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次なるステージへ・・・20

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 そう自覚すればするほど、今までのエミルとの思い出が徐々に壊れていく様なそんな感覚が、星の心を支配しようとしたその時、突然体を誰かに抱きかかえられる。

「あら~。やっぱり子供に、子供の面倒を見させるのは無理だったみたいね~。エ・ミ・ル♪」  
「……えっ?」 

 星は聞き覚えのあるその声の主を確認して驚愕する。

 それもそのはずだ。そこに居たのは紛れもなく先程、外で別れたはずのライラだったからだ。
 瞬時にこの場所に現れたということは、物陰から様子を見守っていて彼女の固有スキル『テレポート』を使ってここまできていたのだろう。

 おそらく。彼女は居なくなったフリをして、どこかで星達の様子を窺っていたのだろう。驚く星に、ライラが視線を落としてにっこりと微笑み掛けた。

「あら、どうしたの? 私が助けるのが意外? それとも、助けてほしくなかったのかしら?」
「えっ……いえ、ありがとうございます?」

 不敵な笑みを浮かべている彼女に、星は少し首を傾げながらお礼を言った。だが、その心中はとても穏やかではない。

 それもそうだろう。星にとって、このライラという人物にはいい思い出がない。

 おそらく。今回も何か企んでいることは間違いないだろう。それ以外に星を助けるメリットが彼女にあるとは思えない。もし、なんの企みもなく純粋に星を助けたいがための行動だったとしても、助けてもらってたことを今の星には素直に信じることができないのだ。

 エミルは自分の左手にはめられた手錠を外すと、鬼の様な形相でライラを睨みつける。

「ライラ。星ちゃんを私に返しなさい!!」
「ふふっ、返しなさい。か……でも残念。今のあなたには、この子を返すわけにはいかないわ。この子は切り札ですもの……そう貴女の勝手で、行動を制限されたら困るのよね~」

 互いに顔を見ながら告げる2人の間に、ピリピリとした空気が流れて部屋中を包む。

 そんな中、ライラは星を地面に下ろすと、エミルに向かって言った。

「そうね。エミルが私との勝負に勝てたら、この子を好きにしていいわよ」
「そんな事をする必要はないわ、ライラ。星ちゃんこっちにいらっしゃい!」

 星は睨みながらそう告げたエミルの顔を見て、表情を曇らせると、近くにいるライラの顔を見上げる。

 すると、ライラは星の肩に腕を絡ませて不敵な笑みを浮かべた。

「私は別にどっちでもいいわよ? もし。この勝負を受けないなら、この子は私が貰うわ。もちろん、テレポートで連れて行く。それを阻むことのできない貴女は……どうするのかしらね~」
「……いいわよ。勝負しようじゃない。前は逃げられたけど、今度は完全に消してあげる。もう今後、星ちゃんを狙う事ができないように……」
「ふふっ、それはどうかしらね~。私には傷を付けられないと思うわよ?」

 完全に頭に血が上っているエミルに向かってライラはそう口にすると、立ち上がり企み顔で星を見下ろした。

 そのライラの表情に、星の嫌な予感が的中する。

 次の瞬間、ライラは後ろから星の両肩を掴むと、自分の前に星を押し出す。

「でも。貴女と戦うのは、この子よ♪」
「……えっ!?」

 思わず顔を青ざめながらライラの顔を見た星にライラは微笑を浮かべた後、膝を折って星の耳元でささやくように言った。

「……大丈夫よ。貴女は自分の能力を使えば、いいだけだから。あなたの固有スキルなら、エミルくらい瞬殺にできるわ」
「……能力?」
「ええ、戦いになったらすぐに剣を突き出してこう言いなさい『ソードマスターオーバーレイ』これで、貴女の勝利は確実だから……」

 含み笑いを浮かべながらそう告げるライラに、星は浮かない顔で言葉を返した。

「でも……私は……エミルさんと、戦いたくない……です」

 そう言って表情を曇らせ俯く星に、ライラは感情なく低い声音でささやく。

「……そう。なら、戦わなくていいわ。貴女は立っているだけでいい。勝負が始まったら、私がエミルの背後から決めてあげるから……もちろん。貴女に拒否権なんてないわよ? この勝負を逃げてもいいけど……その時は貴女を拘束して、この事を知っている人間。つまり、私は貴女のお友達全員を殺さないといけない……この意味が分かるわね?」
「…………」
(……私が戦わないと皆が死んじゃう……)

 星は顔面蒼白で、無言のまま首を横に振った。

 要するにライラは『メモリーズ』の機密保持の為に、星に関わった皆を殺害するとほのめかしているのだ。

 普通ならそんな脅しには屈しないが、今までも何かとしてきたライラが言うなら本当なのだろう。彼女の今までの行動は全く理解できない。
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