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星が初めて始まりの街で襲われた場所も戦闘許可区域だった。つまり、初心者に嫌煙されるということは、そこでは商売をするメリットが著しく低下してしまう為にわざわざ資金を投じて店を出す必要性も薄くなってしまう。
デュランはそこに目を付けたのだ――犯罪者ギルドとして悪名高いダークブレットの拠点をその場所に設けることで、他よりも土地価格も安く、しかも始まりの街にいる他のプレイヤーとの差別化も同時に図ることができる。
その横でバロンが、デュランに向かって口を開く。
「おい。俺様と妹は別の場所に泊まるぜ? だいたい俺様の様な高名な人間が、一般のテスターでもないそれどころか犯罪者の連中とつるむなんて、狂ってるだろ」
「……いいけど、僕もそのテスターだけど?」
「ふん。お前の敵のスキルを奪う程度の小賢しい固有スキルで、俺様の軍をなんとかできると思ってるのか? デュラン。お前の固有スキルは、四天王の中でも最弱だという事を忘れんなよ?」
圧倒的な威圧感を浴びせるバロンの瞳に、彼ほど熱くはないが微笑を浮かべながらも、そのバロンに殺意を帯びているデュランの瞳が2人の間に激しい火花を散らす。
ベータ版のテスター達の中でも、固有スキルによって向き不向きがあるのは事実。
特にバロンは日本サーバーでは最強と言われる数千以上もの漆黒の軍団を率いることができる固有スキル『ナイトメア』の使い手。
固有スキルを発動している本体がやられるまで止まらない上に騎馬、歩兵、弓兵と役割に応じて複数に振り分けられることだ。
痛みを感じずどこまでも敵を切り裂く兵士達はまるでゾンビ軍団。その光景は悪夢の様に見えることから『ナイトメア』という意味の名前になったと推測できる。
今までの戦闘でも彼に傷を付けたのは、メルディウスとマスターくらいなものだ。
彼の暴虐的な性格もあるが、日本サーバーの格付けからすると、その固有スキルが上位であることは言うまでもない。
だが、範囲型の限定的な固有スキルとはいえ、デュランの『アブソーブ』も範囲内の固有スキルの使用を制限し、その固有スキルの発動対象を自分に切り替えると能力を持つ。これもこれで、強力な固有スキルであることは確かだ。しかし、デュランの固有スキルはその場で敵のスキルを見て戦闘を組み立てる必要があるが、バロンの固有スキルにはそれがない。
圧倒的な数と物量で押し切る戦法が得意なバロンは、超攻撃型のプレイヤーということになる。
バロンの考え方からすれば相手に依存するスキルを使うのは、弱い者のやることだという考えが強いのだろう。しかしながら、テスターは個々で考え出した強力の固有スキル――別名オリジナルスキルの持ち主であることに変わりはない。
他の者達に止められないほどの固有スキルという力量差のある彼等が、この場所での四天王同士の激突は何としても避けなければならないのだ――。
それを止めるのでもなく、紅蓮は「やれやれです」と呆れながらため息を漏らしている。
一触即発と言った感じで睨み合う2人に、メルディウスも苦笑いを浮かべていた。
そこに遠目でその険悪な様子を見つめていたフィリスが、バロンが喧嘩をしようとしているのに気付き実の兄である彼に声を荒らげた。
「お兄ちゃん!!」
バロンは「チッ!」と舌打ちをして身を翻した。
デュランに背を向けたバロンは走ってくる妹の手を握ると、強引にその手を引いて歩き出す。
「ほら、行くぞ!」
「ちょ、ちょっと。お兄ちゃん!?」
何が起きたのか分かっていない妹の手を強引に掴んだまま、街の中へと消えていった。
そんな彼等を見て、困り顔で頭を抑えたメルディウスが隣に居た紅蓮に小声で声を掛ける。
「バロンは相変わらずだな。団体行動を乱しまくるんだろうな……」
「――ええ、困ったものです。もっと大人になってもらいたいものですね」
「だよな!」
珍しく彼女の共感を得たことで、相当嬉しいのか微笑みを浮かべたメルディウス。
大きくため息を漏らした紅蓮は横目でちらりと一瞥し。
「……ですが、それは貴方もですよ。メルディウス」
紅蓮は隣で笑っているメルディウスに聞こえないような声でぼそっと呟いた。その後、3人になった四天王達が街の中にあるギルドホールへと向かう。
始まりの街のギルドホールは、まさにホールという感じの造りになっていた。
その巨大なUFOを彷彿とさせる近未来のドーム型の建物を見上げて紅蓮が静かに呟く。
「行きましょう」
紅蓮はゆっくり歩き出すと、建物の中に入っていく。
中は外観よりも広く、エントランスの中央に大きな円卓があり。その中で、管理スタッフのNPCが忙しなくプレイヤーの対応に追われている。
始まりの街は初期プレイヤーが多くいる為か、ギルドホールは他の街と違って案内所的な役割が大きい。
慣れていないプレイヤー達はコマンド内にあるヘルプを使わずに、直接NPCから説明を受ける者も多くいる。
本来のギルドホールの役割はその名の通り。ギルドの設立、解散。ランクに応じた各ギルド専用のギルドホールサーバー。クエストの受注、依頼などもここで行う。
