オンライン・メモリーズ ~VRMMOの世界に閉じ込められた。内気な小学生の女の子が頑張るダークファンタジー~

北条氏成

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次なるステージへ・・・17

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 時間を見て数回送ったものの、その全てで小虎からの反応が返って来なかった。

 おそらく。部屋に行って疲れて寝入ってしまったのだろう。まあ、野宿が続いていた間はベッドでは眠れなかっただろうから、ホテルのベッドに倒れ込んだ直後の柔らかく優しく包み込まれる感じに負けてしまうのも理解できるが……。

 紅蓮はコマンドを閉じると、小さくため息をつく。

「はぁ……全く困った子ですね。白雪、お願いしてもいいですか?」
「はい。今すぐに起こしてきます」
「いや、いいよ。2日間も野宿で、彼も殆どまともに寝ていないんだろう。俺だけでマスターのところに戻るから」

 そう言って微笑を浮かべるデイビッドに、紅蓮が眉をひそめて告げる。

「――いえ、貴方は良くても私は良くありません。でも……そうですね。白雪、ここで小虎と待っててもらえますか?」
「えっ!?」

 驚き目を丸くさせているデイビッドとは反対に、白雪は軽く頭を下げて「了解しました」と言った。

 紅蓮はデイビッドの手を握ると、彼の顔を見上げた。その直後、物凄い殺気を帯びた視線を感じた。

 っと、白雪の姿が一瞬消えたかと思うと、デイビッドの背後から白雪のささやく声が聞こえた。

「――今回は紅蓮様に免じて一緒に行くことを許可しますが、紅蓮様に何かしたらその時は……分かってますよね?」

 殺意の籠もった低い声で告げた白雪の含みのある言葉に、デイビッドの背筋に悪寒を感じた。

 顔を引きつらせているデイビッドを見て、紅蓮は不思議そうに首を傾げている。

「いや、白雪さんが……」
「白雪?」

 その言葉に紅蓮は振り向いて、白雪の立っていた場所を見る。

 紅蓮の視線の先には、いつデイビッドの背後から移動したのか分からないが、白雪が微笑みを浮かべている。

「白雪ならさっきからそこに居ますよ?」
「どうかなさいましたか? 紅蓮様、デイビッドさん」
「いや、でもさっきは……」

 口を開こうとしたデイビッドだったが、突如としてその口を閉じる。
 それは微笑んでいた白雪の瞳の中に、何とも言えないような殺気を感じたからに他ならない。

 デイビッドは俯き加減に「なんでもないです……」と告げると、彼女から慌てて目を逸らした。
 その様子を見て、少し疑問を感じたものの、紅蓮は前を向き直してデイビッドの手を引いて歩き出した。

「さあ、マスターの元へ急ぎましょう!」

 いつになくやる気に満ち満ちている紅蓮にデイビッドは首を傾げながらも、マスター達の元へと向かう。
 
    
                     * * *  


 星は何かに体を締め付けられる様な息苦しさで目を覚ました。
 体を動かそうとしたのだが、肩から腕にかけて、しっかりと押さえつけられていて全く動けない。

 ゆっくりと瞼を開くと、部屋の小窓から紅の夕日が差し込んでいた。そこには、星のことを抱き締めるエミルの寝顔があった。

 体をがっしりと抱きかかえ、まるで抱き枕でも抱いているかのようだ――。

 星はエミル腕から抜け出そうと、身を捩るが意外と力が強く。なかなか抜け出すことができない。
 なんとか抜け出そうとしている星の体に、エミルの腕が更に絡み付いてきた。

「うぅ……苦しいです……エミルさん……」
「――う~ん。ダメよ……もうはさないわ……星ちゃん。むにゃむにゃ……」

 眠りながらも懸命に自分の体にしがみついてくるエミルに、星は困り顔のまま諦めたように小さく息を吐く。
 そのエミルの抱き締める力が強ければ強いほど、苦しいものの、不思議と星にはそれが安心できる気がしていた。

 ダークブレットの事件から数日間。離れ離れになっていた星にとって、この何気ない出来事がとても懐かしく。そして、かけがえのないものに感じたのかもしれない。

(……エミルさん。もう私はどこにも行かないですよ……)

 瞼を閉じてそう心の中で星が告げると、星の耳元でレイニールの声が響いてきた。

「主! いつまで寝ているのじゃ!」
「なっ、なに!? レイ。どうしたの?」

 驚いて目を見張ると、そこには上空からムスッとした顔で星を見下ろすレイニールの姿があった。見ていれば、寝ていたくて寝ているわけではないのが分かるはずなのだが……。

 レイニールは小さな翼をはためかせながら、星の服を掴む。

「あるじ~。我輩はお腹がすいたぞ~」

 服をグイグイと引っ張りながら大きく左右に揺れるレイニール。

 星は驚くと、先程までのパーティーのことを思い出し。

「さっきあんなに食べたのに?」
「むぅ~。我輩は育ち盛りなのじゃ! あんなのでは全然足りん!」
「もう……」

 星は胸を張ってそう言い放つレイニールに呆れながらも、隣で眠るエミルに声を掛けた。

 ひとまず、エミルにこの巻き付いている腕を放してもらわないことにはどうしようもない。

「エミルさん。起きて下さい」

 すると、エミルは星の体を抱き寄せると「もう、甘えん坊さんね~」と言って、自分の体を更に密着させてきた。
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