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消えたマスター4
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「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 待って! 謝る! 謝るから~!!」
「もう。何もかも遅すぎるし~!!」
完全に普段と主導権が逆転している2人は、泣きながら疾走するエリエを泣きながら追い駆けるミレイニという普段なら絶対見られない光景に、エミルもデイビッドも驚いている。
だが、これが怒りを爆発させたミレイニということなのだろう。普段我慢しているだけ、それが頂点に達すると暴走してしまうのが彼女なのだろう。まあ、怒らせると何をするか分からない『爆弾』ということだ――。
廊下を隅々まで走り回っているエリエとミレイニを見守っていると、騒動を聞いてやってきたのは赤毛にルビーの様な赤い瞳の少女だった。
「いったい何事!!」
彼女はギルド『POWER,S』のギルドマスター、リカだ。双子でサブギルドマスターのカムイはいないことから、どうやら彼女だけが騒ぎを聞きつけやってきたようだ。
その手には何故かフライパンが握られている。おそらく、敵襲と勘違いしたのだろう。
リカはフライパンを握り締めると「今助けるわ!」と、ミレイニの出しているモンスターに向かって走り出す。
そんな彼女をすぐにデイビッドが止めに入る。後ろから彼女の両腕を羽交い締めにして何とか止めた。だが、突然自分が羽交い締めにされ、全く訳の分からないリカが大声で叫ぶ。
「なんなの!? 私はあの人を助けようとしてるのに! 貴方も敵なの!?」
「ちょっと、待ってくれ! あれはじゃれ合ってるだけだから!」
「どうしてモンスターに追われている状態がじゃれ合ってる事になるの! 放して! 早く止めないと!」
慌てた様子でデイビッドの腕を振り解こうとする彼女に、大きくため息を漏らしたエミルが装備を取り出した。
もちろん。制限がある為、装備と言っても鞘から抜くことができない上にダメージも与えられない代物だが。
鞘の付いたままのロングソードを構えて、疾走するエリエと炎帝レオネルのアレキサンダーの間に飛び込む。
自分に向かってくるアレキサンダーを見据え、両手で柄と鞘を持って自分の前に突き出した。すると、急に目の前に割り込まれたことで、困惑したアレキサンダーが急停止する。突然止まったことでミレイニが空中に放り出され。
「エリー!!」
エミルの声に反応したエリエが素早く180度回転すると、飛んできたミレイニを受け止めた。
ここはさすが長い間共に戦ってきた仲間と言ったところだろう。一言掛け合うだけで息の合った連携が取れるのは、ただただ感心するばかりだ。
ほっとした様子で息を大きく吐いたミレイニの顔が、エリエの顔にくっつくほどの距離にあった。
「もう。しっかり乗ってなさいよね!」
「……あっ」
顔を真っ赤に染めて慌てて顔を背ける。まあ、何はともあれどうやらミレイニが落ち着いたようで、エリエもこれ以上モンスター達に追い回されないことに、ほっと胸を撫で下ろす。
ミレイニは急にしおらしくなって、召喚していたモンスター達を右手の人差し指にはめていた召喚用の指輪の中に戻す。
背を向けていたミレイニが、徐に振り向いて言った。
「――ちょっと、やり過ぎたし……」
エリエはバツが悪そうに俯き加減でいるミレイニを叱るわけでもなく、無視するわけでもなく。ゆっくりと彼女の前に歩いていくと、その体をぎゅっと抱きしめた。
「別にいいわよ。元々私があんたを置いていったのがいけないんだし……」
「……エリエ。やっぱりエリエはいい奴だし! 大好きだし!」
抱きしめていたエリエの体を抱き枕のように抱き付くと、ミレイニは嬉しそうに顔をエリエのお腹に押し付けて左右に激しく動かしている。それがくすぐったいのか、エリエは大声で笑い声を上げた。
事態が沈静化したその横で出した剣をしまって、エミルがほっとしたように大きく息を吐き出す。
「ねえ、貴女もしかして『白い閃光』じゃない?」
「……えっ? そう呼ばれる事もあるわね」
「やっぱり!」
急に距離を詰めて食い付くようにエミルの体に迫って来る赤髪の少女に、エミルが思わずたじろぐ。
それもそうだろう。その瞳はキラキラと輝き、まるで芸能人でも見るような熱い視線だった。
彼女の眼差しを受け、エミルが苦笑いを浮かべていると、スッと顔の前にサイン色紙が差し出される。
「サインお願いします!!」
「えっ? ああ、いいわよ」
色紙を受け取り慣れた手付きでサインを書いていくと、書き終えた辺りで再び声が耳に飛び込んでくる。
「あっ、ここにリカちゃんへってお願いします!」
