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エルフの男と触手の大樹3
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それも全ては弱いままの自分を、少しでも変えられると信じての行動だった。
固有スキルに頼らずエミルやマスター達のような自分の力だけで戦えれば、きっとあの夜のような不測の事態にも皆を守ることができる。
架空の敵を想定しながら練習に打ち込む星の胸の奥底には、いつかきっとエミルと肩を並べて戦えるという希望に溢れていた。
その時、突然近くの茂みからゴソゴソと何か動く物音が聞こえてきて、ビクッと体を震わせると剣を振る手が止まる。
レイニールのいたずらだと思い、さっきまでレイニールの寝ていた木の枝の所を見遣った。するとそこには、レイニールがまだ気持ち良さそうに寝息を立てながら手でお腹の辺りを掻いていた。
星の背筋に悪寒が走り、全身の毛が逆立つ感覚に襲われる。星は木の剣を握り締め、物音のした場所へとゆっくりと近付いていく。
腰が引けながらもそーっと茂みの上を覗き込むと、そこには蛇の尻尾の様なものがウネウネと動いていた。
よく見ると、表面は何やらヌルヌルとしてテカテカと光る液体が浮き出しているようにも見える。しかし、それだけの情報では、まだモンスターかまでは分からない。
(……なんだろう。これ……木の根っこのような。蛇の尻尾のような……)
じっとウネウネと動くその得体の知れない物体を凝視していると、突然なにかに体を勢い良く引っ張られた。
「きゃあああああああッ!!」
なおもズルズルと引っ張られる足に目を向けると、星の右足に太いロープの様な何かが巻きついている。よく見るとロープの様な表面から、ヌルヌルとした液体が大量に湧き出してきた。
しかし、星の体を捕らえて放さない部分には、ヌルヌルとした液体は分泌されておらず。逆に服に引っ掛かるような細かい反しびっしりと付いていた。
子供ならでは好奇心を抑えられなかったのだろう。こういうとことは年相応と言ったところなのだろうが、今はそれが裏目に働いてしまっている。それはさっき、星が見た根っこの様な得体の知れない何かだった。
(……やられた! 調べてないで、早くこの場所から離れれば良かった)
今更ながらに後悔していると、さっきの星の悲鳴を聞きつけたレイニールが急いで星の元に急行してきた。
「レイ! こっちに来ちゃダメ! 戻ってエリエさんにこの事を教えて!!」
星のまさかの言葉に、レイニールは躊躇するように空中で止まる。
「――だ、だが……主はどうするのじゃ?」
「……私は私でなんとかするから、レイは早く戻って!」
だが、星がそう叫ぶと、手に持っていた木の剣で足に絡まったものを叩く。
しかし、足に絡みつく木の根の様な何かは、弾力性が強いのか表面のヌメリで力が流されるからかは分からないが、表面に傷一つ付く気配すらない。
そんな中、空中でどうすればいいのか分からずに、困惑した様子でいるレイニールに星がもう一度大きく叫んだ。
「レイ。早く行って!!」
「う、うむ……」
レイニールは星の命令に渋々その場を後にする。星はその後ろ姿を見て、微かに微笑みを浮かべた。
おそらく。レイニールがエリエを連れて戻って来る時には、もう間に合わないことは星にも容易に想像できた。
「少し、レイに強く言いすぎたかな……」
小さく星が呟く。だが、こうでもしないとレイニールのことだ。きっと助けようと近付いてくるのは分かっていたし、どこから飛び出したのかも分からない得体の知れないこの物体に巻き込まれていたかもしれない。
そう考えると『自分の判断は正しかったのだ』と首を振って、不安になる自分に言い聞かせた。
しかし、レイニールを逃したところで、この危機的状況を打開する根本的な解決にはならない。まずは自分の足に絡みついたこのヌルヌルとした木の根の様な何かを取り払って逃げなければどうしようもないのだから……。
星は木の剣を投げ捨てると、コマンドを操作して練習前にアイテムの中にしまってあるはずのエクスカリバーを探す。
指を動かしてアイテムの項目を下にドラッグすると、すぐにエクスカリバーを発見することができた。
まあ、星のアイテムの項目に入っているものは初期装備と、エミルに渡された回復用のヒールストーンや財布などの少量のアイテムだけで、幸い必要なアイテムを探すのは容易なのだ。
これは星が思い付いたわけではなく、エミルの案だった。以前、寝る前にそれとなく言われたのが「アイテム内はなるべく整理しておいた方が後で色々楽になるわよ」と言われていた。
