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黒い刀と黒い思惑8
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ただでさえ目立つ外見の黄金のドラゴン。熟練のプレイヤーなら、そのドラゴンの技量も大体は窺い知れる。そして何より、自分と同じ固有スキル持ちを鬱陶しく思わない者などいない。
ネットゲームのプレイヤーの中でもMMORPGというジャンルのゲームをプレイしている者は、とにかく特別な武器や装備、スキルなどを所有している愉悦感と劣等感が半端ない。もしオリジナルの武器や防具を持っていようものなら、まるで英雄の様に持てはやされ、更に裏ではそれを嫉んだ者達からの羨望の眼差しが向けられ、最悪の場合は物欲と憎悪に狂った者に襲撃されるなんてことも少なくはないのだ。
しかも、その中でも彼は特殊だ。独占欲と自尊心の塊の様な男だ――しかも、彼は両手の指で数え切れる程度のレアスキルである。飛行スキル持ちとの戦闘を想定に入れている変わった人物だ。
エミルが以前彼にやられた時もそうだったが、本来飛行スキル持ち同士の戦闘など視野に入れていない。飛行スキル持ちのプレイヤーとはそれだけ珍しい存在だと言うことだ――それなのにも関わらず、彼は対ドラゴン用に長いハルバードを準備していた。
それがエミルを意識していたからかは分からないものの。日頃のストーカー紛いの行動と、彼の言動から察するに『誰よりも自分が一番』という思考の持ち主であることは分かる。
そして彼はその中でも筋金入りにプライドが高い。そんな彼がいつ敵に回るかも分からないドラゴンを生かしておくわけがないだろう。
そう考えたら、エミルは身震いするほどの悪寒を感じ、顔を一瞬にて青ざめさせた。
「……星ちゃん」
震えた声で小さく呟くエミル。
そこにドラゴンの背中に仁王立ちしていた影虎が飛び降りて、エミルの背後に着地した。
本来なら、あまり高い場所から飛び降りるとHPが減少して消滅してしまうのだが、どんな仕掛けかは分からないものの彼はHP消費もなくピンピンしている。
だが、今のエミルはそんなことなどどうでもいい。飛び降りて来た彼に剣先を向けると、威圧するように大声で問い質す。
「あなた! 金色のドラゴンを襲ってないわよね!」
睨みつけるその瞳には星の安否を按じているか、涙で滲んでいた。
その瞳を見て、影虎はニヤリと不敵な笑みを浮かべ。
「――そうか……分かったぞ? それは照れ隠しだな! 俺がこうしてお前の窮地に駆けつけたのがそんなに嬉しいのか!」
「いいから答えなさい! 黄金のドラゴンを襲ったの襲ってないのどっちなのよ!!」
全く噛み合わない返答にイライラしながら、彼の眼前に突き付けた刃を更に突き出す。
影虎は口元に笑みを浮かべると。
「なに心配するな! 黄金のドラゴン使いか何か知らないが、俺はお前にしか興味はないぞ。北条!」
「………………」
その屈託のない笑顔に、エミルはどう対応したらいいのか分からずに、あんぐりと口を開けたまま呆然としていた。
だが、その返答でこの男は星に危害を加えていないということが分かっただけで、エミルは内心ほっとする。その時、突如としてエミルの体が後ろに倒された。地面に背中を叩き付けられ、突然のことで驚き抵抗もできなかったエミルがせめてもの抵抗にと影虎を睨みつける。
すると、彼は地面に突き刺さっていたハルバードを引き抜き、素早く円を描くように振った。直後。辺りを取り囲んでいた黒刀を持った者達が悲鳴を上げ、音を立てて吹き飛ぶ。
自分を守るように見せたその流れる様な一連の動作を目の当たりにして、エミルは一瞬胸の鼓動が高まるのを感じた。
だが……。
「――ふふっ、どうだ北条。俺の女にならないか?」
すぐ後に影虎は、したり顔でエミルの顎に手を当て告げる。
そんな彼のドヤ顔を見たら、体の奥底から怒りが沸々と湧き上がってきて。
「……誰があんたみたいなのと!」
エミルは覆い被さっていた足で影虎の体を蹴り飛ばすと、むっとしながら睨み付けビシッと指差しながら言い放つ。
「私はあなたに興味ないわよ! それに私は北条じゃない! 伊勢よ!」
一瞬驚いた表情をした彼だったが、そう言って否定した彼女にすぐに。
「ふっ、なかなか強情な女だ……だが、城も強固な方が落としがいがある。今はダメでもいつか、いつの日か必ず俺の女にしてやろう!」
「――そう。なら、この状況をなんとか打開しないといけないわね……」
彼の言葉を軽く流して、エミルは持っていた剣で影虎の後ろを差し示した。