また、マイハウスの移動申請。商業申請と用地の確保。税を差し引いた利益の還元などなど、ギルド関係以外にも様々な事柄を行っている……言うなれば役所のような役割を持つ建物なのだ。
デュランはそこに目を付けたのだ――犯罪者ギルドとして悪名高いダークブレットの拠点をその場所に設けることで、他よりも土地価格も安く、しかも始まりの街にいる他のプレイヤーとの差別化も同時に図ることができる。
その横でバロンが、デュランに向かって口を開く。
「おい。俺様と妹は別の場所に泊まるぜ? だいたい俺様の様な高名な人間が、一般のテスターでもないそれどころか犯罪者の連中とつるむなんて、狂ってるだろ」
「……いいけど、僕もそのテスターだけど?」
「ふん。お前の敵のスキルを奪う程度の小賢しい固有スキルで、俺様の軍をなんとかできると思ってるのか? デュラン。お前の固有スキルは、四天王の中でも最弱だという事を忘れんなよ?」
圧倒的な威圧感を浴びせるバロンの瞳に、彼ほど熱くはないが微笑を浮かべながらも、そのバロンに殺意を帯びているデュランの瞳が2人の間に激しい火花を散らす。
ベータ版のテスター達の中でも、固有スキルによって向き不向きがあるのは事実。
特にバロンは日本サーバーでは最強と言われる数千以上もの漆黒の軍団を率いることができる固有スキル『ナイトメア』の使い手。
固有スキルを発動している本体がやられるまで止まらない上に騎馬、歩兵、弓兵と役割に応じて複数に振り分けられることだ。
痛みを感じずどこまでも敵を切り裂く兵士達はまるでゾンビ軍団。その光景は悪夢の様に見えることから『ナイトメア』という意味の名前になったと推測できる。
今までの戦闘でも彼に傷を付けたのは、メルディウスとマスターくらいなものだ。
彼の暴虐的な性格もあるが、日本サーバーの格付けからすると、その固有スキルが上位であることは言うまでもない。
だが、範囲型の限定的な固有スキルとはいえ、デュランの『アブソーブ』も範囲内の固有スキルの使用を制限し、その固有スキルの発動対象を自分に切り替えると能力を持つ。これもこれで、強力な固有スキルであることは確かだ。しかし、デュランの固有スキルはその場で敵のスキルを見て戦闘を組み立てる必要があるが、バロンの固有スキルにはそれがない。
圧倒的な数と物量で押し切る戦法が得意なバロンは、超攻撃型のプレイヤーということになる。
バロンの考え方からすれば相手に依存するスキルを使うのは、弱い者のやることだという考えが強いのだろう。しかしながら、テスターは個々で考え出した強力の固有スキル――別名オリジナルスキルの持ち主であることに変わりはない。
他の者達に止められないほどの固有スキルという力量差のある彼等が、この場所での四天王同士の激突は何としても避けなければならないのだ――。
それを止めるのでもなく、紅蓮は「やれやれです」と呆れながらため息を漏らしている。
一触即発と言った感じで睨み合う2人に、メルディウスも苦笑いを浮かべていた。
そこに遠目でその険悪な様子を見つめていたフィリスが、バロンが喧嘩をしようとしているのに気付き実の兄である彼に声を荒らげた。
「お兄ちゃん!!」
バロンは「チッ!」と舌打ちをして身を翻した。
デュランに背を向けたバロンは走ってくる妹の手を握ると、強引にその手を引いて歩き出す。
「ほら、行くぞ!」
「ちょ、ちょっと。お兄ちゃん!?」
何が起きたのか分かっていない妹の手を強引に掴んだまま、街の中へと消えていった。
そんな彼等を見て、困り顔で頭を抑えたメルディウスが隣に居た紅蓮に小声で声を掛ける。
「バロンは相変わらずだな。団体行動を乱しまくるんだろうな……」
「――ええ、困ったものです。もっと大人になってもらいたいものですね」
「だよな!」
珍しく彼女の共感を得たことで、相当嬉しいのか微笑みを浮かべたメルディウス。
大きくため息を漏らした紅蓮は横目でちらりと一瞥し。
「……ですが、それは貴方もですよ。メルディウス」
紅蓮は隣で笑っているメルディウスに聞こえないような声でぼそっと呟いた。その後、3人になった四天王達が街の中にあるギルドホールへと向かう。
始まりの街のギルドホールは、まさにホールという感じの造りになっていた。
その巨大なUFOを彷彿とさせる近未来のドーム型の建物を見上げて紅蓮が静かに呟く。
「行きましょう」
紅蓮はゆっくり歩き出すと、建物の中に入っていく。
中は外観よりも広く、エントランスの中央に大きな円卓があり。その中で、管理スタッフのNPCが忙しなくプレイヤーの対応に追われている。
始まりの街は初期プレイヤーが多くいる為か、ギルドホールは他の街と違って案内所的な役割が大きい。
慣れていないプレイヤー達はコマンド内にあるヘルプを使わずに、直接NPCから説明を受ける者も多くいる。
本来のギルドホールの役割はその名の通り。ギルドの設立、解散。ランクに応じた各ギルド専用のギルドホールサーバー。クエストの受注、依頼などもここで行う。
また、マイハウスの移動申請。商業申請と用地の確保。税を差し引いた利益の還元などなど、ギルド関係以外にも様々な事柄を行っている……言うなれば役所のような役割を持つ建物なのだ。
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