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黒い刀と黒い思惑4
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星が横目で周囲を見ると、様々な場所で助けを呼ぶ声が聞こえる。その声も何度も頭の中を波紋の様に反響し、星の思考は完全に停止する。
「……誰も死なせない……」
そう口に出した星は、力強く地面を蹴った。
駆け出していく星の体は、一瞬のうちに男と少女の間に割り込み素早く黒刀を弾くと、次の一撃で完全に黒い刀を破壊する。
今日やっていた練習の成果が出た場面と言えるだろう。ガラスが割れるように結晶と化した黒い刀が消えると使い手は我に返って、きょとんとした様子で「俺はどうしてここに?」と呟いている。
だが、星はそんなことなど目に留める様子もなく、即座に次のプレイヤーの救出の為に駆けていく。
更に自分の固有スキルを使用して、速くなったスピードがまた数段と速くなる。
星の固有スキル『ソードマスター』は星専用の武器『エクスカリバー』を使用した時だけ、GM権限のあるプレイヤー管理能力のある『ソードマスターオーバーレイ』へと進化する。元々は使用する剣の能力を引き出す程度でしかない。
いつも側を飛び回っているレイニールも、元は『竜王の剣』というレア装備でしかなかった。だが、武器に固執した能力であるのは言うまでもない。
使用する武器によって様々なスキルを使用することができる反面、ライラの『テレポート』やエリエの『神速』と言った固有スキルとは違い。武器がなくなると、スキルの使用ができないというデメリットもある。
そして今の彼女の固有スキルの能力は謎の聖剣『エクスカリバー』の敵の能力値を全て『1』に変更し、己の能力に添加する能力――それは相手の敏捷や筋力のステータスも含まれていた。
強いて言うなら、今の彼女はスキルを使用すればするほど、能力を倍加させていくのだ――。
ほぼテレポートに近い速度まで上昇した俊敏性をフル活用して、星は即座に近くにいた5人の妖刀を文字通り塵に変えていく。
星の姿が現れた直後に鳴り響く金属音と、それが砕け散った時のバキーンという破裂音が交互に襲う。
驚きを隠せないという顔で呆然と星の姿を見ていたレイニール。
だがその直後、再び走り出そうとした星の体が、倒れる瞬間に手を地面に突くこともなくドサッと力無く地面にうつ伏せに倒れる。
「――ッ!? 主!!」
何が起きたのか分からないまま、レイニールは咄嗟に倒れた星の方に飛んでいくと、倒れている星の顔の近くに降り立つ。
地面に倒れ込んだままの星は荒い息を繰り返し、とても苦しそうだ。
「主、大丈夫か!?」
「はぁ……はぁ……だ、だいじょう……ぶ。ちょっと、転んだだけだから……」
そう呟き、のっそりと起き上がる星の顔を、レイニールは心配そうな表情で見上げていた。
星は今にも泣き出しそうな瞳で自分を見つめているレイニールに微笑む。だが、その顔からは滝の様に滴り落ちる汗が流れている。
「大丈夫だよ……でも、この事は、エミルさんには内緒にね……心配すると、だめだから……」
「……主」
汗を滲ませ辛そうなのにも関わらず、にっこりと微笑む星の姿にレイニールは小さく頷いた。しかしそれは、彼女の意見に賛同してではない。
もし、エミルがこの事実を知ったら、星と喧嘩になるのは火を見るより明らかだ――そうなれば、疲労している自分の主が更にその華奢な体に疲労を蓄積させていくだけと分かっていたからだ。
このことは、エミルには絶対にバレるわけにはいかない。
明らかに体に、何らかの異常をきたしているのは間違いないだろう。
それもそうだろう。メリットだけでこれだけの力を使い続けられるわけがない。きっと気付いていないだけで、何か致命的な欠陥がこの固有スキルにはあるのだ。
だがそんなことは、使用している星自身が最も分かっていることだろう――しかし、彼女は戦うのを止めようとする素振りすら見せなかった。
剣を地面に突き立て、なんとか立ち上がる星を見つめたレイニールは。
『どんなことがあっても、この危なっかしい主を支えていこう……』
っと、心の中で強く誓った。
星とのやり取りの直後、遠くからエミルが慌てて駆け寄ってくるのが見えた。
エミルはふらついている星の両肩を掴むと、星の体の至る場所を撫でるように見て。
「はぁ~。怪我はしてないわね……もう、また無理して! 寿命が縮まったわよ!」
そう言ったエミルの言葉は星の耳には全く入っていなかった。
何故なら「どうしてこんな事に……」「俺の仲間達を返せ」など、彼女の目の前では今さっき星によって助けられた人達が嘆き悲しんでいる姿が映し出されていたのだ。
更に被害者に執拗に責められている加害者も「知らない」「記憶がない」と泣きながら弁解している。
(この事件は被害者も加害者もない……全ての人が不幸にしかならない……)
