527 / 568
覆面の下の企み11
しおりを挟む
正面にウィンドウが表示され、始まりの街と無数の赤い印、右側にモンスター達の種類と体数が表示されている。
「フフフッ……さすがはイヴ。いや、大空博士だ――彼はこれほどのポテンシャルの武器とスキルを、まだ無事に生まれるかも分からなかった娘に与えていたのだからね……元々は30万はいた我が勢力が、イヴの介入で一気に10万も減ってしまった。初期の計画通り、他の街と同じ10万ならば、確実に彼女はあの街を救っていただろう……」
覆面の男は椅子から立ち上がると、部屋の中をうろうろと歩き始め。
「だが、私は自分の本来のシュミュレーションに異を唱え、そして勝った! そして今、イヴの固有スキルデータの収集にも成功した!」
興奮を隠し切れない様子で壁をドンドンと何度も叩くと、もう一度モニターの所へと足早に戻り、映し出された星を食い入るように見つめ。
「そう! 私はずっと疑問に思っていたのだ! 全ステータスを使用後24時間もの状態の固定――どうして、敵のステータスを吸収し、己のステータスに上乗せしてもなお。何重にも枷をはめるのか……その理由がこれだ。スキルの使用制限! 膨大なデータ管理と安全の為の己の過度なステータス上昇システムは、著しい処理速度の低下を招く。本来データの集合体でしかないアバターをゲーム内で睡眠させる理由は、その時間を利用したデータの圧縮と削除が目的なのだから無理もない。大規模なMMORPG――しかもそれがVRとなれば、そのデータ量も超膨大! それを知らずに継続してスキルを使用すれば、キャラクターの処理速度プログラムが追い付かずにフリーズするのは当然の事!」
覆面の男は再び狂気じみた笑い声を上げると、モニターの中に映る星を指先でそっと撫でる。
「フフフっ……アーハッハッハッハッ! やっと……やっと君を攻略できたよ、イヴ。僕の……僕だけのイヴ……後は、不要な人間を排除していけば、僕達の理想郷が完成する……メモリーズを手に入れて、膨大な富と権力を手に二人の楽園を築くんだ。そして、いずれ神となる子を二人で育てよう……きっと天国の博士もそれを望んでいるだろう。僕達二人の愛を祝福してくれる!」
狂気に満ちた不気味な笑みを浮かべ星のことを見るその瞳は、発言からも分かる通り、すでに彼の思考は常軌を逸していた。
モニターに映し出された星を見続け、狼の覆面の中から見える瞳はまるで獲物を狙う狼そのものだった。
* * *
突然意識を失った星の服を引っ張り上げたまま、動きを停止した敵を前に右往左往しているレイニール。
すると、そこに物陰から突如として人影が飛び出して来た。
茶色い短髪と瞳に白銀の鎧に白いマントを着用した彼はディーノ――いや、今は偽名を使っていたことがバレたのでデュランだった……。
急に目の前に現れたデュランに、レイニールはほっと胸を撫で下ろした。
横目でそれを確認したデュランが小さなため息と共に呟く。
「まだほっとするのは早いよ。ドラゴンくん」
「なっ! ほ、ほっとなんてしておらんぞ!?」
「さあ、どうだか……しばらくの間、その子を絶対放すんじゃないよ」
呆れ顔から、すぐに凛々しい面持ちに切り替わったデュランがアイテムの中から薙刀を取り出す。
それを前に構えると彼の足元に大きな円が描かれ、そこから五芒星の青白い光が立ち昇り、5角から和風の着物に般若の面、天狗の面、狐の面、翁の面、女の面をそれぞれに身に付けた者達が現れた。
全員が顔には面を着けているのだが、レイニールには不思議と彼等に恐怖などは感じなかった。
「敵の数が予想以上に多くてね。俺がこの子達を運んで逃げてる間、向かって来る敵を迎撃してほしい。無論全力でね……頼んだよ!」
現れた面を着けた者達に、デュランが命令を下す。
