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覆面の下の企み4
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突然のメルディウスの登場に驚いたのか、マスターが目を丸くさせながら彼の姿を見た。
「――よう、ギルマス。まだスキルは使用してないようだな」
「当然だ。儂のスキルは使用するとHPの回復ができない上に、24時間の使用制限が掛かってしまうからな」
それを聞いたメルディウスがニヤリと不敵な笑みを浮かべ、ベルセルクを肩に担ぐ。
マスターが不機嫌そうに目を細めている。
「いや、別にバカにしてるわけじゃない。ただ、化け物レベルのアンタでも。さすがに、この量を相手にするのはHPを回復せざるを得ないんだと思ってよ。安心しただけだ」
「ふん。ただの保険だ……」
「……だろうな」
互いにそう呟いて笑うと、会話をしているのにも構うことなく向かってくる敵を次から次へと打ちのめしていく。
向かってくる敵の勢いが少なくなると、マスターが徐に口を開いた。
「――ルシファーが消えた直後。すでに第二陣の者達には救援の要請を出している! もうしばらく持ち堪えれば援軍も来る!」
「ほう。それは嬉しいねぇー。さすがにこの数を相手に、制圧戦は厳しいからな!」
突如駆け出したメルディウスが、ベルセルクを振り回して敵を無差別に斬り伏せていく。マスターもそれに負けじと、目の前の敵を次々に殴り倒す。
2人を取り巻くように、キラキラと粒子状になった元々モンスターだったものが舞い上がり、彼等の周りがまるで別のゲームのような幻想的な世界へと変わっていた。
最初からこの作戦自体、ボスを撃破することを目的にしていた為、救援が来るまでの間。各自の判断で生き残らなければならなかった。
もちろん。突然戦線に入ってきたミレイニ意外の皆がそのことを了解した上での作戦だったのだが、さすがに休みなく襲い掛かってくる数万のモンスターを個人が撃破し続けるのにも限度はある。
モンスターは疲労せずいくらでも代えが利くが、プレイヤーは負傷も疲労もするし、アイテムにも限りもあるのだ。各自ボスとの戦闘を終えたメンバー達がそれほど長い間、凌げる力が残っているはずがない。だが、そんな心配もすぐに無駄になることになる……。
モンスターに囲まれた遥か先に、馬に乗って武装したプレイヤーの波が押し寄せてくるのが見えた。
砂煙を上げて滑走してくる馬の大群が徐々に消え、プレイヤー達がモンスターの大群に得物を振りかざしてぶつかっていく。
辺りにプレイヤーの怒号とモンスター達の断末魔が響き渡り。今までは強気に飛び掛かってきたモンスター達も援軍の数に恐れをなしたのか、大した抵抗も見せずに意外なほど呆気なく背を向けて後方へと撤退を開始した。
突如、戦意を失い撤退を開始した敵にメルディウスが歓喜する横で、マスターだけはその行動に不審そうに眉をひそめていた。
そのモンスターの行動は他のメンバー達の所でも同じだった。
デイビッドとカレンの所では――。
「デイビッドさん。見てください! 敵が逃げていきますよ!」
「ああ、やっと終わったのか…………はぁ~」
情けないほどのため息をついて、倒れるように地面に寝転がる。しかし、それはカレンも同じようで、大きなため息を漏らしてその場に座り込んだ。
2人共多くのモンスターを相手にして、相当気を張っていたのだろう。そんな時、後方に退いていく敵を見つめ、カレンが不思議そうに首を傾げた。
「でも、どうして逃げるんでしょうね」
「ん? そんなのこっちの味方が来たからじゃない? ほら、エミルがルシファーを倒したからね!」
「……そうですね。師匠が何かしたのかもしれないですし!」
カレンは満面の笑みで頷くと、デイビッドも力強く頷き返した。
そこにネオと小虎が叫び声を上げながら、逃げる敵を斬り付け進んでいくのが見えた。その後ろを他のプレイヤーも血眼になって敵を追い回し撃破している。
逃げる数万の敵二千足らずのプレイヤーが追い掛け回す構図は、何とも夢があっていいものだ。
そして、エリエとミレイニのチームの所でも――。
「ちょっとミレイニなにしてんの! 早くそいつから離れなさい!!」
「嫌だし! こいつは……絶対ゲットするし!」
暴れる大きな漆黒の狼の背中にがっしりとしがみついているミレイニ。
エリエは跳び回り走り回ったりして暴れる漆黒の毛並みの狼に、威嚇する様にレイピアを向けている。もしもミレイニが背中から振り落とされれば、エリエはなんの躊躇もなく攻撃するだろう。
だが、ミレイニは離れるどころか、まるでロデオの様に巧みに乗りこなしていた。
前にサンショウウオに乗っていたこともあるが、ビーストテイマーだけあって、こういうのには慣れているのかもしれない。