その時は「でも、たくさん入っていた方が困った時にいいんじゃ……」と反論したのだが、エミルは微笑みながら「その時になれば、きっと分かるわ」とだけ言って上手くあしらわれてしまったのだが。
固有スキルに頼らずエミルやマスター達のような自分の力だけで戦えれば、きっとあの夜のような不測の事態にも皆を守ることができる。
架空の敵を想定しながら練習に打ち込む星の胸の奥底には、いつかきっとエミルと肩を並べて戦えるという希望に溢れていた。
その時、突然近くの茂みからゴソゴソと何か動く物音が聞こえてきて、ビクッと体を震わせると剣を振る手が止まる。
レイニールのいたずらだと思い、さっきまでレイニールの寝ていた木の枝の所を見遣った。するとそこには、レイニールがまだ気持ち良さそうに寝息を立てながら手でお腹の辺りを掻いていた。
星の背筋に悪寒が走り、全身の毛が逆立つ感覚に襲われる。星は木の剣を握り締め、物音のした場所へとゆっくりと近付いていく。
腰が引けながらもそーっと茂みの上を覗き込むと、そこには蛇の尻尾の様なものがウネウネと動いていた。
よく見ると、表面は何やらヌルヌルとしてテカテカと光る液体が浮き出しているようにも見える。しかし、それだけの情報では、まだモンスターかまでは分からない。
(……なんだろう。これ……木の根っこのような。蛇の尻尾のような……)
じっとウネウネと動くその得体の知れない物体を凝視していると、突然なにかに体を勢い良く引っ張られた。
「きゃあああああああッ!!」
なおもズルズルと引っ張られる足に目を向けると、星の右足に太いロープの様な何かが巻きついている。よく見るとロープの様な表面から、ヌルヌルとした液体が大量に湧き出してきた。
しかし、星の体を捕らえて放さない部分には、ヌルヌルとした液体は分泌されておらず。逆に服に引っ掛かるような細かい反しびっしりと付いていた。
子供ならでは好奇心を抑えられなかったのだろう。こういうとことは年相応と言ったところなのだろうが、今はそれが裏目に働いてしまっている。それはさっき、星が見た根っこの様な得体の知れない何かだった。
(……やられた! 調べてないで、早くこの場所から離れれば良かった)
今更ながらに後悔していると、さっきの星の悲鳴を聞きつけたレイニールが急いで星の元に急行してきた。
「レイ! こっちに来ちゃダメ! 戻ってエリエさんにこの事を教えて!!」
星のまさかの言葉に、レイニールは躊躇するように空中で止まる。
「――だ、だが……主はどうするのじゃ?」
「……私は私でなんとかするから、レイは早く戻って!」
だが、星がそう叫ぶと、手に持っていた木の剣で足に絡まったものを叩く。
しかし、足に絡みつく木の根の様な何かは、弾力性が強いのか表面のヌメリで力が流されるからかは分からないが、表面に傷一つ付く気配すらない。
そんな中、空中でどうすればいいのか分からずに、困惑した様子でいるレイニールに星がもう一度大きく叫んだ。
「レイ。早く行って!!」
「う、うむ……」
レイニールは星の命令に渋々その場を後にする。星はその後ろ姿を見て、微かに微笑みを浮かべた。
おそらく。レイニールがエリエを連れて戻って来る時には、もう間に合わないことは星にも容易に想像できた。
「少し、レイに強く言いすぎたかな……」
小さく星が呟く。だが、こうでもしないとレイニールのことだ。きっと助けようと近付いてくるのは分かっていたし、どこから飛び出したのかも分からない得体の知れないこの物体に巻き込まれていたかもしれない。
そう考えると『自分の判断は正しかったのだ』と首を振って、不安になる自分に言い聞かせた。
しかし、レイニールを逃したところで、この危機的状況を打開する根本的な解決にはならない。まずは自分の足に絡みついたこのヌルヌルとした木の根の様な何かを取り払って逃げなければどうしようもないのだから……。
星は木の剣を投げ捨てると、コマンドを操作して練習前にアイテムの中にしまってあるはずのエクスカリバーを探す。
指を動かしてアイテムの項目を下にドラッグすると、すぐにエクスカリバーを発見することができた。
まあ、星のアイテムの項目に入っているものは初期装備と、エミルに渡された回復用のヒールストーンや財布などの少量のアイテムだけで、幸い必要なアイテムを探すのは容易なのだ。
これは星が思い付いたわけではなく、エミルの案だった。以前、寝る前にそれとなく言われたのが「アイテム内はなるべく整理しておいた方が後で色々楽になるわよ」と言われていた。
その時は「でも、たくさん入っていた方が困った時にいいんじゃ……」と反論したのだが、エミルは微笑みながら「その時になれば、きっと分かるわ」とだけ言って上手くあしらわれてしまったのだが。
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