爆弾処理班

澤檸檬

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爆弾処理班

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「赤をきるのか、青をきるのか」

 俺はそう呟いた。
 間違えれば大爆発を起こしてしまうだろう。
 そんな最悪の未来を想像し背筋が寒くなった。
 赤に触れてから、やっぱり違うと思い青に触れる。
 だが、どちらが正解でどちらが不正解かは分からない。
 神でも悪魔でもいい・・・・・・・語りかけてくれ。
 どちらが正解なんだ。
 単純に二分の一と考えることもできるが、失敗する可能性も大きい。
 少しでもいい、根拠が欲しい。

「赤がおすすめです」

 悩んでいる俺にそう語りかけてくる女性がいる。
 信じていいのか。
 本当にそれが正しいのか。
 根拠はなんだろう。
 俺は首を横に振った。

「簡単には決められない。掛かっているんだ・・・・・・全てが」
「そうですよね。ゆっくり決めてください」

 女性はそう言ってから俺の動向を眺めている。
 思い出せ・・・・・・ヤツは何を言っていた。
 少しでもヒントになる情報はないか。
 だが、何も思い出せない。俺は大切な時に聞き流していた様だ。
 くそ・・・・・・どうしてあの時もっと話を聞いていなかったのか。
 今、後悔してももう遅い。
 時間は刻一刻と迫っていた。
 額に流れる冷や汗。
 止まらない動悸。
 身体中が危険を知らせていた。

「もう、決めなければ・・・・・・これだ!」
 
 俺は決心して赤を選んだ。
 
「もう、私が欲しいって行ったのは青のカーディガンだよ」

 彼女は俺にそう言いながら頬を膨らませる。
 ミッションは失敗してしまった様だ。
 着るのは赤ではなく、青だったらしい。
 せっかくの彼女の誕生日プレゼント。彼女が欲しがっているカーディガンを覚えていたものの、色までは覚えていなかったのだ。
 聞き流してしまっていたことを悔やむ。
 彼女の頬が膨らみ、機嫌が爆発してしまうかもしれない。
 そう身構えていると、次第に彼女の表情は緩み、赤のカーディガンを抱きしめた。

「でも、ありがとう、嬉しいよ。よく見ると赤もかわいいね。大切にするっ」

 ああ、よかった。
 俺は胸を撫で下ろした。
 赤をオススメしてくれた女性店員に感謝の念を飛ばす。
 人生はいつでも選択だ。
 その選択のためのヒントは常に周囲にある。
 するのかしないのか。
 どんな答えも全ては行動の結果なのだと俺は心に刻みながら、嬉しそうにする彼女の頭を撫でた。
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