デュランの持っている薙刀の刃が振り下ろされ。その直後、彼等の顔に付いていた面が一斉に外れ、お面の中からは絶世の美女と美男子達の顔が露わになる。もうその顔を隠す為だけに、わざわざお面を被っていたのではないかと思うほどに、皆が整った目鼻立ちをしていた――。
っと、不満を前面に押し出したように渋い顔をして、金の刺繍で派手な青い着物を纏った狐の面を着けていた髪の青髪に、左右別々な青と緑の瞳の男が刀を肩に担ぐ。
「ったく。どうして甲冑じゃなくて、俺が着物で刀振り回さにゃならねぇーんだよ!」
「大山津見、前の主とは違うのだ。それに、見た目が変わったステータスに変化はないし、どうということはないだろ?」
「須佐之男はいいよな。着物って言っても黒でよー。俺なんてこんな派手派手のだぜ? 交換しろ!」
「……断る」
腕を組みしてそっぽを向くと、バッサリと切り捨てる黒い着物を纏った短い黒い髪に赤い瞳の男。
「フフフッ……さすがはイヴ。いや、大空博士だ――彼はこれほどのポテンシャルの武器とスキルを、まだ無事に生まれるかも分からなかった娘に与えていたのだからね……元々は30万はいた我が勢力が、イヴの介入で一気に10万も減ってしまった。初期の計画通り、他の街と同じ10万ならば、確実に彼女はあの街を救っていただろう……」
覆面の男は椅子から立ち上がると、部屋の中をうろうろと歩き始め。
「だが、私は自分の本来のシュミュレーションに異を唱え、そして勝った! そして今、イヴの固有スキルデータの収集にも成功した!」
興奮を隠し切れない様子で壁をドンドンと何度も叩くと、もう一度モニターの所へと足早に戻り、映し出された星を食い入るように見つめ。
「そう! 私はずっと疑問に思っていたのだ! 全ステータスを使用後24時間もの状態の固定――どうして、敵のステータスを吸収し、己のステータスに上乗せしてもなお。何重にも枷をはめるのか……その理由がこれだ。スキルの使用制限! 膨大なデータ管理と安全の為の己の過度なステータス上昇システムは、著しい処理速度の低下を招く。本来データの集合体でしかないアバターをゲーム内で睡眠させる理由は、その時間を利用したデータの圧縮と削除が目的なのだから無理もない。大規模なMMORPG――しかもそれがVRとなれば、そのデータ量も超膨大! それを知らずに継続してスキルを使用すれば、キャラクターの処理速度プログラムが追い付かずにフリーズするのは当然の事!」
覆面の男は再び狂気じみた笑い声を上げると、モニターの中に映る星を指先でそっと撫でる。
「フフフっ……アーハッハッハッハッ! やっと……やっと君を攻略できたよ、イヴ。僕の……僕だけのイヴ……後は、不要な人間を排除していけば、僕達の理想郷が完成する……メモリーズを手に入れて、膨大な富と権力を手に二人の楽園を築くんだ。そして、いずれ神となる子を二人で育てよう……きっと天国の博士もそれを望んでいるだろう。僕達二人の愛を祝福してくれる!」
狂気に満ちた不気味な笑みを浮かべ星のことを見るその瞳は、発言からも分かる通り、すでに彼の思考は常軌を逸していた。
モニターに映し出された星を見続け、狼の覆面の中から見える瞳はまるで獲物を狙う狼そのものだった。
* * *
突然意識を失った星の服を引っ張り上げたまま、動きを停止した敵を前に右往左往しているレイニール。
すると、そこに物陰から突如として人影が飛び出して来た。
茶色い短髪と瞳に白銀の鎧に白いマントを着用した彼はディーノ――いや、今は偽名を使っていたことがバレたのでデュランだった……。
急に目の前に現れたデュランに、レイニールはほっと胸を撫で下ろした。
横目でそれを確認したデュランが小さなため息と共に呟く。
「まだほっとするのは早いよ。ドラゴンくん」
「なっ! ほ、ほっとなんてしておらんぞ!?」
「さあ、どうだか……しばらくの間、その子を絶対放すんじゃないよ」
呆れ顔から、すぐに凛々しい面持ちに切り替わったデュランがアイテムの中から薙刀を取り出す。
