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次なるステージへ・・・18

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 その結果、星の顔にエミルの豊満な胸が当たり、そのままその胸の谷間に押し付ける。

「んんっ……ぱっ! エミルさん! いい加減に起きて下さい!」

 その突然の思わぬ行動に、自由になった両手で慌てて自分の口を塞ぐ2つの膨らみを押し退けると、寝ぼけているエミルに向かって叫んだ。すると、その声でぴくりと体を震わせ、エミルが瞼を開く。

 エミルは目を擦りながら、大きなあくびをすると、自分の胸元から見上げる星に目を落とす。

「あら? 星ちゃん。私の胸に抱き付いてるなんて……甘えん坊さんね~」

 星は呆れ顔でそんなエミルの青い瞳を見据える。しかも、そのセリフはさっきも聞いたのだが……。

 おそらく。今のエミルには寝ている間になにをしていたのかという記憶がないだろう。

 彼女は慌てて両手をエミルの胸から放して、頬を赤らめている星に優しく微笑むと、ゆっくりと体を起こした。

 外はもう夕暮れ時になっていて、太陽から伸びる赤い影が広がっている。今まで隣で寝ていたはずのエリエとミレイニも、もう居なくなっていて部屋にはレイニールを含んだ3人だけになっている。

 星はベッドの横に立って、エミルの胸の感触を思い出すように両手をわきわきさせながら見つめている。

(……エミルさんの胸。大きくて柔らかくて凄かったなぁ~。でも私のは……)

 複雑そうな顔ですぐに自分の胸に手を当てて、現実を噛み締める様に星は大きくため息を漏らした。
 それもそのはずだ。同じ女だと思えないほどに、星の胸はぺったんこで膨らみがない……。

 まさにまな板と言わざるを得ないその胸の感触に、がっくりと肩を落としている星に、エミルが優しく声を掛ける。

「ほら、行くわよ。星ちゃん」
「あっ、はい!」

 星は慌てて膝に掛かった布団を振り払うと、エミルの元へと駆け寄る。

 そんな星を優しい眼差しで見つめるエミルに、星が思い切って、以前から考えていたことを口に出してみる。

「あ、あの!」
「ん? どうしたの?」
「エミルさん。私に、戦い方を教えてもらえませんか?」
「――ッ!?」

 星の突然の言葉にエミルはまさか星の口から、その言葉を聞くとは思っても見なかったのだろう。

 驚きのあまり、エミルはその場に硬直していた。
 とても驚いた様に、あんぐりと口を開けたまま、無言で目を丸くさせている。

 そして、しばらくの沈黙の後。エミルが膝を折って、星と目線を合わせるように向かい合うと、閉ざしていた重い口をゆっくりと開く。

「…………絶対にダメよ」
「――えっ?」

 星はその返答に驚きながら、エミルの顔を見つめている。

 優しいエミルのことだ――星はきっと彼女が、二つ返事で了承してくれると思っていたのだろう。だが、エミルの表情は怒っているのではないかと思うほどに険しい。

 思わず後退りしようとする星の両肩をエミルが掴む。

 その後、星の瞳をじっと見据えながら、エミルが言葉を続けた。

「……あなたは戦闘には向いてない。ただのゲームの状況なら、私もなにも言わないわ。でも、この状況であなたに戦闘をさせるつもりは一切ない……」
「……でも! 私はみんなの役に――」
「――それは本当に皆を思ってなの? それとも、自分が置いて行かれてる気がするという、気の焦りからなの?」

 険しい表情のまま、エミルは星に問い掛けたその言葉は核心をつく。

 星は目を細めながら厳しい表情で自分を見るエミルに、心の中を見透かされているような気がして、何も言えずに口を閉ざす。

 俯き加減にしている星を見て、エミルは落ち着きながらも厳しい口調で星に言った。
 
「いい? 今回も星ちゃんはいいと思って敵の方に行ったのかもしれない。でも、結果として皆を危険に晒している……それは分かるわね?」
「……はい」
「自分がいいと思う事が、本当にいい事とは限らないって事なの。あの時のあなたは自分を犠牲にしてでも。と思ったかもしれないけど、皆はそんなのを望んでいなかった。だから、全力で星ちゃんを連れ戻したのよ?」

 星に言い聞かせるようにエミルは一言一言丁寧に告げると、にっこりと微笑みを浮かべた。

 エミルは反省した様子で表情を曇らせる星の頭を撫でると、優しい声音でささやきかけた。

「――だから、星ちゃんは戦わなくていいのよ? あなたは私が守ってあげるから……」

 だが、星にはエミルのその言葉を、素直に受け入れられずにいた。

 それは、ダークブレットのアジトの地下で、狼の覆面の男に捕らわれた時に何もできなくて歯痒い思いをしたことが関係していたのかもしれない。

 あの時にもっと力があれば、自ずと結果は変わってきたのではないか……そう考えていた星が、力を欲するのは当然のことだろう。

 少しエミルに言われたくらいで、星のこの熱い思いが変わるわけもなく。

 断られた星は頭を大きく左右に振ると、もう一度エミルの目をじっと見つめて、自分の思いを伝えた。

「エミルさん。私は! 私は……後ろに隠れているのも。安全な所で待っているのもいやなんです! 私も本当の意味で仲間になりたい!」
「……そう。それじゃー、仕方ないわね……」

 精一杯の気持ちを星が伝えると、エミルは低く影のある声音で虚ろな瞳でそう呟いた。
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