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消えたマスター
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翌日、マスターの泊まっていたはずの部屋はもぬけの殻だった――。
「……マスター?」
彼を起こしにきた紅蓮は小首を傾げながら部屋の中に入ると、辺りを注意深く見渡す。
テーブルの上には日本酒の入っていた徳利とお猪口が置かれている。そして使用感のないベッドメイキングされたままになってきっちりとしている布団。
それを見れば、晩酌している最中に……つまり。夜の内に何処かに出掛けたということの証しだ。だが、問題は彼が一体どこに消えたのかということだろう。
部屋の窓は開け放ったままということは、ここから外へと出たのだろうが、この緊急時に仲間を見捨てて逃げ出すような人物ではないことは、紅蓮が最もよく知っていた。
っとなると、マスターは一体どこに…………。
紅蓮は顎の下に手を当てて考えていたが、すぐに大きなため息を吐き出して考えるのを止めた。
「はぁ……マスターの事です。きっと何か考えがあったのでしょう……そうですよね。マスター」
紅蓮は開きっぱなしになった窓を見つめ、身を翻すとゆっくりとした足取りで部屋を後にした。
マスターが何処かにいったことを確認した紅蓮の目の前に、裸のまま黒髪のシートヘヤーに猫耳のカチューシャーを付け、サーベルタイガーの様な生き物に乗った女の子が笑いながら廊下を駆けて行くのが見えた。
自分の横を通過していくのを見送っていると、その後ろを遅れてピンク色のポニーテールの少女が結んだ髪を風でなびかせながら全速力で追いかけてくる。
「待ちなさいって言ってるでしょ! この。ミレイニ! せめて服を着なさーい!!」
拳を振り上げ追いかけて行く。その後ろ姿を見つめていると、そこにデイビッドが部屋から出てきた。
大きなあくびをして紅蓮の方にくるデイビッドの髪はボサボサで、全く整えられていない。おそらく。その様子を見ると今起きたのだろう……。
「おはよう。紅蓮さん」
「おはようございます。ですが、もう9時ですよ。10時に食堂で朝食なので、すみませんがあの2人に伝えておいて下さい。他の方を起こさないといけないので……」
そう言ってその場を去ろうとする紅蓮を、デイビッドが呼び止める。
「待って、俺達の方は俺が起こしにいくからもういいよ。君にそこまで迷惑はかけられないからね」
しかし、紅蓮は視線だけを向けて「そうですか。なら、お願いします」と告げると歩いていってしまう。
そんな彼女の反応に、ポカンと口を開けたまま、デイビッドはその場に立ち尽くしている。すると、彼の耳を何かがカプッと噛み付いた。
「――痛ッ!!」
デイビッドが耳に噛み付いているモフモフしたぬいぐるみのようななにかを掴むと、顔の前に持ってくると、その手の中には白い毛並みのイタチが両手をブンブンと振っている。
何かを訴えかけようとしているようだが、何を言おうとしているのかはさっぱり分からない。すると、真っ白なイタチがデイビッドの手を振り払って地面に着地すると、勢い良く走っていった。
デイビッドもその鬼気迫るイタチの様子に後を追い駆けるように走り出す。
っと曲がり角を曲がった直後、デイビッドの目の前に現れたのは今にもエリエを襲おうとしているサーベルタイガーの姿だった。
出した鞘の付いた装備で、襲い掛かって来る迫り出した牙を何とか抑えたまま地面に倒れ込んでいる。
始めはしつこいエリエにミレイニが命令したのかと思ったが、背中に乗ったミレイニが必死にサーベルタイガーの背中の毛を引っ張っているところを見ると、どうやらそういうわけでもないらしい。
――ガルルルルルルルルルルルルルルルッ!!
