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拠点を千代へ6
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前を行く小虎とデイビッドは上機嫌で、どうやら話の内容はデイビッドの着ている侍の甲冑にあるようだ。
戦闘時。小虎は赤い西洋風の甲冑を身に纏っていた。おそらくそれは彼の師匠であり、ギルドマスターのメルディウスからリスペクトしているものなのだろうが、どうやら彼は武者の姿にも興味津々なようで……。
「――かっこいいですよね侍! 僕も侍好きなんです! デイビッドさんは侍のどんなところが好きなんですか!」
瞳を輝かせながら羨望の眼差しを向ける小虎に、デイビッドも上機嫌で答えた。
「やっぱり。刀は欠かせないよ、武士の魂だからね! そしてこの甲冑もいい。動きやすさを優先して関節部を完全に露出させている。最小限の守りで、敵に真っ向から挑むなんて、侍にしかできないよ。後兜もいいね。デザイン性に富んでいてかと言って、雰囲気を台無しにしない。美があるよね日本の鎧には! ああ、あと俺はプレイヤー名はガイアなんだ。皆、何故か名前で呼んでくれないんだけどね……でもまあ、デイビッドでもいいよ。好きなように呼んでくれて構わない」
身振り手振りで会話をしているデイビッドが気さくにそう告げると、後ろからエリエの「どっちでもいいなら、言わなければいいのに……」という呟きが聞こえてくる。
デイビッドは背後を軽く振り向くと、エリエがむすっとしながら鋭い視線で睨みつけている。
来るなら来いと言わんばかりのその喧嘩腰の視線に、デイビッドはやらない方を選んだのか、素早く視線を前に移す。
気に食わない様子で、前を向き直したデイビッドの背中を睨みつけていた。
不機嫌そうにしているエリエの後ろでは、肩に巻き付いたギルガメシュがミレイニの顔にフカフカの毛を押し付けてミレイニもキャッキャと楽しそうに笑っている。
かまいたちのギルガメシュも、やっと落ち着いた場所にこれで安堵しているのだろう。
前には兄弟の様に侍談義に花を咲かせているデイビッドと小虎。後ろには楽しそうにスキンシップを取っているギルガメシュとミレイニに挟まれ、エリエは居辛そうに複雑な表情をして歩いていく。すると、やっと小虎が部屋の前で止まった。小虎はくるりと体を回すと、エリエ達に向かって告げた。
「本当は3人で泊まれる部屋があればいいんですけど、今はないんで2人と1人に分かれて貰うことになるんだけど……」
そこまで告げて、小虎は顔色を窺うように首を傾げている。
直後、ミレイニが大きく手を上げて。
「はい! あたし1人部屋がいいし!」
っと元気良く言った。
エリエ達と行動を共にするようになって、ミレイニは1人で寝ることはなくなった。
最初の内はエリエと一緒に居られて良かったのだろうが、今のミレイニはどうやら退屈になり刺激を求めているようだ――。
手をビシっと上げたまま、キラキラとした瞳で自己主張するように時折つま先立ちになりながら、次にエリエの方を向く。
「ダメよ」
だが、その提案にエリエはバッサリと切り捨てる。
頬を膨らませてもなお、一向に上げた手を下げる様子のない彼女に変わってエリエが小虎に言った。
「なら、部屋割りは私とこの子。一人部屋はデイビッドでお願い」
「ああ、俺は構わないが……」
苦笑いを浮かべたデイビッドの視線は、エリエを睨む瞳に涙を溜めながら頬を膨らませているミレイニに向いていた。
彼女は今にもこぼれ落ちそうな涙を必死に抑え、ミレイニがエリエに抗議する。
「なんでだし!」
「なんでも」
「どうしてだし!」
「どうしても」
理由が返ってくると思いきや、ばっさりと切り捨て、全く取り合ってももらえないことにミレイニは次第に不満を露わにする。
最後の手段と言わんばかりにその場で地団駄を踏んでいると、エリエが大きく息を吸い込んで。
「――そんな子には、もうお菓子作って上げないわよ!!」
その言葉の直後。急にミレイニが静かになって、躊躇しながらも諦めたように小さく頷く。どうやら、ミレイニとしては、一人部屋になることよりもお菓子の方が勝ったようだ……。
大人しく部屋に入るミレイニを見て、エリエも安堵したようにため息を漏らすと、デイビッドに告げる。
「後で、時間もらえる? 話したいことがあるから……」
険しい表情でデイビッドの顔を見つめている彼女に、デイビッドも深く頷き返す。
すると、エリエは微かに微笑みを浮かべ、部屋へと入っていった。
それを見送って、デイビッドも廊下を境に向かい隣の部屋へと入っていく。
小虎もデイビッド達が部屋に入ったのを確認すると、エレベーターの方へと向かって歩き出した。
数時間が経過し、時計の針が12時を回った辺りで、椅子に座って装備を確認していたデイビッドの部屋のドアをノックする音が響く。
もちろん。その扉の先に居たのはエリエだった……彼女は少し俯き加減にしながら。
「……入ってもいい?」
っとデイビッドに尋ねる。
だが、その声音は普段の彼女と比べて弱々しく妙にかしこまった感じだった。
