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獅子としての意地6
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そして外部からの攻撃に対して疎いのであれば、本来はネオにもう戦う理由は存在しない。何故なら、ここにいるモンスター達はすでに彼のギルドのメンバーを襲わないからだ。
しかし、彼は無数のモンスターを前に馬を降り。乗っていた馬を消して、掛けていたサングラスを放り投げた。
大きな傷跡を残した右目からは殺気に満ちた野獣の様なギラギラとした眼光を飛ばしていた。
「俺の仲間を殺しておいて、過去の事の様にぼさっと背中を見せやがって……人の上に立つ人間には、理屈では分かっていても絶対に引けねぇー場面があるんだよ! たとえそれが――」
ネオの全身の筋肉が盛り上がり急激に毛が伸び逆立つと、鋭い爪が伸び耳と尻尾が生え口からは白い息を吐き出す。
白銀の鬣に口の中から突き出した牙が、真珠の様に不気味に白く光り、その鋭い瞳が突き刺す様な眼光を放つ。
「――この生命を燃やし尽くすとしてもな!!」
ネオはライオンそのものという咆哮を上げると、彼に背中を向けたモンスターの軍勢の中へと飛び込んでいく。
獣人となったネオの鋭い爪がオークの巨体を引き裂き、肉片と化したオークの体が光の粒子となって上空へと舞い上がる。
だが、それを皮切りにネオに気付いた多くのモンスターが、蟻が砂糖に群がるように一斉にネオの体に飛び掛かる。
白銀の毛に覆われ隆起した筋肉に、モンスターの持つ漆黒の刃が容赦なく体に突き刺さり、ネオが苦痛を滲ませた声で吼えた。
その咆哮が天に轟き地面を揺らす。視界に映る円形のHPバーが激しく減少し、黄色いゾーンへと突入するのが見え大きく目を見開くと、体を大きく揺らして体に纏わり付いたモンスターを振り落とす。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
雄叫びを上げ、ネオが全身の筋肉に力を入れると、盛り上がってきた筋肉によって体の至る所に刺さっていた武器が抜け落ちた。
なおも武器を取り戻そうと向かってくる敵を、その鋭利な爪で次から次へと斬り刻む。
直後。彼の攻撃の隙を突いて、2体のスケルトンが手にした槍をネオの体に突き立てる。
「ぐッ……この程度で仲間を殺られてオメオメと引き下がったら……ギルマスとしても、男としても、俺を慕って付いて来て消えたあいつ等に示しが付かないんだよ!!」
そう叫び声を上げると、武器を手にネオの左肩と脇腹にその刃を突き刺した敵の頭を鷲掴みにすると、スイカを潰すように軽々とスケルトンの頭蓋を粉砕した。
次にポケットから取り出したヒールストーンを自分の真上に投げ、減少したHPを回復する。
HPが全回復したのを確認してから、ネオは武器を持つ敵を爪で粉砕しつつなるべく多くの敵を一箇所に集めていく。だが、いくら強さを示しても数とスタミナに勝るモンスターに、生身のプレイヤーが勝てるはずもない。
疲労の蓄積と共に敵の攻撃を貰う回数が増え、負傷によってHPの減少率が増していく。ネオはじわじわと真綿で首を絞められるように追い詰められていった。
そしていつしかヒールストーンも底を尽き――。
「クソッ! 回復アイテムが切れやがった。さすがの俺もここまでか……」
弱音を吐き天を仰いだ直後、彼の脳裏に消えていった仲間達の光景が鮮明に呼び起こされる……走馬灯が駆け巡る中で、一度は曇りかけたネオの瞳に再び光が宿り、彼は不敵な笑みを浮かべた。
「フフフ……フフッフ。アハハハハハハッ!!」
次第に大きくなるその笑い声に、ネオは自分の顔を手で覆う。
静まり返り、徐に低い声で小声で呟く。
「――そうだよな。お前等……自分で始めたのに途中で諦めるとか都合が良すぎるよな。分かった……せんべつだ! こいつら一匹でも多く、道連れにしてやるぜ! 人生なんざ結局――――道楽なんだからよ!!」
開き直った様に微笑んだネオが、とち狂ったのか今まで以上の勢いで、手当たり次第に目に付いたモンスターを片っ端から撃破していく。
次々にモンスターを切り裂く一方で、敵の刃が体を傷付けていた。しかし、彼は防御する素振りすら見せず。逆真っ向から敵の刃が届く距離に飛び込んで、その鋭利な爪が確実に当たる場所を進んで取りにいっているようにも見える。
だが防御を完全に捨てたその猛攻に、彼のHPもすぐにレッドゾーンに突入する。HP残量に構うことなく暴れ回る彼の姿は、まさに獣そのものだった……。
っと、そこに突如緑色の光が降り注ぎ、ネオの減ったHPを回復させた。
突然のことに驚き、一瞬ネオの攻撃する手が止まると、彼を取り巻いていた周りの敵が瞬殺される。
「なんだってお前が……」
突如現れた着物に身の丈ほどの長刀を手にした男を、目を見開いてその場に立ち尽くしている。
手に持った長刀を鞘に収め、驚くネオの顔を見てミゼが笑み返す。
