オンライン・メモリーズ ~VRMMOの世界に閉じ込められた。内気な小学生の女の子が頑張るダークファンタジー~

北条氏成

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覆面の下の企み2

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 マスターの瞳の奥にある炎の様に燃えたぎる信念が、彼の言葉を更に強く拒めないものにしていた。 

「……ギルマス。分かった。だが、ビッグバンは最終手段だ。俺はあんたを死なせるつもりはねぇーからな!」

 そう告げると、アイテムの中からメルディウスは酒瓶を取り出す。

 それをマスターの盃に注ぐと、すぐに自分の方の盃にも注いでマスターの前に突き出す。
 
「水盃なんて縁起でもねぇー!! こいつで飲み直しだ! 嫌でも付き合ってもらうぜ! ギルマス!」
「ああ、付き合おう!」

 メルディウスとマスターは互いに笑みを浮かべ、酒を同時に呷って盃を酌み交わした。

 夜空に輝く月を肴に2人は落ち着いた雰囲気で、互いに言葉少なく盃を呑み干しては注ぐということを繰り返す。
 その間に言葉は殆ど交わさなかったが、彼等には言葉以上に分かり合えているのだろう。互いに笑みを浮かべながら夜空を見上げていた。


              * * *


 何度もミノタウロスに斬り掛かっては、ベルセルクの爆風で吹き飛ばされる繰り返しを重ねていたメルディウス。

 しかし、その度重なる攻撃で得た成果は十分にあった……。

 まだ綺麗な金色のままのベルセルクと違い。ミノタウロスの持っていた大斧は刃先が少し欠けている。まあ、あれだけの爆発を刃で受けていれば、武器の耐久力が落ちてくるのも仕方がない。
  
 だが、どうしてメルディウスのベルセルクは大丈夫かと言うと、それは至ってシンプルな理由で、彼のベルセルクはトレジャーアイテムだからだ。
 トレジャーアイテムは特定のダンジョンなど、期間限定でしか入手できない為、通常武器よりも耐久値が高め設定されている。その代わりに修理費も大きい……。

 そしてミノタウロスが使っている武器は市販の物ではない――その為、制作に使用した素材の質などが影響しているのだろう。
 まあ、他の街にも派遣している数十万の部隊に同じ武器を持たせているとなると、入手が容易な素材を使用していると見てまず間違いない。

 メルディウスがベルセルクを構え直して渾身の力で振り抜くと、それを受け止めたミノタウロスの大斧が砕け散る。

「これで終わりだな!」

 丸腰になったミノタウロスが威嚇のつもりなのか、咆哮を上げたがメルディウスには効果がない。

 空中でベルセルクを大きく振り上げ、ミノタウロスの首筋に炸裂し爆発を起こす。
 その勢いを利用し刃を反転させると、大人の身長ほどもあるその大きな刃が反対側の首筋に突き刺さる。

「――わりぃーな。俺達のギルマスを……死なせるわけにはいかねぇーんだよ!!」

 ミノタウロスの首を切り落として、地面に着地すると冷たい目で光になって空へと上がっていくミノタウロスを一瞥して、ベルセルクを肩に担いで走り出す。

 前を立ち塞がる様に向かってくるモンスター達にベルセルクを振り下ろし、爆風で吹き飛ばしつつ、森の中を突っ切ってマスターのいる場所を目指し突き進んでいく。

 空中でルシファーと幾度となく剣を打ち合わせる中、地上では立ったまま動かないエミルとイシェルに向かって、次々に襲い掛かってくるモンスター達に巫女服を纏ったイシェルが神楽鈴を鳴らす。

 その直後、突風が吹き荒れモンスター達を、原形を留めないほどに細切れに引き裂いていく。
 巫女という神々しい存在にも関わらず、イシェルはモンスター達に全くの感情のない冷酷な眼差しを向けて、ただただ作業の様に淡々と神楽鈴を振る。

 モンスター達は為す術なく断末魔の叫びを上げ、光となって天に吸い込まれていく様に上がって逝った。

 淡々とした戦闘をしている地上と違い。上空では激しい攻防が繰り広げていた。
 翼を大きくはためかせながら、2体の巨大な堕天使と竜人が空中で激しく両手に持った剣を打ち合わせる。

 っと突如距離を取ったルシファーが翼を大きく広げ、漆黒の羽根をリントヴルム目掛けて放つ。
 それをリントヴルムZWEIが口から噴射した炎で焼き払う。しかし、無数にホーミングしてくる羽根を落としきれない。あぶれた羽根は即座にリントヴルムの持つ剣が叩き落とす。

 それでも落とせない分は、そのダイヤモンドの体で受け止めた。いくらダイヤモンドと言えど、HPが無限な訳ではない――ダメージカットは目を見張るものがあるが、ただそれだけである。結局はダメージの軽減しかできないのが現実だ。

 HPが減少する中、リントヴルムZWEIがルシファーに炎を吐き出す。ルシファーはそれを剣で受けるが、防ぎきれずに漏れ出た炎でHPが減少する。

 HPはリントヴルムZWEIのダイヤモンドの体を考慮しても、ほぼ互角――互いに一歩も引かないルシファーとリントヴルムは空中で幾度となく体制を入れ替えながら激しくぶつかり合う。
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