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未知なる力の解放3
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次第に光が収まり剣が元の大きさに戻ると、ライラから貰い胸元に下げていた鳩のネックレスが粉々に砕け散った。
星が技を使う前に街中で響いていた悲鳴と怒号がぱったりと止み、街は何事もなかったかの様に静寂に包まれた。その場に立ち尽くしていた星が、全力を使い果たしその場に倒れた。
突如倒れた星に、エミルが慌てて駆け寄っていく。
倒れた星を抱き起こすと、星はやりきった様な表情のまま気持ち良さそうに寝息を立てているその顔を見て、エミルは思わず微笑んだ。
「……全く。なんだかんだ言ったってまだまだ子供ね。こんな状況下で寝れるなんて」
そう呟いたエミルの元にマスターからのメッセージが届く。
視界に映し出されたメッセージを見て、エミルは首を傾げた。
マスターからのメッセージの内容は『自分を含めたプレイヤーの能力値が『1』の値を示していて、上下しない。そして街で暴れていたプレイヤーの手にしていた村正が突如砕け散って消えた』ということが書かれていた。
それから数時間後。深い闇に覆われていた空が明るくなってきた頃には、街の騒ぎも収まりを見せた。
薄っすらと朝霧の掛かる静まり返った街の中は、惨劇を物語る荒んだ風景にさながら地獄の一丁目と言ったところだろうか……。
この事件の傷跡は大きく、仲間を失ったプレイヤー達は思い思いに仲間の死を嘆いていた。
静まり返った街はまるでお通夜のようだった。そんな中、エミルは眠ってしまった星を抱きかかえてマスター達と合流する。
メッセージでも良かったのだが、街がこんな状況では実際に自分の目で安否を確認しなければ、安心できないと思ったのが大きいだろう。それともう一つ。エミルには、マスターに会って直接確認しなければならないことがあったのだ。
エミルがマスターの元に着いた時には、彼は忙しなく事後の処理に追われていた。
強制的にPVPに入ってしまっている者達の任意解除や、恐怖や悲しみに打ちひしがれている者達の安全な場所への移動など、事件が終わってもやらなければならないことは山積みなのだ。
そして、いつの間にかダークブレットのメンバーも僅かだが、その手伝いに参加していた。
ほとぼりが冷めてからやってくるというところが彼等らしいと言えばらしいのだが、それでも実際に戦っていたエミルは、何かやるせない気持ちになるのは仕方のないことなのかもしれない。
何と言っても戦闘中は雲隠れし、安全になったことを確認してから始めて参加してくるというのは、やはりあまりいい気はしないのは事実だ。
まあ、命が掛かっているからこその行動なのだろうが、彼等の人数も加われば犠牲にならずに済んだ者も多くいただろうという思いがどうしても出てきてしまう。だが、今はそんなことよりももっと重要なことがある。
「マスター」
「おお、エミルか!」
事後処理をしていて、険しい表情をしていたマスターの表情が彼女を見て微かに和らぐ。
エミルは微笑みを浮かべ、事の真相をマスターに尋ねた。
「先程のメッセージの内容を、詳しく教えてくれませんか?」
そう、エミルは目の前で星の剣が巨大な光の剣と変わり、その光が街全体に広がっていってこの暴動が収まった――それに何らかの因果関係があるのか、ないのかを確認しておかなければならない。
少し驚いたような表情を見せたマスターだったが、エミルの腕に抱かれ眠っている星を見て静かに頷く。
「うむ。だが、メッセージの通りだ。儂はカレンと共にこの場に戻って来た時には、すでに戦闘は終了していた。HPは『1』で固定され、しばらくして『村正』も消滅したのだ。詳しくと言われても、何が起きたのか儂も聞きたいくらいだ」
「……そうですか」
がっかりした様子で肩を落とすエミル。
マスターは横目でチラッと星を見て怪訝な顔をすると、徐にエミルに告げる。
「――まあ、こちらはもうなんとかなる。お前達は早めに城に戻っているといい」
「えっ? あ、はい。ありがとうございます」
彼の言葉に一瞬以外そうな表情をしたが、エミルは軽くお辞儀をしてその場を後にした。
去っていくエミル達を見つめ、マスターが目を細める。
「――あの娘の固有スキル。相当な可能性を秘めているようだな……」
その時のマスターは星から微かに湧き上がる金色のオーラが、目に見える気がした。
マスター達と別れてリントヴルムの背に揺られ、日の光で赤らめ始めた空を飛んでいると、ふとエミルがレイニールに尋ねる。
「レイちゃんは、星ちゃんのどんな事が好き?」
「そんなの、全部に決まっているのじゃ!」
