ帝都に入ろうとした途端、それまで黙っていたアルフォロッソが正気を取り戻したのか大声で叫び始める。
「私は子爵だぞ!衛兵を呼べ!この者たちは貴族である私を侮辱した!取り押さえよ!」
そう叫びながら暴れるアルフォロッソをハウンドが取り押さえていた。
エスエ帝国に戻ってきたこと気付き、逃げられると思ったのだろうか。
アルフォロッソの罪について倉野から説明を受けていたシラムは呆れたように衛兵に指示する。
「緊急ですのでグランダー伯爵の権限をお借りし、あの方を取り押さえます。手続きは後ほどグランダー伯爵から致します」
「は、はい!かしこまりました」
指示を受けた衛兵は急いで他の衛兵を呼びアルフォロッソを取り押さえた。
「くそっ、離せっ。私は子爵だぞ!平民が気安く触れるな!離せ!後悔させてやるからな」
そう叫びながらアルフォロッソは衛兵に連れて行かれる。
その姿を見送るルーズはどこか悲しげであった。
「それでは参りましょうか」
一つの問題を解決したシラムにそう言われ、倉野たちは門を通り抜ける。
帝都庶民街に入ってすぐの場所にある宿に到着すると、シラムは全員分の部屋を用意し休むように伝えた。
飛行船墜落からの疲労が溜まっていたノエル、ハウンド、ペースト、ロマネ、スルトはシラムに礼を伝えてから部屋に入る。
レインは、自分も会話に参加させて欲しい、と倉野とシラムがいる部屋に残っていた。
「さて、これで情報が漏れる事はないよ」
レインがそう言うとシラムは深呼吸をしてから口を開く。
「そうですな。さて、どこまで話しておりましたか?」
「グランダー家に病人がいる、と言う話が本当だってところまでです」
「そうでしたそうでした。歳を取ると記憶力が悪くなっていけません」
そう言いながら苦笑するシラム。
少し間を開けてから、シラムは病人の名を口にした。
「レイチェル様でございます」
その名前を聞いた途端、血液の流れが止まってしまったのではないかと感じるほど倉野は血の気が引く。
そうでなければいい、と思っていた最悪の事態が現実だったのだ。
全身の細胞がショックを受けている。
振り絞るように倉野は声を発した。
「そう・・・・・・ですか」
シラムがそう話すと倉野は恐る恐る核心に迫る質問を投げかける。
「グランダー家の誰かが病気になったという話は本当だということですか?」
「どこでそのお話を?」
シラムはそう問いかけながら、衛兵の表情を伺った。
先ほどエスエ帝国に転移してきたばかりの倉野が、それを知っているという事は衛兵が話したと察したのだろう。
衛兵もまた、自分が話したと悟られていると感じ、バツの悪そうな顔をした。
理解したシラムはため息をつき、話を続ける。
「人の口に戸を立てられぬ、という事ですね。ましてや鍵をかけることなどできませぬな。また言葉よりも人や物の流れは真実を雄弁に語る」
「という事は、やはり話は本当なんですね?一体誰が病気に?」
答えを急ぐように倉野が連続して問いかけた。
シラムは一瞬表情を曇らせてから、口を開く。
「ここでお答えするのは・・・・・・」
それを聞いていたレインは倉野の方に手を置いてから倉野を落ち着かせるように話しかける。
「当然だよ、クラノ。貴族が病気だという話を公にするものではないさ。シラムさん、場所を変えてお話しできませんんか?我々としてもグランダー伯爵以外に頼れる方もいませんし、クラノも詳しく話を聞きたいようなので」
「・・・・・・わかりました。とにかく街に入り、全員分の宿を用意しましょう。話の続きはそちらで致します」
シラムはそう言ってから衛兵に話をつけ、グランダー伯爵家の客人として倉野たちの通行証を用意した。
そしていざ帝都に入ろうとした途端、それまで黙っていたアルフォロッソが正気を取り戻したのか大声で叫び始める。
「私は子爵だぞ!衛兵を呼べ!この者たちは貴族である私を侮辱した!取り押さえよ!」
そう叫びながら暴れるアルフォロッソをハウンドが取り押さえていた。
エスエ帝国に戻ってきたこと気付き、逃げられると思ったのだろうか。
アルフォロッソの罪について倉野から説明を受けていたシラムは呆れたように衛兵に指示する。
「緊急ですのでグランダー伯爵の権限をお借りし、あの方を取り押さえます。手続きは後ほどグランダー伯爵から致します」
「は、はい!かしこまりました」
指示を受けた衛兵は急いで他の衛兵を呼びアルフォロッソを取り押さえた。
「くそっ、離せっ。私は子爵だぞ!平民が気安く触れるな!離せ!後悔させてやるからな」
そう叫びながらアルフォロッソは衛兵に連れて行かれる。
その姿を見送るルーズはどこか悲しげであった。
「それでは参りましょうか」
一つの問題を解決したシラムにそう言われ、倉野たちは門を通り抜ける。
帝都庶民街に入ってすぐの場所にある宿に到着すると、シラムは全員分の部屋を用意し休むように伝えた。
飛行船墜落からの疲労が溜まっていたノエル、ハウンド、ペースト、ロマネ、スルトはシラムに礼を伝えてから部屋に入る。
レインは、自分も会話に参加させて欲しい、と倉野とシラムがいる部屋に残っていた。
「さて、これで情報が漏れる事はないよ」
レインがそう言うとシラムは深呼吸をしてから口を開く。
「そうですな。さて、どこまで話しておりましたか?」
「グランダー家に病人がいる、と言う話が本当だってところまでです」
「そうでしたそうでした。歳を取ると記憶力が悪くなっていけません」
そう言いながら苦笑するシラム。
少し間を開けてから、シラムは病人の名を口にした。
「レイチェル様でございます」
その名前を聞いた途端、血液の流れが止まってしまったのではないかと感じるほど倉野は血の気が引く。
そうでなければいい、と思っていた最悪の事態が現実だったのだ。
全身の細胞がショックを受けている。
振り絞るように倉野は声を発した。
「そう・・・・・・ですか」
1
お気に入りに追加
2,845
あなたにおすすめの小説
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい
増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。
目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた
3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ
いくらなんでもこれはおかしいだろ!
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
死んだのに異世界に転生しました!
drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。
この物語は異世界テンプレ要素が多いです。
主人公最強&チートですね
主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください!
初めて書くので
読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。
それでもいいという方はどうぞ!
(本編は完結しました)
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。