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次なるステージへ・・・9

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 赤く腫れた頬を抑えながら、ミレイニがエリエに向かって断固講義する。

「ほっぺた引っ張るの止めてほしいし! 女の子なのに顔に傷がついたらどうする気だし! それにエリエなんて、あたしがあの時に味方にならなかったら、今頃エリザベスのお腹の中だったんだから感謝してほしいし!」

 ビシッと指差して断言するミレイニ。

 まあ、今はゲーム内なので前半は聞き流したとしても。少なくとも、後半のエリザベスという名のケルベロスと武器も固有スキルも使用できない状況で戦っていたら食べられていたかもしれない。

 だが、どんなに強い魔獣を使役していたとしても、肝心の飼い主がミレイニならば万に一つも勝てる可能性はなく。

「ほお~。お菓子で釣られた子が、よく言うわね~。まだいじめられたいの~?」
「ごめんなさい! 嘘でした! ごめんなさい!」

 両手をわきわきさせて迫ってくるエリエに、ミレイニは怯えながら必死で謝っている。その様子から、すでに2人の間では上下関係はハッキリしているようだ――。

 エリエは悪戯な笑みを浮かべると、ミレイニの両頬を摘む。

「……嘘をついた子にはおしおきが必要よね! ほら、謝りなさい。ごめんなさいって!」
「いはいれう。ごえんあさい! ごえんあさい!!」


 ミレイニの頬を左右に引っ張っているエリエは、とても生き生きしているように見える。
 それを見ていたエミルがため息交じりに「もう止めて上げなさい」と言うと、エリエは少し残念そうに両手を放す。

 その後は何事もなく、星のおかえりパーティーは進んでいった。

「星ちゃん。パエリアのおかわりはいる?」
「あっ、はい」
 
 右側に座っていたエミルが星に微笑むと、星は遠慮がちに小さく頷く。
 満足そうな笑みを浮かべたエミルは、大きな器からパエリアをよそうとそれを星の前に置いた。

 その様子を不満そうに見ていたイシェルが、何かを思いついたように急いでパエリアを食べ進めると、空になった器をエミルに差し出す。

「エミル! うちにもおかわりちょうだい!」
「えっ? ええ、良いわよ」

 エミルは皿を受け取ると、それにパエリアをよそってイシェルに差し出した。だが、イシェルはそれを受け取ろうとせずに、かわりに大きく口を開けた。

 それを見たエミルは小さくため息を漏らすと、スプーンを持ってイシェルの口にパエリアを運ぶ。

 嬉しそうにぱくっとスプーンを口に咥えると。

「――やっぱり。エミルに食べさせてもらうとまた格別やわ~」
「まったく。イシェはまだまだ子供なんだから」

 満足そうにそう言ったイシェルに、エミルは少し呆れながら告げた。

 その様子を遠目で見ていたカレンがパエリアをすくい上げると、顔を真っ赤に染めながら隣に座るマスターに向かってスプーンを突き出した。

「あの、師匠……お、お、おれもいいですか?」

 恥ずかしそうにそう告げると、マスターは首を横に振った。

「そ、そうですよね……」

 カレンはがっかりしたように表情を曇らせる。

 項垂れるカレンの様子を見て、マスターは目の前の器を手に持つとカレンの前にパエリアの乗ったスプーンを突き出した。

 そのマスターの行動に、驚いたように目を見開いているカレン。

 そんなカレンの顔を見つめ、マスタ-が首を傾げて言った。

「……どうした? これがやりたかったのだろう?」
「は、はい! それでは失礼して……」

 緊張しながらも、大きく口を開いてマスターの差し出したスプーンを口に咥えると、カレンは本当に嬉しそうに笑う。

「美味しいです。師匠」
「そうか」
「はい!」

 満足そうに頷くカレン。

 それ様子をフライドチキンを咥えながら見ていたミレイニが、隣にいたエリエの腕を引っ張る。

「あはひもあえあるし!」
「――ミレイニ。それ食べてから喋りなさい……」

 エリエは呆れながら、フライドチキンを口にぱっくりと咥えているミレイニを見て額を押さえた。

 急いでチキンを食べ終えると、もう一度口を大きく開く。
 
「あたしもあーんするし!」

 完全にやってもらうつもりでミレイニは身を乗り出して、瞳をキラキラと輝かせている。

「ん? するの? してほしいの?」
「してほしいし!」
「分かったわよ。しかたないわねー」

 エリエはフォークでローストビーフを挟むと、ミレイニの方を向いた。

「ほら、食べさせてあげるから口開けなさい」
「うん! あ~ん」

 頷いて大きく開けたミレイニの口にローストビーフを入れた。
 嬉しそうにそれを食べ終えると、もう一度と言わんばかりにミレイニが再び口を開く。

 エリエは「もう、しょうがないなー」と言いながら、エビフライを掴んでミレイニの口に入れた。

 周りで食べさせ合っている中で、星は俯き加減で食べ続けている。
 いや、食べ続けているというよりも。この状況では気がつかないふりをするのが精一杯っという感じなのだろう。だが、意識していないわけでもなく。その頬は少し熱を帯びていた。
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