そこにはたった今影虎のハルバードで斬り伏せられた者達が、HPがなくなった者達もバトルが終了したと同時に全快したHPで次々と起き上がっていた。
確かにこの絶望的な状況を何とかしなければ、彼の目的は決して達成されないのだろう。まあ、この状況を打壊したところで、エミルの心が変わる可能性の方が低いと思うが……。
ネットゲームのプレイヤーの中でもMMORPGというジャンルのゲームをプレイしている者は、とにかく特別な武器や装備、スキルなどを所有している愉悦感と劣等感が半端ない。もしオリジナルの武器や防具を持っていようものなら、まるで英雄の様に持てはやされ、更に裏ではそれを嫉んだ者達からの羨望の眼差しが向けられ、最悪の場合は物欲と憎悪に狂った者に襲撃されるなんてことも少なくはないのだ。
しかも、その中でも彼は特殊だ。独占欲と自尊心の塊の様な男だ――しかも、彼は両手の指で数え切れる程度のレアスキルである。飛行スキル持ちとの戦闘を想定に入れている変わった人物だ。
エミルが以前彼にやられた時もそうだったが、本来飛行スキル持ち同士の戦闘など視野に入れていない。飛行スキル持ちのプレイヤーとはそれだけ珍しい存在だと言うことだ――それなのにも関わらず、彼は対ドラゴン用に長いハルバードを準備していた。
それがエミルを意識していたからかは分からないものの。日頃のストーカー紛いの行動と、彼の言動から察するに『誰よりも自分が一番』という思考の持ち主であることは分かる。
そして彼はその中でも筋金入りにプライドが高い。そんな彼がいつ敵に回るかも分からないドラゴンを生かしておくわけがないだろう。
そう考えたら、エミルは身震いするほどの悪寒を感じ、顔を一瞬にて青ざめさせた。
「……星ちゃん」
震えた声で小さく呟くエミル。
そこにドラゴンの背中に仁王立ちしていた影虎が飛び降りて、エミルの背後に着地した。
本来なら、あまり高い場所から飛び降りるとHPが減少して消滅してしまうのだが、どんな仕掛けかは分からないものの彼はHP消費もなくピンピンしている。
だが、今のエミルはそんなことなどどうでもいい。飛び降りて来た彼に剣先を向けると、威圧するように大声で問い質す。
「あなた! 金色のドラゴンを襲ってないわよね!」
睨みつけるその瞳には星の安否を按じているか、涙で滲んでいた。
その瞳を見て、影虎はニヤリと不敵な笑みを浮かべ。
「――そうか……分かったぞ? それは照れ隠しだな! 俺がこうしてお前の窮地に駆けつけたのがそんなに嬉しいのか!」
「いいから答えなさい! 黄金のドラゴンを襲ったの襲ってないのどっちなのよ!!」
全く噛み合わない返答にイライラしながら、彼の眼前に突き付けた刃を更に突き出す。
影虎は口元に笑みを浮かべると。
「なに心配するな! 黄金のドラゴン使いか何か知らないが、俺はお前にしか興味はないぞ。北条!」
「………………」
その屈託のない笑顔に、エミルはどう対応したらいいのか分からずに、あんぐりと口を開けたまま呆然としていた。
だが、その返答でこの男は星に危害を加えていないということが分かっただけで、エミルは内心ほっとする。その時、突如としてエミルの体が後ろに倒された。地面に背中を叩き付けられ、突然のことで驚き抵抗もできなかったエミルがせめてもの抵抗にと影虎を睨みつける。
すると、彼は地面に突き刺さっていたハルバードを引き抜き、素早く円を描くように振った。直後。辺りを取り囲んでいた黒刀を持った者達が悲鳴を上げ、音を立てて吹き飛ぶ。
自分を守るように見せたその流れる様な一連の動作を目の当たりにして、エミルは一瞬胸の鼓動が高まるのを感じた。
だが……。
「――ふふっ、どうだ北条。俺の女にならないか?」
すぐ後に影虎は、したり顔でエミルの顎に手を当て告げる。
そんな彼のドヤ顔を見たら、体の奥底から怒りが沸々と湧き上がってきて。
「……誰があんたみたいなのと!」
エミルは覆い被さっていた足で影虎の体を蹴り飛ばすと、むっとしながら睨み付けビシッと指差しながら言い放つ。
「私はあなたに興味ないわよ! それに私は北条じゃない! 伊勢よ!」
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「ふっ、なかなか強情な女だ……だが、城も強固な方が落としがいがある。今はダメでもいつか、いつの日か必ず俺の女にしてやろう!」
「――そう。なら、この状況をなんとか打開しないといけないわね……」
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