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決戦に備えて2
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エミルは逃げていく彼等に脇目も振らず、顎に手を当て思考を回す。
彼等の言ったことが本当なら、容姿から見て間違いなく星だろう。だが、だとしてもその目撃場所が複数あったというのは不可解である。
昨晩、間違いなく星はエミルの目の前にいた。地面に崩れ落ちた星を抱きしめた時の温かい感覚が、未だにエミルの手にはしっかりと残っている。しかし、一番理解し難いのは、星を目撃した場所が複数あるということだろう。
さっきの男の慌て方から見て、彼は嘘を付いていたとは考え難い。
もし、その全てが本当の星だとしたら、彼女の固有スキルにまだ隠された何かがあるということなのか。
難しい顔で首を捻っていると、そこにイシェルが声を掛けてきた。
「――どないしたん? エミル。また怖い顔になっとるよ?」
「えっ? ううん。ちょっとね」
咄嗟に言葉を濁すエミルに、イシェルは不満そうに頬を膨らませている。だが、イシェルの性格を知っているエミルとしては、星のことを彼女に相談しても、それこそ無駄だと分かっていた。
結局のところ、イシェルに相談事をすると「エミルの思う通りにしたらええよ。どんな時も、うちはエミルの味方やよ~」と微笑み返されてしまうだけなのだ。しかも、実際に彼女はその言葉通りに動くから困ったものだ――。
その時、少し後ろを歩いてきていたフィリスが小声で訴えかけてくる。
「……あの、早く終わらせて戻りませんか? 私、この雰囲気に耐えられなくて……」
フィリスは不安そうな表情で辺りをきょろきょろと見ている。
まあ、無理もないだろう。装備品以外殆ど全てを部屋に置いてきたのだ、そんな状況下で不安にならない方がおかしい。
街の雰囲気もぎくしゃくしていて、正直なところエミルもあまり長居をしたい心境ではなかった。
「そうね。早く終わらせましょう!」
にっこりと微笑みエミルがそうフィリスに告げると、フィリスも満面の笑顔でそれに応えた。
エミル達は大通りを歩くと、ダイアモンドを象った看板の店が見えてきた。
それはどう考えても宝石店にしか見えないのだが、この世界ではここが回復アイテムなどを置いているショップなのだ。
このゲームの回復アイテムは輝く宝石を模していて、使用するとその光が失われただの石へと変わる。という設定になっていた。要するに木を狩るなら森、宝石を買うなら宝石店というわけだ――。
店の中に入ると、ショウケースの中にはHPを回復させるヒールストーンや異常状態を回復させるリカバリーストーン。
他にも、半分の確率で敵を異常状態にする宝石。敵を痺れ状態にするライトニングストーン。敵をやけど状態にするファイアーストーン。敵を毒状態にするポイズンストーンなどがあるのだが、これらのストーン類はあまりというか殆ど使用する人がいない。
何故なら成功確率50%という曖昧な確率で、モンスターのレベルによっては効果時間が10秒にも満たないというアイテムだったからだ――。
これなら、毒などの異常状態ポーションと武器を合成して作った武器の方が確率100%で対人戦でも使用できる為、こっちの方が重宝されている。とはいえ、魔法のないこの世界では回復方法と言ったら、ヒールストーンを使うか宿屋に泊まるか、ゲーム開始時に用意されているマイハウスに泊まるかしかない。
負傷した場合は後のHP減少率に影響をきたす為、宿屋に泊まるのが一般的なセオリーだが、HP回復と疲労程度ならマイハウスやその場で使えるヒールストーンが一般的だ。が、かと言って疲労していても相当ではない限り、視界と意識の混濁が起こるだけで気絶するまではいかない。
気絶するのはダメージの許容範囲をオーバーするか、過度に精神に負担が掛かった場合にシステムが自動で判断しプレイヤーの負担を軽減させる目的があるのだ。
年配のスーツの女性がショーケースの前まで歩いていくと「ご注文をどうぞ」と尋ねてきた。そう。彼女はNPCなのだ。だからこそ、システム以上のことは発言も行動もしない。
普段は何も感じないのだが、こういう街の治安が悪化し、鬼気迫る状況下では不思議な安心感がある。それは彼女達NPCを見ていると、この世界がゲームであることを実感できるからかもしれない。特にこの地獄の様な状況下では尚更だ……。
それぞれアイテム欄いっぱいまでヒールストーンとリカバリーストーンを買い込むと、街の端に待機させていたリントヴルムで一度城に戻り。アイテムを部屋に置いてくると、再び店に戻ってを結局4回ほど繰りかえした。
その往復を繰り返し。終える頃には、マスター以外の3人はぐったりしていた。
ソファー倒れ込むようにして凭れ掛かっているエミル達を見て、ミレイニが複雑そうな顔をしながら。
「――こんな風になるなら、行かなくて良かったし」
顔を引き攣らせ、ミレイニが小さな声でぼそっと呟く。
まあ、普通に運んでいればこんなふうにはならないのだが、彼女達は気まずい雰囲気の流れる街の中を全力疾走しながら作業を行っていた。
