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護衛ギルド選抜戦4
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っと彼女の攻撃をかわそうと体を捻っている無善の横に突如カムイが現れ、鞘に刺さったままになっていた剣を引き抜く。
すると、地面から複数の鎖が出てきたが、それに気が付いた彼が素早く後ろに跳んでかわす。
本当にぎりぎりのタイミングだった……カムイは悔しそうに渋い顔をしながら、無善の後ろにいた浄歳を睨む。
浄歳の固有スキルは『ゾーンバインド』使用者の周囲に居る敵を拘束する鎖を出現させて動きを封じる。
唯一の欠点と言えるのは、広範囲に同時に拘束用の鎖を放てる反面。発動時に地面が微かに緑色に光ることだろう。
察しのいい者なら、それを合図に即座に回避が可能だ――そうでなくてもカムイは、先程の無善のフラッシュによる目潰しを回避している。
まだ見たこともないアイテムの効果を察して見事に回避した彼が、視界に映った固有スキルで出した鎖の発生時に起こした微かな光すらも感知できるほどの動体視力と、固有スキル『神速』があってこそなのだろう。
現に彼を拘束しようと伸びて来る鎖を、カムイは絶妙な動きで回避していた。
っと、今までカムイのみを狙っていた浄歳が彼の拘束を諦め、今度はまだ視覚の戻っていないリカに向かって拘束を試みる。
リカの周りを取り囲む様に無数の光が地面に現れ。
「リカ! 左に跳ぶんだ!」
無言のまま頷くが、彼の言った左の方にも緑色の丸が浮き上がっている。
リカがその声に合わせて左に跳んだ直後、カムイは持っていた剣を地面すれすれに投げると、出現した鎖を的確に吹き飛ばす。
どうやら先の攻撃で、カムイには鎖が出現するタイミングを完璧に把握した様だ――元々それぞれの固有スキルというものは、結構大雑把な作りになっていて、それを改変できる方法はない。
固有スキルを強化する為には、入手困難な『トレジャーアイテム』を使用する以外にはなく。つまり、浄歳の欠点でもある鎖の出現ポイント点灯と鎖出現までの秒数を把握されてしまえば、対策の取りようは固有スキルの範疇では存在しないということ。
だが、何よりも警戒しなければいけないのはカムイだろう。彼は類い稀なる動体視力と、状況を即座に読み取り判断するだけの頭脳を持っている――。
カムイの状況把握能力があるからこそ、双子の姉であるはずのリカの方が考えなしに突入していけると言える。
全てカムイがやってしまうから、リカは安心して頭を空っぽにして戦闘ができるのだろう。双子の弟のカムイは冷静に状況を分析するスタイルで、双子の姉のリカは良くも悪くも感覚派。
どことなく戦闘スタイルは突っ込む前に多少なりと考えるカレンというよりは、全く考えずに突っ込んで、ダメならその時に考えるエリエに近いかもしれない。
カムイの投げた剣のおかげで拘束を免れたリカの視界が次第に戻ってくる。
頻繁に目をぱちくりさせていたが、すぐにカムイの方に向かって親指を立てて見せた。
それを見て、無善は浄歳の側にカムイはリカの側にそれぞれ付く。投げた武器を回収したいところだが、浄歳がまた鎖を出しかねない。
来ると分かっているなら、その隙を狙わない訳がないだろうし。カムイもそれは重々承知しているようで、すぐに先程持っていた剣と同じ物を装備し直す。
まあ、それなりのプレイヤーならば武器のストックくらいは容易しているものだ――だがそれは同時に、カムイの武器は希少価値の高い『トレジャーアイテム』ではないということの証しでもある。
だが、カムイにはスピードという絶対的な武器があり。さすがサブギルドマスターを名乗るだけあってLv100というカンスト状態で、同じ固有スキルということもあり。先程の動きを見ても、そのスピードもエリエとほぼ互角だ。
互いに突き刺すように研ぎ澄まされた視線をぶつけ合い見合っていた両者だったが、リカの視覚が戻ったことで勝負は振り出しに戻ったと言える。
正直なところ、ギルド『成仏善寺』の2人は初動で勝負を決めておきたかっただろう。いや、あわよくば2人のうちの片方だけでも仕留めておきたかった……それなら、残り一人を2人で叩けば良かったのだから。ここで数珠の光の効果が切れたのは大きな痛手だろう。
両者とも手の内を見せたわけだが、問題は成仏善寺の無善の固有スキル『憑依』はモンスター相手でしか効果がない。2人のうち1人の固有スキルが発動できないと言うのは、非常に厳しいと言わざるを得ない。
「ごめんカムイ。助かった……」
「まあ、いいさ。次で挽回だ!」
「ええ、分かってる!」
リカとカムイは頷き合うと攻撃する体制に入った。
無善と浄歳も手に持っていた錫杖を構え。
「……できれば先に武闘家の方を倒しておきたかったですね」
「まあいい。呆気なく終わっては集まってくれた観客に申し訳ないからな……浄歳、次は一対一に持ち込む」
今度は地面を蹴ってリカ、カムイへと襲い掛かる。拘束系の固有スキルと片方は固有スキル使用不能という不利な状況で、完全に向こうから攻めて来ると考えていなかった双子は虚を突かれ多様にするに迎撃態勢に入る。
「「はああああああああッ!!」」
声を上げながら、無善の後ろに隠れる形で浄歳も全力で向かってきていた。