突拍子もないその問いに、レイニールは迷う素振りも見せず即答した。まあ、レイニールがそう答えるのはなんとなく予想できていたことだ――。
星が技を使う前に街中で響いていた悲鳴と怒号がぱったりと止み、街は何事もなかったかの様に静寂に包まれた。その場に立ち尽くしていた星が、全力を使い果たしその場に倒れた。
突如倒れた星に、エミルが慌てて駆け寄っていく。
倒れた星を抱き起こすと、星はやりきった様な表情のまま気持ち良さそうに寝息を立てているその顔を見て、エミルは思わず微笑んだ。
「……全く。なんだかんだ言ったってまだまだ子供ね。こんな状況下で寝れるなんて」
そう呟いたエミルの元にマスターからのメッセージが届く。
視界に映し出されたメッセージを見て、エミルは首を傾げた。
マスターからのメッセージの内容は『自分を含めたプレイヤーの能力値が『1』の値を示していて、上下しない。そして街で暴れていたプレイヤーの手にしていた村正が突如砕け散って消えた』ということが書かれていた。
それから数時間後。深い闇に覆われていた空が明るくなってきた頃には、街の騒ぎも収まりを見せた。
薄っすらと朝霧の掛かる静まり返った街の中は、惨劇を物語る荒んだ風景にさながら地獄の一丁目と言ったところだろうか……。
この事件の傷跡は大きく、仲間を失ったプレイヤー達は思い思いに仲間の死を嘆いていた。
静まり返った街はまるでお通夜のようだった。そんな中、エミルは眠ってしまった星を抱きかかえてマスター達と合流する。
メッセージでも良かったのだが、街がこんな状況では実際に自分の目で安否を確認しなければ、安心できないと思ったのが大きいだろう。それともう一つ。エミルには、マスターに会って直接確認しなければならないことがあったのだ。
エミルがマスターの元に着いた時には、彼は忙しなく事後の処理に追われていた。
強制的にPVPに入ってしまっている者達の任意解除や、恐怖や悲しみに打ちひしがれている者達の安全な場所への移動など、事件が終わってもやらなければならないことは山積みなのだ。
そして、いつの間にかダークブレットのメンバーも僅かだが、その手伝いに参加していた。
ほとぼりが冷めてからやってくるというところが彼等らしいと言えばらしいのだが、それでも実際に戦っていたエミルは、何かやるせない気持ちになるのは仕方のないことなのかもしれない。
何と言っても戦闘中は雲隠れし、安全になったことを確認してから始めて参加してくるというのは、やはりあまりいい気はしないのは事実だ。
まあ、命が掛かっているからこその行動なのだろうが、彼等の人数も加われば犠牲にならずに済んだ者も多くいただろうという思いがどうしても出てきてしまう。だが、今はそんなことよりももっと重要なことがある。
「マスター」
「おお、エミルか!」
事後処理をしていて、険しい表情をしていたマスターの表情が彼女を見て微かに和らぐ。
エミルは微笑みを浮かべ、事の真相をマスターに尋ねた。
「先程のメッセージの内容を、詳しく教えてくれませんか?」
そう、エミルは目の前で星の剣が巨大な光の剣と変わり、その光が街全体に広がっていってこの暴動が収まった――それに何らかの因果関係があるのか、ないのかを確認しておかなければならない。
少し驚いたような表情を見せたマスターだったが、エミルの腕に抱かれ眠っている星を見て静かに頷く。
「うむ。だが、メッセージの通りだ。儂はカレンと共にこの場に戻って来た時には、すでに戦闘は終了していた。HPは『1』で固定され、しばらくして『村正』も消滅したのだ。詳しくと言われても、何が起きたのか儂も聞きたいくらいだ」
「……そうですか」
がっかりした様子で肩を落とすエミル。
マスターは横目でチラッと星を見て怪訝な顔をすると、徐にエミルに告げる。
「――まあ、こちらはもうなんとかなる。お前達は早めに城に戻っているといい」
「えっ? あ、はい。ありがとうございます」
彼の言葉に一瞬以外そうな表情をしたが、エミルは軽くお辞儀をしてその場を後にした。
去っていくエミル達を見つめ、マスターが目を細める。
「――あの娘の固有スキル。相当な可能性を秘めているようだな……」
その時のマスターは星から微かに湧き上がる金色のオーラが、目に見える気がした。
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「そんなの、全部に決まっているのじゃ!」
突拍子もないその問いに、レイニールは迷う素振りも見せず即答した。まあ、レイニールがそう答えるのはなんとなく予想できていたことだ――。
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