オンライン・メモリーズ ~VRMMOの世界に閉じ込められた。内気な小学生の女の子が頑張るダークファンタジー~

北条氏成

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ドタバタな日々7

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 それに飛び付くようにレイニールが星の頭から飛び降りると、皿に添えられたスプーンを手に嬉しそうにプリンに突き刺した。

 レイニールはプリンをスプーンいっぱいにすくって口の中に頬張ると、本当に嬉しそうな顔で笑みを浮かべている。
 何度もプリンを口に頬張って幸せそうな顔を見せるレイニールを横目に、星も嬉しそうな笑みを浮かべるとプリンを口に運んだ。

「あっ、おいしい……でも、これって普通のプリンと違うような?」

 小首を傾げている星に、焼き鳥の乗った皿を厨房から戻って来たサラザが力強く頷いて。

「さすが星ちゃん! そうよ~。このプリンは希少種のアカックドードーの卵を使って作ったの!」

 っと言いながら、酒を呑んでいるマスターとデイビッドの前に持ってきた焼き鳥の乗った皿を置く。

 戻ってくるサラザに、星が表情を曇らせると。 

「それじゃー。高いんじゃ……」

 その話を聞いて一瞬で表情を曇らせた星に、サラザが手をバタつかせるオーバーアクションで答えた。

「大丈夫よ! 私達ならこの程度のモンスターあっという間よ~」

 あのアクションはおそらく、さっき話していた『アカックドードー』という鳥の真似をしていたのだろう。

 星は表情を明るくすると、羨望の眼差しでサラザの顔を見つめた。

「さすがですね。サラザさん」
「まあ、見た目からしてマスターならあっという間だし! それより。プリンのおかわり欲しいし!」

 ミレイニが2人の話に割り込んで、空になった皿をサラザに向けて突き出している。

 その皿をミレイニから受け取ると、サラザは新たなプリンをミレイニに差し出して微笑む。

「――ミレイニちゃん。私の事はマスターより。ママって呼んでね~」
「むぅ~。マスターの方が、響き的に大人っぽくて素敵だし~」

 膨れっ面をしながら受け取ったプリンを口に運ぶミレイニ。

 まだミレイニにはスナックのママと、BARのマスターの区別がつかないのだろう。

 星の隣で黙々と食べ進めていたレイニールがプリンを食べ終え、サラザに皿を突き出した。

「我輩もおかわりなのじゃー!」
「はいはい。分かったわ~。星ちゃんはどうする?」
「……えっ? あっ、いえ。私はもう大丈夫です」

 微笑むサラザに首を横に振った星はその申し出を断った。
 
 サラザは「遠慮しなくてもいいのよ~」と言葉を返したが、星は苦笑いでそれに答えた。すると、奥の席からデイビッドが大きく手を上げ叫ぶ。

「サラザさーん! ウィスキーを頼む! あと、焼き鳥なくなったから、チーズとかつまみになりそうなものを!」
「デイビッドよ。儂らは飯を食べに来たんだぞ? 酒を飲めないカレン達も居るのだ。少しは――」
「――いいですよ師匠。皆、色々ありましたし。俺達の事は気にしないで下さい」

 渋い顔をしてデイビッドを見ていたマスターに、カレンが微かに笑みを浮かべて言った。しかし、納得していない人間が1人――。

「……俺達? 俺の間違いではないんですか?」

 澄まし顔だが、明らかに不機嫌そうに言葉を返したのは、マスターを挟むように反対側に座っていた紅蓮だった。

 彼女の身長は小学生並みで、絶対にお酒を飲めそうにない外見なのだが、何故か紅蓮は自分は違うと言いたげな笑みを浮かべ言い放つ。

「まあ、お子様な貴女には……マスターのお酒の相手は務まらないですね」
「なっ、なんだと!? 君。だって飲める歳には見えないぞ!?」

 直ぐ様。凄まじいほどの殺気を放つ紅蓮に、マスターが空気を敏感に察して口を挟む。

「紅蓮はもう飲めるんだったな。なら、たまには飲むか! 紅蓮よ」
「ええ、マスター」

 マスターのその申し出に機嫌を直したのか、紅蓮の表情が一瞬で和らぐ。
 何故か飲み会の様になったデイビッド、紅蓮、マスターの間に何故か飲めないはずのカレンがマスターの側から離れない。

 テーブルの上にはチーズ、唐揚げ、やきとり、枝豆などの定番メニューが並んでいる。もちろん。ピザやナッツ、現実世界にいないような良く分からない魚の燻製や聞いたことのない動物の肉など、こちらの世界にしかないメニューもある。

 そんな中、目の前の日本酒の入ったお銚子を手に持った。

「師匠。どうぞ」
「ああ、すまんな」

 マスターにお酌を終えると、小皿に目の前の料理を素早く取り分けマスターの前とデイビッドへと置いた。その後、何事もなかったかの様にお銚子を持ち直す。

 カレンのその行動に、紅蓮が不機嫌そうに呟く。

「……そうですか……まあ、いいでしょう。貴女の様な『男性にしか媚を売らない』ふしだら女も居ますし……」

 さらっとカレンを侮辱し、紅蓮は自分で酒を盃に注いでそれを口にした。
 彼女が飲酒できる歳であったことより、先程の言葉の方が気に障ったのだろう。怒りでカタカタと持っているお銚子を震わせるカレン。

 互いに敵意をむき出しにして激しく視線をぶつけている。
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