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ライラの正体8
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注射の時に針を皮膚に刺すとその痛みが脳に記憶として刻まれる。それはその程度の痛みでも人間の脳にある海馬を刺激できるということの現れでもある。だが、注射針程度の刺激でも脳は活性化して覚醒状態になってしまうという。しかし、適度な電気をリズミカルに体に流せば、その逆に心地良さを覚えて人は睡眠状態に入る。
それを利用したのがブレスレット型のハードであり、光と特定の周波数の信号を送ることで一種の催眠効果を与えて記憶を抜き取ることを可能にし、その記憶をデータ化して別の機械に一時的に保存することで機器同士の転送を可能にしたのである。
だが、記憶を一時的に分離する。という部分だけ切り取って聞いても身の毛もよだつものだ。
それは言うなれば『体を必要としない不死の技術』そして『メモリーズ――記憶転移技術』によって分離した記憶と、クローン技術で生み出した身体を合わせれば、何度でも人生をセーブしてやり直せるということに他ならない。それはまさに、聖職者にしてみたら神に唾吐く行為なのだ――。
驚きを隠せないと言った表情のエミルに、モニターの中の男の話す声が響く。
『もちろん。博士はそのような事を望まなかった。それが原因で人類の未来を破壊する訳にはいかないと、食物連鎖の中で、人は無限に生き続けてはならないとね』
その時、ふとエミルの頭に疑問が浮かぶ。
それは――。
『ならば、どうして星の父――大空博士はメモリーズのデータを削除しなかったのか……そして、どうしてそんな危険な技術をゲームなんていう大衆の娯楽に利用したのか……』ということだ……。
これは開発者である博士の考えがあってのこと、エミルにはいくら考えてもその真意を理解できないものなのだろう。
本来ならば、厳重に隔離しなければいけないような技術なのは明白であり、それを隠蔽するどころか、あろうことか包み隠さずにゲーム制作の材料として利用させている。
こんなことは常識的にあってはならないのだ――だがそれも1つ間違えれば、反乱が起き兼ねない。
エミルはその疑問を素直にモニターの越しに男に尋ねた。
「……どうして、そんな重要な技術を【FREEDOM】のゲームシステムに利用したんですか?」
彼女のその質問にモニター越しの男が答える。
『それは簡単だ。博士が命を狙われていたからさ――博士は国の機関で研究者として働いていた。そして【メモリーズ】と言われる特殊な電気信号の数値を発見したんだ。だが、国はその研究を政治や軍事開発に利用しようとした。彼等にとっては、開発者にしてそれに異を唱える博士が邪魔だったのだろうね。そこで博士は我々の組織に、研究内容の保護を個人的に依頼してきたのさ。このゲーム開発と一緒にね。博士は言っていたよ「この技術はまだ人類には早すぎる。この世から争いがなくなるまでは、隠蔽しておかなければならない」と。しかし、研究データと共に消えた博士の行為は国としては裏切り行為と取られたんだろうね……博士を狙う人間は更に増えた。そして、博士はこのゲーム開発に乗り出したんだ。博士は言ってたよ「木を隠すなら森の中。データを隠すならデータの中。そしてそれが多くの人の目に触れる場所ならば尚の事、手を出し難くなる」てね!』
「なるほど。それでゲームに……なら、貴方達の組織とは……?」
核心に迫る彼女の質問に数十秒の沈黙の後、モニター越しから再び言葉が帰ってきた。
『国連の組織……としか言えない。彼等はどこにでもいて、今も私達科学者の技術を狙っている。戦争を起こす為にね……』
モニターから顔を見せない彼のその言葉を聞いて、急に重苦しい空気になった。
それも当然だろう。急に『戦争』という物騒な単語が出てくれば、緊迫した雰囲気になるのは当然であり。それはまるで、雲を掴む様な話になってくる。
顔を見せない人物の言葉を真に受けていいのか、騙されているのではないのかと困惑した表情のエミルはそう考えていた。
正直。眠っている星を除けばライラ、エミルの2人しか彼の姿を見るものはいない。元々顔を知っているであろうライラを除けばエミルのみだ――いくら用心の為とはいえ、顔を見せて話をしないというのは、少し不誠実と言わざるをえないだろう。
怪訝な顔でモニターに大きく写る『X』の文字を見ているエミル。
すると、その不穏な空気を感じ取ったライラが声を上げた。
「でも、ミスターは信用に足る人物よ。良く考えてみて? 新規参入したばかりの、しかも疑似体験型のゲームなんて何の暴動も起こらずに世界規模で流行ると思う?」
「確かに、今考えて見ればそうね……確かに小さな反対運動はあったけど、左程大きな騒動は起きなかった気がするわ」
顎の下に手を当てて考える素振りをしているエミルに、ライラが言葉を続けた。
「ただ、我々は貴女達の敵ではないわ」
「……あんな事されて。今更、信じられるわけ無いでしょ? ライラ」
鋭く睨むようにライラの顔を見たエミルに、ライラもさすがにバツが悪いのか眉をひそめている。
それを利用したのがブレスレット型のハードであり、光と特定の周波数の信号を送ることで一種の催眠効果を与えて記憶を抜き取ることを可能にし、その記憶をデータ化して別の機械に一時的に保存することで機器同士の転送を可能にしたのである。
だが、記憶を一時的に分離する。という部分だけ切り取って聞いても身の毛もよだつものだ。
それは言うなれば『体を必要としない不死の技術』そして『メモリーズ――記憶転移技術』によって分離した記憶と、クローン技術で生み出した身体を合わせれば、何度でも人生をセーブしてやり直せるということに他ならない。それはまさに、聖職者にしてみたら神に唾吐く行為なのだ――。
驚きを隠せないと言った表情のエミルに、モニターの中の男の話す声が響く。
『もちろん。博士はそのような事を望まなかった。それが原因で人類の未来を破壊する訳にはいかないと、食物連鎖の中で、人は無限に生き続けてはならないとね』
その時、ふとエミルの頭に疑問が浮かぶ。
それは――。
『ならば、どうして星の父――大空博士はメモリーズのデータを削除しなかったのか……そして、どうしてそんな危険な技術をゲームなんていう大衆の娯楽に利用したのか……』ということだ……。
これは開発者である博士の考えがあってのこと、エミルにはいくら考えてもその真意を理解できないものなのだろう。
本来ならば、厳重に隔離しなければいけないような技術なのは明白であり、それを隠蔽するどころか、あろうことか包み隠さずにゲーム制作の材料として利用させている。
こんなことは常識的にあってはならないのだ――だがそれも1つ間違えれば、反乱が起き兼ねない。
エミルはその疑問を素直にモニターの越しに男に尋ねた。
「……どうして、そんな重要な技術を【FREEDOM】のゲームシステムに利用したんですか?」
彼女のその質問にモニター越しの男が答える。
『それは簡単だ。博士が命を狙われていたからさ――博士は国の機関で研究者として働いていた。そして【メモリーズ】と言われる特殊な電気信号の数値を発見したんだ。だが、国はその研究を政治や軍事開発に利用しようとした。彼等にとっては、開発者にしてそれに異を唱える博士が邪魔だったのだろうね。そこで博士は我々の組織に、研究内容の保護を個人的に依頼してきたのさ。このゲーム開発と一緒にね。博士は言っていたよ「この技術はまだ人類には早すぎる。この世から争いがなくなるまでは、隠蔽しておかなければならない」と。しかし、研究データと共に消えた博士の行為は国としては裏切り行為と取られたんだろうね……博士を狙う人間は更に増えた。そして、博士はこのゲーム開発に乗り出したんだ。博士は言ってたよ「木を隠すなら森の中。データを隠すならデータの中。そしてそれが多くの人の目に触れる場所ならば尚の事、手を出し難くなる」てね!』
「なるほど。それでゲームに……なら、貴方達の組織とは……?」
核心に迫る彼女の質問に数十秒の沈黙の後、モニター越しから再び言葉が帰ってきた。
『国連の組織……としか言えない。彼等はどこにでもいて、今も私達科学者の技術を狙っている。戦争を起こす為にね……』
モニターから顔を見せない彼のその言葉を聞いて、急に重苦しい空気になった。
それも当然だろう。急に『戦争』という物騒な単語が出てくれば、緊迫した雰囲気になるのは当然であり。それはまるで、雲を掴む様な話になってくる。
顔を見せない人物の言葉を真に受けていいのか、騙されているのではないのかと困惑した表情のエミルはそう考えていた。
正直。眠っている星を除けばライラ、エミルの2人しか彼の姿を見るものはいない。元々顔を知っているであろうライラを除けばエミルのみだ――いくら用心の為とはいえ、顔を見せて話をしないというのは、少し不誠実と言わざるをえないだろう。
怪訝な顔でモニターに大きく写る『X』の文字を見ているエミル。
すると、その不穏な空気を感じ取ったライラが声を上げた。
「でも、ミスターは信用に足る人物よ。良く考えてみて? 新規参入したばかりの、しかも疑似体験型のゲームなんて何の暴動も起こらずに世界規模で流行ると思う?」
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