オンライン・メモリーズ ~VRMMOの世界に閉じ込められた。内気な小学生の女の子が頑張るダークファンタジー~

北条氏成

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ドタバタな日々3

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 だが、いざ触っていいと本人の許可を得ると、何故か先程以上に物怖じしてしまう。生唾を呑んだ星は、エミルの胸に恐る恐る手を伸ばす。

「……じゃあ、失礼します」

 何故かかしこまって軽くお辞儀をすると、星の指先がちょこんとエミルの胸に当たったところですぐに手を引っ込めた。

 星は引っ込めた手をわきわきさせながら感動した様子で、瞳をキラキラさせている。
 これで満足したのか、指先に触れたエミルの胸の感触と自分の胸を比べるように揉んでいる。

 その様子を見ていたエミルはくすっと微笑みを浮かべると、星の頭を優しく撫でると。

「星ちゃんは可愛いわねぇ~。もっとしっかり触ってもいいのに~」
「――そうだよ~。エミル姉の胸は皆のものなんだから、遠慮することないのに~」

 そのエリエの声が聞こえた時には、彼女の手は後ろからエミルの大きな胸をがっしりと握り締めていた。

 瞳を閉じてその感触を確かめるように、エリエの手に収まらないほどの豊満な胸を掴んで放さない。

「あぁ~。この両手で収まり切らないボリューム……安心するなぁ~」
「…………」

 手をわきわきさせながら、染み染みと頷いているエリエ。

 それとは対照的にエミルは頬を赤く染めると、無言のまま俯いていた。その直後、いつまでもエミルがわきわきと手を動かしていると、体を震わせながらエミルが眉をピクピクさせ、拳を固め始めた。

 次に何が起こるのかが容易に想像できた星があたふたしていると、予想通りその拳がエリエの脳天を直撃する。  

 エミルの鉄拳がエリエの脳天に突き立てられ。

「いぎゃい!!」

 普段は決して聞くことができないほど、エリエは大きな悲鳴を上げると慌ててエミルから離れ、涙目になって両手で殴られた箇所を押さえた。

 おそらく。エリエ本人はまさか殴られると思ってはいなかったのだろう。
 目を丸くさせて突然殴られたことに驚きながら、涙で滲んだ瞳でエリエが直ぐ様声を上げた。

「いった~い! なっ、なにするのよ~。エミル姉」
「それはこっちのセリフよ! なに? 私の胸は皆のものって! 私の胸は私のものです! それに、エリーには触らせるって言ってないでしょ!」

 そう声を荒らげて拳を振り上げているエミルに、エリエが両手を前に突き出して慌てふためきながら言った。

「だって! 星だけずるいじゃん! 私にも触る権利はあると思う!」
「ほお~。あんなにしっかり触っておいて……星ちゃんなんて、指先がちょっと振れただけで満足してるのに!」

 拳を鳴らしながらゆっくりと迫ってくるエミルに、エリエは両手を前に出して後退る。

「ちょっと、タンマッ!!」
「――問答無用ッ!!」

 エミルの振り下ろした拳をギリギリでかわすと、エリエは慌てて湯船から飛び出して一目散に逃げた。それを追い駆けるようにしてエミルも浴槽を飛び出す。

 エリエは赤鬼の様に真っ赤に顔を染めているエミルから逃げるように浴室内を走り回る。

「こらー!! お風呂の中で走るなー!!」
「なっ! エミル姉に捕まったら殴られるでしょ!?」
「そんなの当たり前でしょー!!」
「そんなの理不尽だー!!」

 腕を振りかざしエリエを追いかけ回すエミルと、鬼ごっこを続けているライラとイシェル達を見ていて、星とレイニールは呆れ顔で顔を見合わせてため息を漏らす。

「ほんとに、皆して何やってるんだし……」

 そこに、ミレイニも浴槽内をカエルの様に泳いでやってくる。
 エミルが見たら「浴槽内を泳ぐな!」と一喝されそうだが、今はエリエを追いかけるのに必死で、こちらのことは気にする暇もなさそうだ。 

 星は少し気まずそうに愛想笑いを浮かべている。
 正直、同じくらいの歳のミレイニに向かって、どう接したらいいのか分からなかったと言う方が正しいだろう。

 丁度いい距離感を保とうとする星とは異なり、ミレイニは積極的にグイグイ迫って来るのだが、どうしても人慣れしていない星は物怖じしていたのだ。

 しかし、それも無理はないだろう。星は現実世界では友達と呼べる存在もおらず、同い年の子との接触も出来る限り避けてきた。その中でも、何の突拍子もなく無意識に迫ってくるミレイニは完全にイレギュラー的な存在だった。

 先程も脱衣所でなかなか服を脱ごうとしない星の服を脱がそうとしたり。洗い場でも体をエミルに洗ってもらっていた星のことを凝視していたりと、何かにつけては星に迫ってくるのだ。その後、ミレイニもエリエに体を洗ってもらっていたが……。

 とにかく、ミレイニとは距離が近くなることがしばしばあった。
 ミレイニからしてみれば、比較的に歳の近い星が一番仲良くなりやすいと考えているのだろうが、星からしてみればその真逆で、歳が近いが故にここに居る誰よりも緊張してしまう。

「そう言えばさ。星ってあたしのこと嫌いだし?」
「……えっ?」

 そのミレイニの言葉に、星はドキッ!とすると今までのことを思い返す。
 ちゃっかり名前を呼び捨てにしていることは気になったが、それはこの際置いておこう……。
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