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2人の時間5
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その直後、突如として真っ黒な刀を手に持っていた男の目が不気味に赤い光を放つ。
っと、その刹那。今まで楽しそうに会話をしていた仲間の男を斬り伏せる。
――ぐわああああああああああああッ!!
けたたましい悲鳴とともに、男の体は地に落ちて次の瞬間には、その体はキラキラと光になって消えた。
美しく儚い蛍の様な光は、それは紛れもなくその男がこの世界から消えたことを意味していた。
本来のシステムでは持ち主が許可しない限り。敷地内での固有スキルの発動、プレイヤーに影響を与える異常状態にするなどのアイテム類、武器を使用しての戦闘行為は禁止されている。
そう。本来の仕様が適応されているのならば、武器は装飾品としての装備は認められていても、抜いて刃を振るうことはできないのだ。しかし、妖刀と呼ばれる『村正』現に黒い鞘から抜かれ、1人の男をこの世界から消し去った……。
男は仲間を消すと、今度は手当たり次第に周りの人間を斬り伏せ始めた。
無差別に、目の前に居る者達を斬り付けていくその姿は悪霊にでも取り憑かれている様でもあった。
宿屋の中は次々と撃破された時の光が発生する度に悲鳴と恐怖に満ち、皆が一斉に出口を求めて駆け出す。一瞬にして、ゲーム内で最も安全なはずの宿屋が地獄絵図と化した。
男の手に握られた『村正』によって無残に斬られた者達から出た光がまるで天井に向かって逆さに降る雪の様にも、天を目指して辺りを飛び交う蛍の様にも見え、幻想的に部屋を舞う。
騒ぎを聞きつけ、部屋に居た者達も階段から駆け下りてきて出口に急ぐ。
その人の波にエミルが逆らうように、星を目指して突き進む。だが、自分を押し流す様に押し寄せてくる人波に、近付くどころかどんどん出口へとエミルは流されてしまう。
「……くっ! どいて! どきなさい!」
苦虫を噛み潰したような顔をしながら、懸命に人混みを掻き分けて星の方へ向かうエミル。
そんな彼女の努力をあざ笑うかのように、悲鳴と怒号を上げながら人々はエミルの体を押してくる。
パニックに陥った宿屋の中。
「――殺す……皆殺しにする!!」
念仏の様に同じ言葉を口にして、狂気に染まった赤い瞳の男が、ゆっくりとその場に俯きながら立ち尽くす星の方を向く。
得物を構えて微動だにしない星に向かう男の後ろ姿がエミルの瞳に映る。しかし、星は虚ろな瞳のまま俯いていて、動く様子は一切ない。
その時の星の心の中を支配していたのは、先程のバーで何者かに耳元でささやかれた『お前の罪はこの世に生まれた事』という言葉が頭の中を駆け巡っていた。
「……どうして……」
小さく呟いて星が顔を上げると、そこには口元に狂気じみた笑みを浮かべ、ゆっくりと自分の方向へと歩いてくる男の姿だった。だが、不思議と恐怖も湧かず。また、逃げようとも思わなかった。
いや、思えなかったという方が正しいだろう。自分が存在していることが罪なら、この場で殺された方が良いのではないか? そんな気さえした。
(……生きてるだけで誰かを不幸にして……こんな気持ちになるんなら……)
星の目の前で止まって男が持っていた黒い刀を大きく振り上げる。ニタッと笑う男を見つめ、寂しそうに視線を落とす。
「…………生まれてこなければ良かった」
そう小さく呟いたと同時に、星目掛けて男が持っていた刀を振り下ろした。
その刹那。一瞬だけ星の視界の空間が歪んだかと思うと、そこから黒い剣が飛び出してきて黒い刀を弾き飛ばす。
空中を回転して真っ二つに折れた刀は、ガラスの様に粉々に砕け散って消えた。
その場にバタンと倒れた男性の前に、突如として現れたマントの人物が持っていた剣を突き付けている。
身長は然程大きくはないが、その全身から放つ闘気は相当な手練れであることをうかがわせる。
突如現れたローブのこの人物は一体何者なのだろうか。敵か味方かと、一瞬だけ星も考えたものの。すぐにそんなことは気にならなくなった。
どちらにしても自分が存在する意味はもうない気がしていた。
男が完全に気を失っているのを確認したのか、マントの人物はゆっくりと星の方を振り返る。そして絶望に打ちひしがれた様な表情を見せる星に向かって徐に口を開く。
「――どうして戦わなかった?」
「…………」
星が無言のまま俯くと、辺りにパンッ!という破裂音が響き、星の頬を鋭い痛みが走る。
思わず手で覆った頬にジーンとした痛みが流れる……今まで母親にもはたかれたことなどなかった星には、その突然の出来事が予想外過ぎてまだ状況を把握しきれていなかった。
驚きながら赤くなった頬を押さえると、星はマントの人物を見上げた。
っと、その刹那。今まで楽しそうに会話をしていた仲間の男を斬り伏せる。
――ぐわああああああああああああッ!!