すると、ミレイニの体が黄色い柔らかな光を放ち波紋のように広がり、徐々に暴れていた狼が大人しくなっていく。そして完全に暴れるのを止めた頃には、攻撃的だった赤いその瞳が優しいものへと変わる。
「――よう、ギルマス。まだスキルは使用してないようだな」
「当然だ。儂のスキルは使用するとHPの回復ができない上に、24時間の使用制限が掛かってしまうからな」
それを聞いたメルディウスがニヤリと不敵な笑みを浮かべ、ベルセルクを肩に担ぐ。
マスターが不機嫌そうに目を細めている。
「いや、別にバカにしてるわけじゃない。ただ、化け物レベルのアンタでも。さすがに、この量を相手にするのはHPを回復せざるを得ないんだと思ってよ。安心しただけだ」
「ふん。ただの保険だ……」
「……だろうな」
互いにそう呟いて笑うと、会話をしているのにも構うことなく向かってくる敵を次から次へと打ちのめしていく。
向かってくる敵の勢いが少なくなると、マスターが徐に口を開いた。
「――ルシファーが消えた直後。すでに第二陣の者達には救援の要請を出している! もうしばらく持ち堪えれば援軍も来る!」
「ほう。それは嬉しいねぇー。さすがにこの数を相手に、制圧戦は厳しいからな!」
突如駆け出したメルディウスが、ベルセルクを振り回して敵を無差別に斬り伏せていく。マスターもそれに負けじと、目の前の敵を次々に殴り倒す。
2人を取り巻くように、キラキラと粒子状になった元々モンスターだったものが舞い上がり、彼等の周りがまるで別のゲームのような幻想的な世界へと変わっていた。
最初からこの作戦自体、ボスを撃破することを目的にしていた為、救援が来るまでの間。各自の判断で生き残らなければならなかった。
もちろん。突然戦線に入ってきたミレイニ意外の皆がそのことを了解した上での作戦だったのだが、さすがに休みなく襲い掛かってくる数万のモンスターを個人が撃破し続けるのにも限度はある。
モンスターは疲労せずいくらでも代えが利くが、プレイヤーは負傷も疲労もするし、アイテムにも限りもあるのだ。各自ボスとの戦闘を終えたメンバー達がそれほど長い間、凌げる力が残っているはずがない。だが、そんな心配もすぐに無駄になることになる……。
モンスターに囲まれた遥か先に、馬に乗って武装したプレイヤーの波が押し寄せてくるのが見えた。
砂煙を上げて滑走してくる馬の大群が徐々に消え、プレイヤー達がモンスターの大群に得物を振りかざしてぶつかっていく。
辺りにプレイヤーの怒号とモンスター達の断末魔が響き渡り。今までは強気に飛び掛かってきたモンスター達も援軍の数に恐れをなしたのか、大した抵抗も見せずに意外なほど呆気なく背を向けて後方へと撤退を開始した。
突如、戦意を失い撤退を開始した敵にメルディウスが歓喜する横で、マスターだけはその行動に不審そうに眉をひそめていた。
そのモンスターの行動は他のメンバー達の所でも同じだった。
デイビッドとカレンの所では――。
「デイビッドさん。見てください! 敵が逃げていきますよ!」
「ああ、やっと終わったのか…………はぁ~」
情けないほどのため息をついて、倒れるように地面に寝転がる。しかし、それはカレンも同じようで、大きなため息を漏らしてその場に座り込んだ。
2人共多くのモンスターを相手にして、相当気を張っていたのだろう。そんな時、後方に退いていく敵を見つめ、カレンが不思議そうに首を傾げた。
「でも、どうして逃げるんでしょうね」
「ん? そんなのこっちの味方が来たからじゃない? ほら、エミルがルシファーを倒したからね!」
「……そうですね。師匠が何かしたのかもしれないですし!」
カレンは満面の笑みで頷くと、デイビッドも力強く頷き返した。
そこにネオと小虎が叫び声を上げながら、逃げる敵を斬り付け進んでいくのが見えた。その後ろを他のプレイヤーも血眼になって敵を追い回し撃破している。
逃げる数万の敵二千足らずのプレイヤーが追い掛け回す構図は、何とも夢があっていいものだ。
そして、エリエとミレイニのチームの所でも――。
「ちょっとミレイニなにしてんの! 早くそいつから離れなさい!!」
「嫌だし! こいつは……絶対ゲットするし!」
暴れる大きな漆黒の狼の背中にがっしりとしがみついているミレイニ。
エリエは跳び回り走り回ったりして暴れる漆黒の毛並みの狼に、威嚇する様にレイピアを向けている。もしもミレイニが背中から振り落とされれば、エリエはなんの躊躇もなく攻撃するだろう。
だが、ミレイニは離れるどころか、まるでロデオの様に巧みに乗りこなしていた。
前にサンショウウオに乗っていたこともあるが、ビーストテイマーだけあって、こういうのには慣れているのかもしれない。
すると、ミレイニの体が黄色い柔らかな光を放ち波紋のように広がり、徐々に暴れていた狼が大人しくなっていく。そして完全に暴れるのを止めた頃には、攻撃的だった赤いその瞳が優しいものへと変わる。
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