そう思ったら、もう星は居ても立ってもいられなかった。
「……こんなことしていられない。早く次に……」
星は覚束ない足取りで、何かに取り憑かれたように歩き出す。
「……誰も死なせない……」
そう口に出した星は、力強く地面を蹴った。
駆け出していく星の体は、一瞬のうちに男と少女の間に割り込み素早く黒刀を弾くと、次の一撃で完全に黒い刀を破壊する。
今日やっていた練習の成果が出た場面と言えるだろう。ガラスが割れるように結晶と化した黒い刀が消えると使い手は我に返って、きょとんとした様子で「俺はどうしてここに?」と呟いている。
だが、星はそんなことなど目に留める様子もなく、即座に次のプレイヤーの救出の為に駆けていく。
更に自分の固有スキルを使用して、速くなったスピードがまた数段と速くなる。
星の固有スキル『ソードマスター』は星専用の武器『エクスカリバー』を使用した時だけ、GM権限のあるプレイヤー管理能力のある『ソードマスターオーバーレイ』へと進化する。元々は使用する剣の能力を引き出す程度でしかない。
いつも側を飛び回っているレイニールも、元は『竜王の剣』というレア装備でしかなかった。だが、武器に固執した能力であるのは言うまでもない。
使用する武器によって様々なスキルを使用することができる反面、ライラの『テレポート』やエリエの『神速』と言った固有スキルとは違い。武器がなくなると、スキルの使用ができないというデメリットもある。
そして今の彼女の固有スキルの能力は謎の聖剣『エクスカリバー』の敵の能力値を全て『1』に変更し、己の能力に添加する能力――それは相手の敏捷や筋力のステータスも含まれていた。
強いて言うなら、今の彼女はスキルを使用すればするほど、能力を倍加させていくのだ――。
ほぼテレポートに近い速度まで上昇した俊敏性をフル活用して、星は即座に近くにいた5人の妖刀を文字通り塵に変えていく。
星の姿が現れた直後に鳴り響く金属音と、それが砕け散った時のバキーンという破裂音が交互に襲う。
驚きを隠せないという顔で呆然と星の姿を見ていたレイニール。
だがその直後、再び走り出そうとした星の体が、倒れる瞬間に手を地面に突くこともなくドサッと力無く地面にうつ伏せに倒れる。
「――ッ!? 主!!」
何が起きたのか分からないまま、レイニールは咄嗟に倒れた星の方に飛んでいくと、倒れている星の顔の近くに降り立つ。
地面に倒れ込んだままの星は荒い息を繰り返し、とても苦しそうだ。
「主、大丈夫か!?」
「はぁ……はぁ……だ、だいじょう……ぶ。ちょっと、転んだだけだから……」
そう呟き、のっそりと起き上がる星の顔を、レイニールは心配そうな表情で見上げていた。
星は今にも泣き出しそうな瞳で自分を見つめているレイニールに微笑む。だが、その顔からは滝の様に滴り落ちる汗が流れている。
「大丈夫だよ……でも、この事は、エミルさんには内緒にね……心配すると、だめだから……」
「……主」
汗を滲ませ辛そうなのにも関わらず、にっこりと微笑む星の姿にレイニールは小さく頷いた。しかしそれは、彼女の意見に賛同してではない。
もし、エミルがこの事実を知ったら、星と喧嘩になるのは火を見るより明らかだ――そうなれば、疲労している自分の主が更にその華奢な体に疲労を蓄積させていくだけと分かっていたからだ。
このことは、エミルには絶対にバレるわけにはいかない。
明らかに体に、何らかの異常をきたしているのは間違いないだろう。
それもそうだろう。メリットだけでこれだけの力を使い続けられるわけがない。きっと気付いていないだけで、何か致命的な欠陥がこの固有スキルにはあるのだ。
だがそんなことは、使用している星自身が最も分かっていることだろう――しかし、彼女は戦うのを止めようとする素振りすら見せなかった。
剣を地面に突き立て、なんとか立ち上がる星を見つめたレイニールは。
『どんなことがあっても、この危なっかしい主を支えていこう……』
っと、心の中で強く誓った。
星とのやり取りの直後、遠くからエミルが慌てて駆け寄ってくるのが見えた。
エミルはふらついている星の両肩を掴むと、星の体の至る場所を撫でるように見て。
「はぁ~。怪我はしてないわね……もう、また無理して! 寿命が縮まったわよ!」
そう言ったエミルの言葉は星の耳には全く入っていなかった。
何故なら「どうしてこんな事に……」「俺の仲間達を返せ」など、彼女の目の前では今さっき星によって助けられた人達が嘆き悲しんでいる姿が映し出されていたのだ。
更に被害者に執拗に責められている加害者も「知らない」「記憶がない」と泣きながら弁解している。
(この事件は被害者も加害者もない……全ての人が不幸にしかならない……)
そう思ったら、もう星は居ても立ってもいられなかった。
「……こんなことしていられない。早く次に……」
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