けたたましい悲鳴とともに、男の体は地に落ちて次の瞬間には、その体はキラキラと光になって消えた。
美しく儚い蛍の様な光は、それは紛れもなくその男がこの世界から消えたことを意味していた。
本来のシステムでは持ち主が許可しない限り。敷地内での固有スキルの発動、プレイヤーに影響を与える異常状態にするなどのアイテム類、武器を使用しての戦闘行為は禁止されている。
そう。本来の仕様が適応されているのならば、武器は装飾品としての装備は認められていても、抜いて刃を振るうことはできないのだ。しかし、妖刀と呼ばれる『村正』現に黒い鞘から抜かれ、1人の男をこの世界から消し去った……。
男は仲間を消すと、今度は手当たり次第に周りの人間を斬り伏せ始めた。
無差別に、目の前に居る者達を斬り付けていくその姿は悪霊にでも取り憑かれている様でもあった。
宿屋の中は次々と撃破された時の光が発生する度に悲鳴と恐怖に満ち、皆が一斉に出口を求めて駆け出す。一瞬にして、ゲーム内で最も安全なはずの宿屋が地獄絵図と化した。
男の手に握られた『村正』によって無残に斬られた者達から出た光がまるで天井に向かって逆さに降る雪の様にも、天を目指して辺りを飛び交う蛍の様にも見え、幻想的に部屋を舞う。
騒ぎを聞きつけ、部屋に居た者達も階段から駆け下りてきて出口に急ぐ。
その人の波にエミルが逆らうように、星を目指して突き進む。だが、自分を押し流す様に押し寄せてくる人波に、近付くどころかどんどん出口へとエミルは流されてしまう。
「……くっ! どいて! どきなさい!」
苦虫を噛み潰したような顔をしながら、懸命に人混みを掻き分けて星の方へ向かうエミル。
そんな彼女の努力をあざ笑うかのように、悲鳴と怒号を上げながら人々はエミルの体を押してくる。
パニックに陥った宿屋の中。
「――殺す……皆殺しにする!!」
念仏の様に同じ言葉を口にして、狂気に染まった赤い瞳の男が、ゆっくりとその場に俯きながら立ち尽くす星の方を向く。
得物を構えて微動だにしない星に向かう男の後ろ姿がエミルの瞳に映る。しかし、星は虚ろな瞳のまま俯いていて、動く様子は一切ない。
その時の星の心の中を支配していたのは、先程のバーで何者かに耳元でささやかれた『お前の罪はこの世に生まれた事』という言葉が頭の中を駆け巡っていた。
「……どうして……」
小さく呟いて星が顔を上げると、そこには口元に狂気じみた笑みを浮かべ、ゆっくりと自分の方向へと歩いてくる男の姿だった。だが、不思議と恐怖も湧かず。また、逃げようとも思わなかった。
いや、思えなかったという方が正しいだろう。自分が存在していることが罪なら、この場で殺された方が良いのではないか? そんな気さえした。
(……生きてるだけで誰かを不幸にして……こんな気持ちになるんなら……)
星の目の前で止まって男が持っていた黒い刀を大きく振り上げる。ニタッと笑う男を見つめ、寂しそうに視線を落とす。
「…………生まれてこなければ良かった」
そう小さく呟いたと同時に、星目掛けて男が持っていた刀を振り下ろした。
その刹那。一瞬だけ星の視界の空間が歪んだかと思うと、そこから黒い剣が飛び出してきて黒い刀を弾き飛ばす。
空中を回転して真っ二つに折れた刀は、ガラスの様に粉々に砕け散って消えた。
その場にバタンと倒れた男性の前に、突如として現れたマントの人物が持っていた剣を突き付けている。
身長は然程大きくはないが、その全身から放つ闘気は相当な手練れであることをうかがわせる。
突如現れたローブのこの人物は一体何者なのだろうか。敵か味方かと、一瞬だけ星も考えたものの。すぐにそんなことは気にならなくなった。
どちらにしても自分が存在する意味はもうない気がしていた。
男が完全に気を失っているのを確認したのか、マントの人物はゆっくりと星の方を振り返る。そして絶望に打ちひしがれた様な表情を見せる星に向かって徐に口を開く。
「――どうして戦わなかった?」
「…………」
星が無言のまま俯くと、辺りにパンッ!という破裂音が響き、星の頬を鋭い痛みが走る。
思わず手で覆った頬にジーンとした痛みが流れる……今まで母親にもはたかれたことなどなかった星には、その突然の出来事が予想外過ぎてまだ状況を把握しきれていなかった。
驚きながら赤くなった頬を押さえると、星はマントの人物を見上げた。
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