「……お前が拙者を誘う時に言った言葉を覚えているか? ネオ」
「う~ん。その……なんだったかな?」
照れくさいのか、はぐらかすように頬を掻いて答えたネオにミゼが呆れ顔で呟く。
しかし、彼は無数のモンスターを前に馬を降り。乗っていた馬を消して、掛けていたサングラスを放り投げた。
大きな傷跡を残した右目からは殺気に満ちた野獣の様なギラギラとした眼光を飛ばしていた。
「俺の仲間を殺しておいて、過去の事の様にぼさっと背中を見せやがって……人の上に立つ人間には、理屈では分かっていても絶対に引けねぇー場面があるんだよ! たとえそれが――」
ネオの全身の筋肉が盛り上がり急激に毛が伸び逆立つと、鋭い爪が伸び耳と尻尾が生え口からは白い息を吐き出す。
白銀の鬣に口の中から突き出した牙が、真珠の様に不気味に白く光り、その鋭い瞳が突き刺す様な眼光を放つ。
「――この生命を燃やし尽くすとしてもな!!」
ネオはライオンそのものという咆哮を上げると、彼に背中を向けたモンスターの軍勢の中へと飛び込んでいく。
獣人となったネオの鋭い爪がオークの巨体を引き裂き、肉片と化したオークの体が光の粒子となって上空へと舞い上がる。
だが、それを皮切りにネオに気付いた多くのモンスターが、蟻が砂糖に群がるように一斉にネオの体に飛び掛かる。
白銀の毛に覆われ隆起した筋肉に、モンスターの持つ漆黒の刃が容赦なく体に突き刺さり、ネオが苦痛を滲ませた声で吼えた。
その咆哮が天に轟き地面を揺らす。視界に映る円形のHPバーが激しく減少し、黄色いゾーンへと突入するのが見え大きく目を見開くと、体を大きく揺らして体に纏わり付いたモンスターを振り落とす。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
雄叫びを上げ、ネオが全身の筋肉に力を入れると、盛り上がってきた筋肉によって体の至る所に刺さっていた武器が抜け落ちた。
なおも武器を取り戻そうと向かってくる敵を、その鋭利な爪で次から次へと斬り刻む。
直後。彼の攻撃の隙を突いて、2体のスケルトンが手にした槍をネオの体に突き立てる。
「ぐッ……この程度で仲間を殺られてオメオメと引き下がったら……ギルマスとしても、男としても、俺を慕って付いて来て消えたあいつ等に示しが付かないんだよ!!」
そう叫び声を上げると、武器を手にネオの左肩と脇腹にその刃を突き刺した敵の頭を鷲掴みにすると、スイカを潰すように軽々とスケルトンの頭蓋を粉砕した。
次にポケットから取り出したヒールストーンを自分の真上に投げ、減少したHPを回復する。
HPが全回復したのを確認してから、ネオは武器を持つ敵を爪で粉砕しつつなるべく多くの敵を一箇所に集めていく。だが、いくら強さを示しても数とスタミナに勝るモンスターに、生身のプレイヤーが勝てるはずもない。
疲労の蓄積と共に敵の攻撃を貰う回数が増え、負傷によってHPの減少率が増していく。ネオはじわじわと真綿で首を絞められるように追い詰められていった。
そしていつしかヒールストーンも底を尽き――。
「クソッ! 回復アイテムが切れやがった。さすがの俺もここまでか……」
弱音を吐き天を仰いだ直後、彼の脳裏に消えていった仲間達の光景が鮮明に呼び起こされる……走馬灯が駆け巡る中で、一度は曇りかけたネオの瞳に再び光が宿り、彼は不敵な笑みを浮かべた。
「フフフ……フフッフ。アハハハハハハッ!!」
次第に大きくなるその笑い声に、ネオは自分の顔を手で覆う。
静まり返り、徐に低い声で小声で呟く。
「――そうだよな。お前等……自分で始めたのに途中で諦めるとか都合が良すぎるよな。分かった……せんべつだ! こいつら一匹でも多く、道連れにしてやるぜ! 人生なんざ結局――――道楽なんだからよ!!」
開き直った様に微笑んだネオが、とち狂ったのか今まで以上の勢いで、手当たり次第に目に付いたモンスターを片っ端から撃破していく。
次々にモンスターを切り裂く一方で、敵の刃が体を傷付けていた。しかし、彼は防御する素振りすら見せず。逆真っ向から敵の刃が届く距離に飛び込んで、その鋭利な爪が確実に当たる場所を進んで取りにいっているようにも見える。
だが防御を完全に捨てたその猛攻に、彼のHPもすぐにレッドゾーンに突入する。HP残量に構うことなく暴れ回る彼の姿は、まさに獣そのものだった……。
っと、そこに突如緑色の光が降り注ぎ、ネオの減ったHPを回復させた。
突然のことに驚き、一瞬ネオの攻撃する手が止まると、彼を取り巻いていた周りの敵が瞬殺される。
「なんだってお前が……」
突如現れた着物に身の丈ほどの長刀を手にした男を、目を見開いてその場に立ち尽くしている。
手に持った長刀を鞘に収め、驚くネオの顔を見てミゼが笑み返す。
「……お前が拙者を誘う時に言った言葉を覚えているか? ネオ」
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