だが、こうしてのんびりもしていられない。何故なら、今時計の針は6時を指していた。そう、この後メッセージであった8時に、広場のモニター前にいかなければならないからだ――。
彼等の言ったことが本当なら、容姿から見て間違いなく星だろう。だが、だとしてもその目撃場所が複数あったというのは不可解である。
昨晩、間違いなく星はエミルの目の前にいた。地面に崩れ落ちた星を抱きしめた時の温かい感覚が、未だにエミルの手にはしっかりと残っている。しかし、一番理解し難いのは、星を目撃した場所が複数あるということだろう。
さっきの男の慌て方から見て、彼は嘘を付いていたとは考え難い。
もし、その全てが本当の星だとしたら、彼女の固有スキルにまだ隠された何かがあるということなのか。
難しい顔で首を捻っていると、そこにイシェルが声を掛けてきた。
「――どないしたん? エミル。また怖い顔になっとるよ?」
「えっ? ううん。ちょっとね」
咄嗟に言葉を濁すエミルに、イシェルは不満そうに頬を膨らませている。だが、イシェルの性格を知っているエミルとしては、星のことを彼女に相談しても、それこそ無駄だと分かっていた。
結局のところ、イシェルに相談事をすると「エミルの思う通りにしたらええよ。どんな時も、うちはエミルの味方やよ~」と微笑み返されてしまうだけなのだ。しかも、実際に彼女はその言葉通りに動くから困ったものだ――。
その時、少し後ろを歩いてきていたフィリスが小声で訴えかけてくる。
「……あの、早く終わらせて戻りませんか? 私、この雰囲気に耐えられなくて……」
フィリスは不安そうな表情で辺りをきょろきょろと見ている。
まあ、無理もないだろう。装備品以外殆ど全てを部屋に置いてきたのだ、そんな状況下で不安にならない方がおかしい。
街の雰囲気もぎくしゃくしていて、正直なところエミルもあまり長居をしたい心境ではなかった。
「そうね。早く終わらせましょう!」
にっこりと微笑みエミルがそうフィリスに告げると、フィリスも満面の笑顔でそれに応えた。
エミル達は大通りを歩くと、ダイアモンドを象った看板の店が見えてきた。
それはどう考えても宝石店にしか見えないのだが、この世界ではここが回復アイテムなどを置いているショップなのだ。
このゲームの回復アイテムは輝く宝石を模していて、使用するとその光が失われただの石へと変わる。という設定になっていた。要するに木を狩るなら森、宝石を買うなら宝石店というわけだ――。
店の中に入ると、ショウケースの中にはHPを回復させるヒールストーンや異常状態を回復させるリカバリーストーン。
他にも、半分の確率で敵を異常状態にする宝石。敵を痺れ状態にするライトニングストーン。敵をやけど状態にするファイアーストーン。敵を毒状態にするポイズンストーンなどがあるのだが、これらのストーン類はあまりというか殆ど使用する人がいない。
何故なら成功確率50%という曖昧な確率で、モンスターのレベルによっては効果時間が10秒にも満たないというアイテムだったからだ――。
これなら、毒などの異常状態ポーションと武器を合成して作った武器の方が確率100%で対人戦でも使用できる為、こっちの方が重宝されている。とはいえ、魔法のないこの世界では回復方法と言ったら、ヒールストーンを使うか宿屋に泊まるか、ゲーム開始時に用意されているマイハウスに泊まるかしかない。
負傷した場合は後のHP減少率に影響をきたす為、宿屋に泊まるのが一般的なセオリーだが、HP回復と疲労程度ならマイハウスやその場で使えるヒールストーンが一般的だ。が、かと言って疲労していても相当ではない限り、視界と意識の混濁が起こるだけで気絶するまではいかない。
気絶するのはダメージの許容範囲をオーバーするか、過度に精神に負担が掛かった場合にシステムが自動で判断しプレイヤーの負担を軽減させる目的があるのだ。
年配のスーツの女性がショーケースの前まで歩いていくと「ご注文をどうぞ」と尋ねてきた。そう。彼女はNPCなのだ。だからこそ、システム以上のことは発言も行動もしない。
普段は何も感じないのだが、こういう街の治安が悪化し、鬼気迫る状況下では不思議な安心感がある。それは彼女達NPCを見ていると、この世界がゲームであることを実感できるからかもしれない。特にこの地獄の様な状況下では尚更だ……。
それぞれアイテム欄いっぱいまでヒールストーンとリカバリーストーンを買い込むと、街の端に待機させていたリントヴルムで一度城に戻り。アイテムを部屋に置いてくると、再び店に戻ってを結局4回ほど繰りかえした。
その往復を繰り返し。終える頃には、マスター以外の3人はぐったりしていた。
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だが、こうしてのんびりもしていられない。何故なら、今時計の針は6時を指していた。そう、この後メッセージであった8時に、広場のモニター前にいかなければならないからだ――。
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