それを前に構えると彼の足元に大きな円が描かれ、そこから五芒星の青白い光が立ち昇り、5角から和風の着物に般若の面、天狗の面、狐の面、翁の面、女の面をそれぞれに身に付けた者達が現れた。
全員が顔には面を着けているのだが、レイニールには不思議と彼等に恐怖などは感じなかった。
「敵の数が予想以上に多くてね。俺がこの子達を運んで逃げてる間、向かって来る敵を迎撃してほしい。無論全力でね……頼んだよ!」
現れた面を着けた者達に、デュランが命令を下す。
デュランの持っている薙刀の刃が振り下ろされ。その直後、彼等の顔に付いていた面が一斉に外れ、お面の中からは絶世の美女と美男子達の顔が露わになる。もうその顔を隠す為だけに、わざわざお面を被っていたのではないかと思うほどに、皆が整った目鼻立ちをしていた――。
っと、不満を前面に押し出したように渋い顔をして、金の刺繍で派手な青い着物を纏った狐の面を着けていた髪の青髪に、左右別々な青と緑の瞳の男が刀を肩に担ぐ。
「ったく。どうして甲冑じゃなくて、俺が着物で刀振り回さにゃならねぇーんだよ!」
「大山津見、前の主とは違うのだ。それに、見た目が変わったステータスに変化はないし、どうということはないだろ?」
「須佐之男はいいよな。着物って言っても黒でよー。俺なんてこんな派手派手のだぜ? 交換しろ!」
「……断る」
腕を組みしてそっぽを向くと、バッサリと切り捨てる黒い着物を纏った短い黒い髪に赤い瞳の男。
0
お気に入りに追加
77
あなたにおすすめの小説
タイムワープ艦隊2024
山本 双六
SF
太平洋を横断する日本機動部隊。この日本があるのは、大東亜(太平洋)戦争に勝利したことである。そんな日本が勝った理由は、ある機動部隊が来たことであるらしい。人呼んで「神の機動部隊」である。
この世界では、太平洋戦争で日本が勝った世界戦で書いています。(毎回、太平洋戦争系が日本ばかり勝っ世界線ですいません)逆ファイナルカウントダウンと考えてもらえればいいかと思います。只今、続編も同時並行で書いています!お楽しみに!
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
【VRMMO】イースターエッグ・オンライン【RPG】
一樹
SF
ちょっと色々あって、オンラインゲームを始めることとなった主人公。
しかし、オンラインゲームのことなんてほとんど知らない主人公は、スレ立てをしてオススメのオンラインゲームを、スレ民に聞くのだった。
ゲーム初心者の活字中毒高校生が、オンラインゲームをする話です。
以前投稿した短編
【緩募】ゲーム初心者にもオススメのオンラインゲーム教えて
の連載版です。
連載するにあたり、短編は削除しました。
INNER NAUTS(インナーノーツ) 〜精神と異界の航海者〜
SunYoh
SF
ーー22世紀半ばーー
魂の源とされる精神世界「インナースペース」……その次元から無尽蔵のエネルギーを得ることを可能にした代償に、さまざまな災害や心身への未知の脅威が発生していた。
「インナーノーツ」は、時空を超越する船<アマテラス>を駆り、脅威の解消に「インナースペース」へ挑む。
<第一章 「誘い」>
粗筋
余剰次元活動艇<アマテラス>の最終試験となった有人起動試験は、原因不明のトラブルに見舞われ、中断を余儀なくされたが、同じ頃、「インナーノーツ」が所属する研究機関で保護していた少女「亜夢」にもまた異変が起こっていた……5年もの間、眠り続けていた彼女の深層無意識の中で何かが目覚めようとしている。
「インナースペース」のエネルギーを解放する特異な能力を秘めた亜夢の目覚めは、即ち、「インナースペース」のみならず、物質世界である「現象界(この世)」にも甚大な被害をもたらす可能性がある。
ーー亜夢が目覚める前に、この脅威を解消するーー
「インナーノーツ」は、この使命を胸に<アマテラス>を駆り、未知なる世界「インナースペース」へと旅立つ!