ちゃっかり右下に自分の名前を入れて貰うと、サインを書き終えた色紙を返して貰って満足そうな笑みを浮かべながら胸に抱きかかえる。そういえば、始まりの街のサラザの店で、マスターからもサインを貰っていたが、その時にどうしてエミルからも貰わなかったのか謎だ……。
「もう。何もかも遅すぎるし~!!」
完全に普段と主導権が逆転している2人は、泣きながら疾走するエリエを泣きながら追い駆けるミレイニという普段なら絶対見られない光景に、エミルもデイビッドも驚いている。
だが、これが怒りを爆発させたミレイニということなのだろう。普段我慢しているだけ、それが頂点に達すると暴走してしまうのが彼女なのだろう。まあ、怒らせると何をするか分からない『爆弾』ということだ――。
廊下を隅々まで走り回っているエリエとミレイニを見守っていると、騒動を聞いてやってきたのは赤毛にルビーの様な赤い瞳の少女だった。
「いったい何事!!」
彼女はギルド『POWER,S』のギルドマスター、リカだ。双子でサブギルドマスターのカムイはいないことから、どうやら彼女だけが騒ぎを聞きつけやってきたようだ。
その手には何故かフライパンが握られている。おそらく、敵襲と勘違いしたのだろう。
リカはフライパンを握り締めると「今助けるわ!」と、ミレイニの出しているモンスターに向かって走り出す。
そんな彼女をすぐにデイビッドが止めに入る。後ろから彼女の両腕を羽交い締めにして何とか止めた。だが、突然自分が羽交い締めにされ、全く訳の分からないリカが大声で叫ぶ。
「なんなの!? 私はあの人を助けようとしてるのに! 貴方も敵なの!?」
「ちょっと、待ってくれ! あれはじゃれ合ってるだけだから!」
「どうしてモンスターに追われている状態がじゃれ合ってる事になるの! 放して! 早く止めないと!」
慌てた様子でデイビッドの腕を振り解こうとする彼女に、大きくため息を漏らしたエミルが装備を取り出した。
もちろん。制限がある為、装備と言っても鞘から抜くことができない上にダメージも与えられない代物だが。
鞘の付いたままのロングソードを構えて、疾走するエリエと炎帝レオネルのアレキサンダーの間に飛び込む。
自分に向かってくるアレキサンダーを見据え、両手で柄と鞘を持って自分の前に突き出した。すると、急に目の前に割り込まれたことで、困惑したアレキサンダーが急停止する。突然止まったことでミレイニが空中に放り出され。
「エリー!!」
エミルの声に反応したエリエが素早く180度回転すると、飛んできたミレイニを受け止めた。
ここはさすが長い間共に戦ってきた仲間と言ったところだろう。一言掛け合うだけで息の合った連携が取れるのは、ただただ感心するばかりだ。
ほっとした様子で息を大きく吐いたミレイニの顔が、エリエの顔にくっつくほどの距離にあった。
「もう。しっかり乗ってなさいよね!」
「……あっ」
顔を真っ赤に染めて慌てて顔を背ける。まあ、何はともあれどうやらミレイニが落ち着いたようで、エリエもこれ以上モンスター達に追い回されないことに、ほっと胸を撫で下ろす。
ミレイニは急にしおらしくなって、召喚していたモンスター達を右手の人差し指にはめていた召喚用の指輪の中に戻す。
背を向けていたミレイニが、徐に振り向いて言った。
「――ちょっと、やり過ぎたし……」
エリエはバツが悪そうに俯き加減でいるミレイニを叱るわけでもなく、無視するわけでもなく。ゆっくりと彼女の前に歩いていくと、その体をぎゅっと抱きしめた。
「別にいいわよ。元々私があんたを置いていったのがいけないんだし……」
「……エリエ。やっぱりエリエはいい奴だし! 大好きだし!」
抱きしめていたエリエの体を抱き枕のように抱き付くと、ミレイニは嬉しそうに顔をエリエのお腹に押し付けて左右に激しく動かしている。それがくすぐったいのか、エリエは大声で笑い声を上げた。
事態が沈静化したその横で出した剣をしまって、エミルがほっとしたように大きく息を吐き出す。
「ねえ、貴女もしかして『白い閃光』じゃない?」
「……えっ? そう呼ばれる事もあるわね」
「やっぱり!」
急に距離を詰めて食い付くようにエミルの体に迫って来る赤髪の少女に、エミルが思わずたじろぐ。
それもそうだろう。その瞳はキラキラと輝き、まるで芸能人でも見るような熱い視線だった。
彼女の眼差しを受け、エミルが苦笑いを浮かべていると、スッと顔の前にサイン色紙が差し出される。
「サインお願いします!!」
「えっ? ああ、いいわよ」
色紙を受け取り慣れた手付きでサインを書いていくと、書き終えた辺りで再び声が耳に飛び込んでくる。
「あっ、ここにリカちゃんへってお願いします!」
ちゃっかり右下に自分の名前を入れて貰うと、サインを書き終えた色紙を返して貰って満足そうな笑みを浮かべながら胸に抱きかかえる。そういえば、始まりの街のサラザの店で、マスターからもサインを貰っていたが、その時にどうしてエミルからも貰わなかったのか謎だ……。
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