「リカ。先頭の奴を頼む! 僕は後ろをやる!」
「了解!」
隣り合わせにすぐに迎撃態勢に入ったリカとカムイ。
すると、地面から複数の鎖が出てきたが、それに気が付いた彼が素早く後ろに跳んでかわす。
本当にぎりぎりのタイミングだった……カムイは悔しそうに渋い顔をしながら、無善の後ろにいた浄歳を睨む。
浄歳の固有スキルは『ゾーンバインド』使用者の周囲に居る敵を拘束する鎖を出現させて動きを封じる。
唯一の欠点と言えるのは、広範囲に同時に拘束用の鎖を放てる反面。発動時に地面が微かに緑色に光ることだろう。
察しのいい者なら、それを合図に即座に回避が可能だ――そうでなくてもカムイは、先程の無善のフラッシュによる目潰しを回避している。
まだ見たこともないアイテムの効果を察して見事に回避した彼が、視界に映った固有スキルで出した鎖の発生時に起こした微かな光すらも感知できるほどの動体視力と、固有スキル『神速』があってこそなのだろう。
現に彼を拘束しようと伸びて来る鎖を、カムイは絶妙な動きで回避していた。
っと、今までカムイのみを狙っていた浄歳が彼の拘束を諦め、今度はまだ視覚の戻っていないリカに向かって拘束を試みる。
リカの周りを取り囲む様に無数の光が地面に現れ。
「リカ! 左に跳ぶんだ!」
無言のまま頷くが、彼の言った左の方にも緑色の丸が浮き上がっている。
リカがその声に合わせて左に跳んだ直後、カムイは持っていた剣を地面すれすれに投げると、出現した鎖を的確に吹き飛ばす。
どうやら先の攻撃で、カムイには鎖が出現するタイミングを完璧に把握した様だ――元々それぞれの固有スキルというものは、結構大雑把な作りになっていて、それを改変できる方法はない。
固有スキルを強化する為には、入手困難な『トレジャーアイテム』を使用する以外にはなく。つまり、浄歳の欠点でもある鎖の出現ポイント点灯と鎖出現までの秒数を把握されてしまえば、対策の取りようは固有スキルの範疇では存在しないということ。
だが、何よりも警戒しなければいけないのはカムイだろう。彼は類い稀なる動体視力と、状況を即座に読み取り判断するだけの頭脳を持っている――。
カムイの状況把握能力があるからこそ、双子の姉であるはずのリカの方が考えなしに突入していけると言える。
全てカムイがやってしまうから、リカは安心して頭を空っぽにして戦闘ができるのだろう。双子の弟のカムイは冷静に状況を分析するスタイルで、双子の姉のリカは良くも悪くも感覚派。
どことなく戦闘スタイルは突っ込む前に多少なりと考えるカレンというよりは、全く考えずに突っ込んで、ダメならその時に考えるエリエに近いかもしれない。
カムイの投げた剣のおかげで拘束を免れたリカの視界が次第に戻ってくる。
頻繁に目をぱちくりさせていたが、すぐにカムイの方に向かって親指を立てて見せた。
それを見て、無善は浄歳の側にカムイはリカの側にそれぞれ付く。投げた武器を回収したいところだが、浄歳がまた鎖を出しかねない。
来ると分かっているなら、その隙を狙わない訳がないだろうし。カムイもそれは重々承知しているようで、すぐに先程持っていた剣と同じ物を装備し直す。
まあ、それなりのプレイヤーならば武器のストックくらいは容易しているものだ――だがそれは同時に、カムイの武器は希少価値の高い『トレジャーアイテム』ではないということの証しでもある。
だが、カムイにはスピードという絶対的な武器があり。さすがサブギルドマスターを名乗るだけあってLv100というカンスト状態で、同じ固有スキルということもあり。先程の動きを見ても、そのスピードもエリエとほぼ互角だ。
互いに突き刺すように研ぎ澄まされた視線をぶつけ合い見合っていた両者だったが、リカの視覚が戻ったことで勝負は振り出しに戻ったと言える。
正直なところ、ギルド『成仏善寺』の2人は初動で勝負を決めておきたかっただろう。いや、あわよくば2人のうちの片方だけでも仕留めておきたかった……それなら、残り一人を2人で叩けば良かったのだから。ここで数珠の光の効果が切れたのは大きな痛手だろう。
両者とも手の内を見せたわけだが、問題は成仏善寺の無善の固有スキル『憑依』はモンスター相手でしか効果がない。2人のうち1人の固有スキルが発動できないと言うのは、非常に厳しいと言わざるを得ない。
「ごめんカムイ。助かった……」
「まあ、いいさ。次で挽回だ!」
「ええ、分かってる!」
リカとカムイは頷き合うと攻撃する体制に入った。
無善と浄歳も手に持っていた錫杖を構え。
「……できれば先に武闘家の方を倒しておきたかったですね」
「まあいい。呆気なく終わっては集まってくれた観客に申し訳ないからな……浄歳、次は一対一に持ち込む」
今度は地面を蹴ってリカ、カムイへと襲い掛かる。拘束系の固有スキルと片方は固有スキル使用不能という不利な状況で、完全に向こうから攻めて来ると考えていなかった双子は虚を突かれ多様にするに迎撃態勢に入る。
「「はああああああああッ!!」」
声を上げながら、無善の後ろに隠れる形で浄歳も全力で向かってきていた。
「リカ。先頭の奴を頼む! 僕は後ろをやる!」
「了解!」
隣り合わせにすぐに迎撃態勢に入ったリカとカムイ。
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