そこで彼らを待ち受けていたものとは……
※この物語はフィクションです。実際の国や団体などとは関係ありません。
※SFジャンルですが殆ど空想科学です。
※セルフレイティングに関して、若干抵触する可能性がある表現が含まれます。
※「小説家になろう」、「ノベルアップ+」でも連載中
※スピリチュアル系の内容を含みますが、特定の宗教団体等とは一切関係無く、布教、勧誘等を目的とした作品ではありません。
メトロポリス社へようこそ! ~「役立たずだ」とクビにされたおっさんの就職先は大企業の宇宙船を守る護衛官でした~
アンジェロ岩井
SF
「えっ、クビですか?」
中企業アナハイニム社の事務課に勤める大津修也(おおつしゅうや)は会社の都合によってクビを切られてしまう。
ろくなスキルも身に付けていない修也にとって再転職は絶望的だと思われたが、大企業『メトロポリス』からの使者が現れた。
『メトロポリス』からの使者によれば自身の商品を宇宙の植民星に運ぶ際に宇宙生物に襲われるという事態が幾度も発生しており、そのための護衛役として会社の顧問役である人工頭脳『マリア』が護衛役を務める適任者として選び出したのだという。
宇宙生物との戦いに用いるロトワングというパワードスーツには適性があり、その適性が見出されたのが大津修也だ。
大津にとっては他に就職の選択肢がなかったので『メトロポリス』からの選択肢を受けざるを得なかった。
『メトロポリス』の宇宙船に乗り込み、宇宙生物との戦いに明け暮れる中で、彼は護衛アンドロイドであるシュウジとサヤカと共に過ごし、絆を育んでいくうちに地球上にてアンドロイドが使用人としての扱いしか受けていないことを思い出す。
修也は戦いの中でアンドロイドと人間が対等な関係を築き、共存を行うことができればいいと考えたが、『メトロポリス』では修也とは対照的に人類との共存ではなく支配という名目で動き出そうとしていた。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
アルファポリスとカクヨムってどっちが稼げるの?
無責任
エッセイ・ノンフィクション
基本的にはアルファポリスとカクヨムで執筆活動をしています。
どっちが稼げるのだろう?
いろんな方の想いがあるのかと・・・。
2021年4月からカクヨムで、2021年5月からアルファポリスで執筆を開始しました。
あくまで、僕の場合ですが、実データを元に・・・。
いつか日本人(ぼく)が地球を救う
多比良栄一
SF
この小説にはある仕掛けがある。
読者はこの物語を読み進めると、この作品自体に仕掛けられた「前代未聞」のアイデアを知ることになる。
それは日本のアニメやマンガへ注がれるオマージュ。
2次創作ではない、ある種の入れ子構造になったメタ・フィクション。
誰もがきいたことがある人物による、誰もみたことがない物語がいま幕を開ける。
すべてのアニメファンに告ぐ!! 。隠された謎を見抜けるか!!。
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
25世紀後半 地球を襲った亜獣と呼ばれる怪獣たちに、デミリアンと呼ばれる生命体に搭乗して戦う日本人少年ヤマトタケル。なぜか日本人にしか操縦ができないこの兵器に乗る者には、同時に、人類を滅ぼすと言われる「四解文書」と呼ばれる極秘文書も受け継がされた。
もしこれを人々が知れば、世界は「憤怒」し、「恐怖」し、「絶望」し、そして「発狂」する。
かつてそれを聞いた法皇がショック死したほどの四つの「真理」。
世界でたった一人、人類を救えも、滅ぼしもできる、両方の力を手に入れた日本人少年ヤマトタケル。
彼は、世界100億人全員から、救いを求められ、忌み嫌われ、そして恐れられる存在になった。
だが彼には使命があった。たとえ人類の半分の人々を犠牲にしても残り11体の亜獣を殲滅すること、そして「四解文書」の謎を誰にも知られずに永遠に葬ることだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる