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次なるステージへ・・・7
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なんだかんだで、この事件が始まってそれほど時間は経っていないものの。それでも、目の前にそびえ立つエミルの城を見るていると、まるで自分の家に帰ってきたような感覚が込み上げてくる。
星が感慨深げに城を見上げていると、隣で立っていたライラが握っていた星の手を放し。
「……さてと、これでお仕事は終了ね! それじゃ、私は別のお仕事に行くからここからは1人で戻ってね!」
「――えっ!? ま、待ってください! 一緒に付いてきてくれるんじゃ……」
無責任とも言えるその彼女の言葉に、星は不安そうな眼差しをライラに向ける。
このままエミルに会えば、きっと相当怒られることが分かっていたし、星自身。どんな顔をして、仲間達に会えばいいのかが分からなかった。
星のそんな心配を余所に、ライラは笑顔で星に手を振りながら。
「それじゃ、用事がある時は直接会いに行くわね~」
とだけ言い残して、突然目の前から消えてしまった。
その場に取り残された星は、表情を曇らせながらゆっくりとエミルの城へと入っていく。
いざ一人になると、今まではやっと帰って来れたと思っていた住み慣れた城が、まるでRPGの世界の魔王の城に足を踏み入れた感じになるから不思議である。
不安で高くなる鼓動と重い足取りで城内を進んでいくと、いつも使っている部屋の前まであっという間に着いてしまった。
意を決して生唾を呑み込んだ星が目の前にある扉を開けようと手を伸ばすが、ドアノブに触れる瞬間に伸ばしていた手を引っ込めて扉を開けるのを躊躇してしまう。
(……みんな、怒ってるだろうなぁ……)
星はそう思いながらも決意したように瞼を閉じてドアノブを握ると、ゆっくりと扉を開いた。
その直後、中から鬼の様な形相のエミルが包丁を手に振りかざして向かってきた。
「ライラ!!」
「ひっ! ご、ごめんなさい!!」
そのエミルの大きな声と手に握られている包丁に驚き、星は慌てて頭を下げて謝る。
頭を下げている星の腕を掴んで強引に引き寄せると、全身を包み込むようにしてエミルが星を抱き寄せた。
「――良かったわ。無事で……ライラに騙された時は……どうなることかと……」
「……あの、怒らないんですか?」
「怒らないわよ。本当に無事で………………無事よね?」
「……えっ?」
エミルは星の両肩を握りながら、顔に疑うような視線を向けて尋ねる。
その意味が分からずにただただ首を傾げる星に、エミルは「ちょっとごめんね」と口にしたかと思うと、突然。星の服の裾をたくし上げ、星の体を前後左右隅々まで舐める様に見た。
「――えっ!? なっ、なに!?」
その突然の行動に驚きながらも困惑した表情を浮かべていると、星の体を一通り見たエミルがほっと息を漏らした。
「はぁ~、傷もないし。キスマークとかも付いてない……本当に大丈夫みたいね……」
「……キスマーク?」
星が首を傾げていると、エミルが目を細めながら星の顔を覗き込んだ。
疑うような瞳に星が戸惑っていると、エミルが再び星の体をぎゅっと抱きしめた。
「まあ、なにはともあれ。何もなくて良かったわ……星ちゃん」
「……エミルさん。く、苦しいし、恥ずかしいです」
(……でも。もう一度会えて嬉しいです……)
星はそう言いながらも、その心の中ではエミルの懐かしい温もりにほっとして安心感を抱いていた。
エミルに手を引かれて部屋の中に入った星を、その場にいた全員が暖かく迎えてくれた。
「おかえり、星ちゃん。無事で本当に良かった。俺は殆ど役に立たなくて……」
「ふん。カレン達が失敗しても儂1人で救出する予定だったんだがな……とりあえず、無事に帰ってきて何よりだ」
「うちはきっと無事に戻ってくるって信じとったよ!」
「おかえり星。そういえば、星の為にケーキを作ってたんだよ!」
エリエはアイテムの中から、以前作っていた大きなホールケーキを取り出すと、それを星に見せた。
ホイップクリームのたっぷり乗ったショートケーキには『星 おかえりなさい』と書かれたチョコレート製のプレートが中央に乗っている。
星はそれを見て感極まり「エリエさん。ありがとうござます」と瞳を輝かせながらお礼を言った。その直後、隣の寝室からガシャン!っとガラスの割れる音が響いた。
っと、次の瞬間。突如として勢い良く扉が開き、なにかが星目掛けて飛び込んでくる。
「あ~る~じ~!!」
窓ガラスを派手にぶち破り入ってきた金色の塊を、星は胸で受け止めると嬉しそうに笑った。
「――レイ。無事だったんだ」
「何を言っているのじゃ! 我輩の方が主を心配してたのじゃ!」
「……ごめんね。レイ」
胸に飛び込んできたレイニールは、涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、星の胸に顔を押し付けている。そんなレイニールに優しく微笑んだ星は、泣きじゃくるその頭を優しく撫でる。
星が感慨深げに城を見上げていると、隣で立っていたライラが握っていた星の手を放し。
「……さてと、これでお仕事は終了ね! それじゃ、私は別のお仕事に行くからここからは1人で戻ってね!」
「――えっ!? ま、待ってください! 一緒に付いてきてくれるんじゃ……」
無責任とも言えるその彼女の言葉に、星は不安そうな眼差しをライラに向ける。
このままエミルに会えば、きっと相当怒られることが分かっていたし、星自身。どんな顔をして、仲間達に会えばいいのかが分からなかった。
星のそんな心配を余所に、ライラは笑顔で星に手を振りながら。
「それじゃ、用事がある時は直接会いに行くわね~」
とだけ言い残して、突然目の前から消えてしまった。
その場に取り残された星は、表情を曇らせながらゆっくりとエミルの城へと入っていく。
いざ一人になると、今まではやっと帰って来れたと思っていた住み慣れた城が、まるでRPGの世界の魔王の城に足を踏み入れた感じになるから不思議である。
不安で高くなる鼓動と重い足取りで城内を進んでいくと、いつも使っている部屋の前まであっという間に着いてしまった。
意を決して生唾を呑み込んだ星が目の前にある扉を開けようと手を伸ばすが、ドアノブに触れる瞬間に伸ばしていた手を引っ込めて扉を開けるのを躊躇してしまう。
(……みんな、怒ってるだろうなぁ……)
星はそう思いながらも決意したように瞼を閉じてドアノブを握ると、ゆっくりと扉を開いた。
その直後、中から鬼の様な形相のエミルが包丁を手に振りかざして向かってきた。
「ライラ!!」
「ひっ! ご、ごめんなさい!!」
そのエミルの大きな声と手に握られている包丁に驚き、星は慌てて頭を下げて謝る。
頭を下げている星の腕を掴んで強引に引き寄せると、全身を包み込むようにしてエミルが星を抱き寄せた。
「――良かったわ。無事で……ライラに騙された時は……どうなることかと……」
「……あの、怒らないんですか?」
「怒らないわよ。本当に無事で………………無事よね?」
「……えっ?」
エミルは星の両肩を握りながら、顔に疑うような視線を向けて尋ねる。
その意味が分からずにただただ首を傾げる星に、エミルは「ちょっとごめんね」と口にしたかと思うと、突然。星の服の裾をたくし上げ、星の体を前後左右隅々まで舐める様に見た。
「――えっ!? なっ、なに!?」
その突然の行動に驚きながらも困惑した表情を浮かべていると、星の体を一通り見たエミルがほっと息を漏らした。
「はぁ~、傷もないし。キスマークとかも付いてない……本当に大丈夫みたいね……」
「……キスマーク?」
星が首を傾げていると、エミルが目を細めながら星の顔を覗き込んだ。
疑うような瞳に星が戸惑っていると、エミルが再び星の体をぎゅっと抱きしめた。
「まあ、なにはともあれ。何もなくて良かったわ……星ちゃん」
「……エミルさん。く、苦しいし、恥ずかしいです」
(……でも。もう一度会えて嬉しいです……)
星はそう言いながらも、その心の中ではエミルの懐かしい温もりにほっとして安心感を抱いていた。
エミルに手を引かれて部屋の中に入った星を、その場にいた全員が暖かく迎えてくれた。
「おかえり、星ちゃん。無事で本当に良かった。俺は殆ど役に立たなくて……」
「ふん。カレン達が失敗しても儂1人で救出する予定だったんだがな……とりあえず、無事に帰ってきて何よりだ」
「うちはきっと無事に戻ってくるって信じとったよ!」
「おかえり星。そういえば、星の為にケーキを作ってたんだよ!」
エリエはアイテムの中から、以前作っていた大きなホールケーキを取り出すと、それを星に見せた。
ホイップクリームのたっぷり乗ったショートケーキには『星 おかえりなさい』と書かれたチョコレート製のプレートが中央に乗っている。
星はそれを見て感極まり「エリエさん。ありがとうござます」と瞳を輝かせながらお礼を言った。その直後、隣の寝室からガシャン!っとガラスの割れる音が響いた。
っと、次の瞬間。突如として勢い良く扉が開き、なにかが星目掛けて飛び込んでくる。
「あ~る~じ~!!」
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「何を言っているのじゃ! 我輩の方が主を心配してたのじゃ!」
「……ごめんね。レイ」
胸に飛び込んできたレイニールは、涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、星の胸に顔を押し付けている。そんなレイニールに優しく微笑んだ星は、泣きじゃくるその頭を優しく撫でる。
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