唸り声を上げながら凄まじい形相で迫って来るシャルルの牙を、エリエは必死に押し返している。
「ちょ、なっ、なんなのよ! いったい!」
「シャルル止めるし! エリエは餌じゃないし~!」
サーベルタイガーのシャルルは、主であるミレイニの言うことすら聞かない。
いや、いつでもエリエが主人のミレイニのことをいじめているから守ろうとしているのだと思う。
おそらく。シャルルから見れば、主人であるミレイニを襲う者は全て攻撃対象以外の何ものでもないのだろう。
エリエも装飾品として装備できるだけの武器では戦うこともできない。抑えるので精一杯という感じだ――。
足元で止めるようにジェスチャーしているギルガメシュに促されるままに、デイビッドが走り出した。
っとその時、ミレイニの付けていた指輪が青く光を放ち。青い炎と共に一匹の青い炎の鬣を持ったライオンが姿を現す。
大きく咆哮を上げると、今まで誰の言うことも聞かなかったシャルルが急に止まる。
その後、ゆっくりとエリエから離れると、落ち込んだ様子でその場におすわりの状態で待機しているが、何やらバツが悪そうに項垂れている姿を見ると、獣同士でしか分からない何かをアレキサンダーに言われたのだろう。
すっかり落ち着いた様子のシャルルにミレイニが指を突き立てて。
「もうシャルル、エリエは食べちゃダメだし!」
そう告げる彼女にサーベルタイガーは「くぅーん」と鼻を鳴らして、まるで叱られた子猫のように俯く。
悲しそうに足元を見つめるシャルルの頭を撫でて励ますミレイニ。
「……マスター?」
彼を起こしにきた紅蓮は小首を傾げながら部屋の中に入ると、辺りを注意深く見渡す。
テーブルの上には日本酒の入っていた徳利とお猪口が置かれている。そして使用感のないベッドメイキングされたままになってきっちりとしている布団。
それを見れば、晩酌している最中に……つまり。夜の内に何処かに出掛けたということの証しだ。だが、問題は彼が一体どこに消えたのかということだろう。
部屋の窓は開け放ったままということは、ここから外へと出たのだろうが、この緊急時に仲間を見捨てて逃げ出すような人物ではないことは、紅蓮が最もよく知っていた。
っとなると、マスターは一体どこに…………。
紅蓮は顎の下に手を当てて考えていたが、すぐに大きなため息を吐き出して考えるのを止めた。
「はぁ……マスターの事です。きっと何か考えがあったのでしょう……そうですよね。マスター」
紅蓮は開きっぱなしになった窓を見つめ、身を翻すとゆっくりとした足取りで部屋を後にした。
マスターが何処かにいったことを確認した紅蓮の目の前に、裸のまま黒髪のシートヘヤーに猫耳のカチューシャーを付け、サーベルタイガーの様な生き物に乗った女の子が笑いながら廊下を駆けて行くのが見えた。
自分の横を通過していくのを見送っていると、その後ろを遅れてピンク色のポニーテールの少女が結んだ髪を風でなびかせながら全速力で追いかけてくる。
「待ちなさいって言ってるでしょ! この。ミレイニ! せめて服を着なさーい!!」
拳を振り上げ追いかけて行く。その後ろ姿を見つめていると、そこにデイビッドが部屋から出てきた。
大きなあくびをして紅蓮の方にくるデイビッドの髪はボサボサで、全く整えられていない。おそらく。その様子を見ると今起きたのだろう……。
「おはよう。紅蓮さん」
「おはようございます。ですが、もう9時ですよ。10時に食堂で朝食なので、すみませんがあの2人に伝えておいて下さい。他の方を起こさないといけないので……」
そう言ってその場を去ろうとする紅蓮を、デイビッドが呼び止める。
「待って、俺達の方は俺が起こしにいくからもういいよ。君にそこまで迷惑はかけられないからね」
しかし、紅蓮は視線だけを向けて「そうですか。なら、お願いします」と告げると歩いていってしまう。
そんな彼女の反応に、ポカンと口を開けたまま、デイビッドはその場に立ち尽くしている。すると、彼の耳を何かがカプッと噛み付いた。
「――痛ッ!!」
デイビッドが耳に噛み付いているモフモフしたぬいぐるみのようななにかを掴むと、顔の前に持ってくると、その手の中には白い毛並みのイタチが両手をブンブンと振っている。
何かを訴えかけようとしているようだが、何を言おうとしているのかはさっぱり分からない。すると、真っ白なイタチがデイビッドの手を振り払って地面に着地すると、勢い良く走っていった。
デイビッドもその鬼気迫るイタチの様子に後を追い駆けるように走り出す。
っと曲がり角を曲がった直後、デイビッドの目の前に現れたのは今にもエリエを襲おうとしているサーベルタイガーの姿だった。
出した鞘の付いた装備で、襲い掛かって来る迫り出した牙を何とか抑えたまま地面に倒れ込んでいる。
始めはしつこいエリエにミレイニが命令したのかと思ったが、背中に乗ったミレイニが必死にサーベルタイガーの背中の毛を引っ張っているところを見ると、どうやらそういうわけでもないらしい。
――ガルルルルルルルルルルルルルルルッ!!
唸り声を上げながら凄まじい形相で迫って来るシャルルの牙を、エリエは必死に押し返している。
「ちょ、なっ、なんなのよ! いったい!」
「シャルル止めるし! エリエは餌じゃないし~!」
サーベルタイガーのシャルルは、主であるミレイニの言うことすら聞かない。
いや、いつでもエリエが主人のミレイニのことをいじめているから守ろうとしているのだと思う。
おそらく。シャルルから見れば、主人であるミレイニを襲う者は全て攻撃対象以外の何ものでもないのだろう。
エリエも装飾品として装備できるだけの武器では戦うこともできない。抑えるので精一杯という感じだ――。
足元で止めるようにジェスチャーしているギルガメシュに促されるままに、デイビッドが走り出した。
っとその時、ミレイニの付けていた指輪が青く光を放ち。青い炎と共に一匹の青い炎の鬣を持ったライオンが姿を現す。
大きく咆哮を上げると、今まで誰の言うことも聞かなかったシャルルが急に止まる。
その後、ゆっくりとエリエから離れると、落ち込んだ様子でその場におすわりの状態で待機しているが、何やらバツが悪そうに項垂れている姿を見ると、獣同士でしか分からない何かをアレキサンダーに言われたのだろう。
すっかり落ち着いた様子のシャルルにミレイニが指を突き立てて。
「もうシャルル、エリエは食べちゃダメだし!」
そう告げる彼女にサーベルタイガーは「くぅーん」と鼻を鳴らして、まるで叱られた子猫のように俯く。
悲しそうに足元を見つめるシャルルの頭を撫でて励ますミレイニ。
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