深く頷いた彼は扉の前に居るエリエを部屋の中へと招き入れると、椅子に腰掛けるように促し、自分はコーヒーを入れ、エリエにはミルク入りのココアと角砂糖の入った小瓶を出す。
戦闘時。小虎は赤い西洋風の甲冑を身に纏っていた。おそらくそれは彼の師匠であり、ギルドマスターのメルディウスからリスペクトしているものなのだろうが、どうやら彼は武者の姿にも興味津々なようで……。
「――かっこいいですよね侍! 僕も侍好きなんです! デイビッドさんは侍のどんなところが好きなんですか!」
瞳を輝かせながら羨望の眼差しを向ける小虎に、デイビッドも上機嫌で答えた。
「やっぱり。刀は欠かせないよ、武士の魂だからね! そしてこの甲冑もいい。動きやすさを優先して関節部を完全に露出させている。最小限の守りで、敵に真っ向から挑むなんて、侍にしかできないよ。後兜もいいね。デザイン性に富んでいてかと言って、雰囲気を台無しにしない。美があるよね日本の鎧には! ああ、あと俺はプレイヤー名はガイアなんだ。皆、何故か名前で呼んでくれないんだけどね……でもまあ、デイビッドでもいいよ。好きなように呼んでくれて構わない」
身振り手振りで会話をしているデイビッドが気さくにそう告げると、後ろからエリエの「どっちでもいいなら、言わなければいいのに……」という呟きが聞こえてくる。
デイビッドは背後を軽く振り向くと、エリエがむすっとしながら鋭い視線で睨みつけている。
来るなら来いと言わんばかりのその喧嘩腰の視線に、デイビッドはやらない方を選んだのか、素早く視線を前に移す。
気に食わない様子で、前を向き直したデイビッドの背中を睨みつけていた。
不機嫌そうにしているエリエの後ろでは、肩に巻き付いたギルガメシュがミレイニの顔にフカフカの毛を押し付けてミレイニもキャッキャと楽しそうに笑っている。
かまいたちのギルガメシュも、やっと落ち着いた場所にこれで安堵しているのだろう。
前には兄弟の様に侍談義に花を咲かせているデイビッドと小虎。後ろには楽しそうにスキンシップを取っているギルガメシュとミレイニに挟まれ、エリエは居辛そうに複雑な表情をして歩いていく。すると、やっと小虎が部屋の前で止まった。小虎はくるりと体を回すと、エリエ達に向かって告げた。
「本当は3人で泊まれる部屋があればいいんですけど、今はないんで2人と1人に分かれて貰うことになるんだけど……」
そこまで告げて、小虎は顔色を窺うように首を傾げている。
直後、ミレイニが大きく手を上げて。
「はい! あたし1人部屋がいいし!」
っと元気良く言った。
エリエ達と行動を共にするようになって、ミレイニは1人で寝ることはなくなった。
最初の内はエリエと一緒に居られて良かったのだろうが、今のミレイニはどうやら退屈になり刺激を求めているようだ――。
手をビシっと上げたまま、キラキラとした瞳で自己主張するように時折つま先立ちになりながら、次にエリエの方を向く。
「ダメよ」
だが、その提案にエリエはバッサリと切り捨てる。
頬を膨らませてもなお、一向に上げた手を下げる様子のない彼女に変わってエリエが小虎に言った。
「なら、部屋割りは私とこの子。一人部屋はデイビッドでお願い」
「ああ、俺は構わないが……」
苦笑いを浮かべたデイビッドの視線は、エリエを睨む瞳に涙を溜めながら頬を膨らませているミレイニに向いていた。
彼女は今にもこぼれ落ちそうな涙を必死に抑え、ミレイニがエリエに抗議する。
「なんでだし!」
「なんでも」
「どうしてだし!」
「どうしても」
理由が返ってくると思いきや、ばっさりと切り捨て、全く取り合ってももらえないことにミレイニは次第に不満を露わにする。
最後の手段と言わんばかりにその場で地団駄を踏んでいると、エリエが大きく息を吸い込んで。
「――そんな子には、もうお菓子作って上げないわよ!!」
その言葉の直後。急にミレイニが静かになって、躊躇しながらも諦めたように小さく頷く。どうやら、ミレイニとしては、一人部屋になることよりもお菓子の方が勝ったようだ……。
大人しく部屋に入るミレイニを見て、エリエも安堵したようにため息を漏らすと、デイビッドに告げる。
「後で、時間もらえる? 話したいことがあるから……」
険しい表情でデイビッドの顔を見つめている彼女に、デイビッドも深く頷き返す。
すると、エリエは微かに微笑みを浮かべ、部屋へと入っていった。
それを見送って、デイビッドも廊下を境に向かい隣の部屋へと入っていく。
小虎もデイビッド達が部屋に入ったのを確認すると、エレベーターの方へと向かって歩き出した。
数時間が経過し、時計の針が12時を回った辺りで、椅子に座って装備を確認していたデイビッドの部屋のドアをノックする音が響く。
もちろん。その扉の先に居たのはエリエだった……彼女は少し俯き加減にしながら。
「……入ってもいい?」
っとデイビッドに尋ねる。
だが、その声音は普段の彼女と比べて弱々しく妙にかしこまった感じだった。
深く頷いた彼は扉の前に居るエリエを部屋の中へと招き入れると、椅子に腰掛けるように促し、自分はコーヒーを入れ、エリエにはミルク入りのココアと角砂糖の入った小瓶を出す。
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